ネーハの代価 2
何事もうまくいかず、肩を落とすネーハが神社の鳥居の前で佇んでいると、山伏式神が駆け寄ってきた。
慌てた様子でおおきな何かを布で包み、手にしている。
「おや。式神もどきの」
「久しぶりね!探し回ったのよっ!」
ゼェゼェと息を乱しながらも、包みから剣を取り出し差し出した。
「それは」
「墳墓から見つけたの…!でも…これでいいのかしら?」
錆び付いた剣の刃は欠けて、使い物にはならなくなっていた。しかしネーハはこれだ、と確信する。
これが月世弥を殺めた天津甕星の神器。
(あの"お飾り"に一泡吹かせることができる)
「墳墓のどこでそれを手に入れたんだ?」
「内側にある室内から出てきたわ。これがあなたが欲しがっていたものよね?」
「ああ、ありがとう!」
剣を受け取ると、ネーハは頭を下げる。「恩に着るよ」
「いいのよ、探していたといっていたから」
善良そうな笑顔で彼女は答える。護法童子は今までにないくらいに喜んだ。
「さっそく報告に行ってくるよ!」
走りながら手を挙げ、パタパタと遠さがって言った。
「…こ、これで」
山伏式神は笑いを固定していたがやがて顔面蒼白になってしまった。「わ、渡したわ。これでいいのよね?」
バケモノが物陰から現れ、邪悪に笑う。山伏式神はそれに恐怖に身震いをする。
(死ぬのは、イヤ…)
一方、ネーハは走りながら明るい顔で希望に満ち溢れる。
(有屋さまが喜んでくださる!町は正義によって再生するんだっ!)
(アイツは悪なんだ。山の女神に付け入り、町の神々からも嫌われている。何を考えているかも分からぬ君の悪いヤツ…)
剣の柄を強く握りしめ、彼は思い切り羽ばたいた。背中に翼を生やし、黄金が辺りを照らして宙を駆ける。反面──表情はおぞましい。
(魔のフリをしている所も気に入らない。神である者が魔の何がわかる?冒涜に他ならないじゃないか)
おぞましい魔性の顔から、普段の少年の顔に戻り深呼吸した。
「はあ…やめだやめ」
己の考えに嫌気がさして、護法童子はシュンとする。
「護法童子になってから──この町に来てから…ろくな考えをしてないな…。こちらまで穢れそうだ」
越久夜町を覆うゆらぎが雲となり漂っているのを見て、嫌悪した。
(越久夜町はケガレに呑まれる)
「あの悪神を早く滅しなければ!」