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山の女神の裁きと宿命 4

「終わりならば、望み通り受け入れてやろう」

「主さま?!な、何を」

「オレは終わりじゃない。また、いや、これからも理想を叶える。それにはお前が必要なんだ」

「…は、はあ」

「山の女神がお待ちだ。さあ、行くぞ」

 決意を新たに階段を登り始め、その姿にある風景が被る。何かが対峙していた。山の女神と、真反対の人物が。童子式神は目を瞬かせたが、かの残影はなくなっていた。

 あれは?


「使役魔よ」

 いきなり目の前の段に、ネーハが器用に階段に着地してきた。彼に攻撃されるのかと、式神は警戒態勢に入る。

「護法童子っ!」

「最高神は貴様らをこの場に受け入れた。──こちらだ。ついてくるがよい」

 案内役を買って、身軽な身体能力で階段を上っていく。

「はは、笑かすぜ」

 主は構わずにズカズカと登っていく。こちらは同様しながらも慌ててついていく事しかできない。


「君たちには余地がある。悔い改めよ」

「悔い改める?なぜでしょう?あっしらは何も悪い行いなどしていません」

 ネーハはそれをせせら笑ってみせた。

「ふん。言っていればいいさ。悪神の残りカスが」

「ムッ…」

 階段の先にはどうやら山の女神だけではなく、世話係の有屋(ありや)も待機しているようだ。

 感情の抜け落ちた人形のような、生気のない顏をしている貴婦人に童子式神は恐怖を覚える。何だ。あれは。

「ああ!なんだ!バカバカしい!」

 女神と対峙すると、息を上げながらも自嘲的に笑ってみせた。


「ようやくたどり着いたようね。その根性お見逸れいるわ」

「嬉しいよ、最高神。お前に会えて」

「あら、初対面ではないはずよ。星守一族のご子息」

「だろうな。本家のオバサン」

建速(たけちか)!失礼でしょう?!」

「良いのよ。建速は来るべくしてこの場に招かれたのだから」

「は、はい…」

 彼女は納得いかないらしく、顔をひきつらせ渋々引き下がる。


「ネーハ。説明してちょうだい」

 護衛をしていたネーハは突如指名され、目を丸くして総毛立ち竦んだ。「は、はい!」

「越久夜町の神々が貴様らを審議した。結界の破壊……他に町のバランスを崩した行い、それについて神々は罰を下すに至ったのだ」

「勝手に何をしてくれてるんすか?」

「黙れ」

 錫杖をカンと地面に叩きつけると、童子式神はまた縛り付けられ動けなくなってしまった。


「神々の下した罰の内容を話す。まず越久夜町のために何度もいや、何千、無限と輪廻を巡り時を捧げ、バランスを正す。次は女神の信仰を広め、再び町に威光を行き渡らせること。輪廻を巡り、悪の道に返り咲こうならば魂を滅し、二度と生き返らぬようにする。式神は祠に封じ、金輪際日の目を見ぬようにせしめる。──これはとても刑罰だ。感謝するのだ」

「嫌と言ったら?」

「これは強制よ。あなたに発言権はないの」

 有屋 鳥子がピシャリとはねのけた。


「相変わらずだな」

「それを私に渡しなさい」

 神世の巫女の頭蓋骨を指さして、山の女神は言う。

「なるほど、それがお望みなのか」

「大切な物なの。あなたの一族が隠しておきたかったほどね」

「そーか」

 不穏な笑みで、彼は頭蓋骨を引き寄せる。渡すわけが無いとジェスチャーをしたのだ。

「なら、お前らのシナリオ通りに行くとするよ」

「建速っ!」

「これが欲しいのなら、取引きをしようじゃないか?」

「…そう」

「越久夜町のルールを変えろ」

 山の女神は虚ろな目で主を見据えた。その目には何も写り込んでいないようにも思えた。


「ルールを変えた所で何が良くなるというの?希望あふれる未来があるとでも?それとも新しい別天地ができるとでも?無駄よ。この時空は何をしてもダメだった」

「…まさか、何度もルールを変えたというのか?」

「ええ、何遍も。あなたたち人間が何度も消えてしまうような、惨い改変もしたわ。でも、ダメだった」

「ウソだ!嘘言うなよ」

「私は嘘をつく元気さえなくしているの。」

「…!」


 彼は突然、乱雑に頭蓋骨を落としズボンのポケットから取り出したナイフで自らの腹を刺した。

 痛みを感じぬ動作で抜くと走り出して、切っ先を女神の心臓に突き刺した。

 ナイフから穢れが爆発的に広がり、最高神は苦しげに顔をクシャりと歪める。


「いやああ!先輩っ!!」

 かな切り声を上げて、駆け寄ろうとするも素早く止められる。山の女神は穢れに侵食されながらも、喋り始めた。


「あなたに、何も、してやられなかった。育児放棄されたあなたへ、変わって」

 軽く、主に触れると彼のがんじがらめにねじ曲げられてきた因果のほつれが正されてしまう。

「触れるな!」

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