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山の女神の裁きと宿命 2

 式神と使役者は邸宅の庭の奥へ続く、忘れられていた草木の生い茂るけもの道を歩く。どこからか秋虫とフクロウの鳴き声が聞こえるのみ、のどかな夜だった。

 慣れない外出に主は滴る汗を拭う。


「こりゃあやばいな…熱が出てきやがった」

「戻りますか?」心配する童子式神に、彼は首を縦に振らない。

「まさか、ここで引き返すなんて愚の骨頂だろ?」

「は、はあ」

「神域の起点であるあの祭壇にケガレをぶつけるのは、お前にも話しただろう。起点は最高神の核となるテリトリーだ。女神の本体は起点そのものなんだ」


「…それは?」

「人間というのは、妄想しながら考えている。絵空事が真実になる時だってあるんだよ」

「はあ…」

 彼は草をかき分けながら、無我夢中で進んでいく。

「オレが穢れを巻き散らせば、女神は弱って町は無防備になる」

「その隙に、越久夜町を」

「そうさ」

「…あっしが掃き清めていたゆらぎを」

「なんだ?怖気付いたか?」

 いたずらっぽい様子はニタリと笑ってみせた。

「ち、ちがいますっ!」

「あちらが思い描いているシナリオ通りに進むだけさ。なにも躊躇するこたない」

 やっと眼前に壊れかけた祠が現れる。彼らはそれをジッと見やった。

「最終決戦だ」


 試しに軽く触れ、弾かれる指に人間はなにか考えている。スーッと指を這わすと、深呼吸してから彼は呪文を唱えた。


()() ()()が命じる。我が名において、結界を呪解する」

 祠をおおっていた結界が弾け、小規模の衝撃波を生んだ。その余波に童子式神は目をつむる。

「空いた」

「意外に簡単でしたね」

「やっぱりじいちゃんが結界を張ったんだ。…孫の手で祠を開ける、やるぞ」

「主さま、気をつけてください。開けた際に悪いマジナイが発動するやもしれません」

「わかってる」

 書物を手に、祠を慎重に開けていく。ゆっくりと開いて行く扉。中には──茶っけた頭蓋骨がポツンと収められていた。


「これは…始祖の遺物か」

「星の神の依代が…人の頭?」

「始祖か、偽物かは分からないが、人の頭蓋骨であってるんじゃないか?猿ではなさそうだ」

 頭蓋骨はかなり劣化しており、触るにも力加減が必要そうだ。

「法文にはおおざっぱになるが頭蓋骨に星神を縛り付けたと書いてあった。もしかしたら、これが式神の依り代なのか?」

「あっしの依代でもあるんですかっ?」

「法文によればな」

 主はしゃがみ込んで気を使いながらも木箱に入れ、優しく蓋をした。


「この町で頭蓋骨を依代にするのは稀じゃない。山犬とか、そういうのがあったらしい。じいさんが言っていた」

「へえ、そうなのですか」

 木箱を抱え、覚束無い足取りで歩き出し、汗をぬぐう。

「本当に山の神に逢いに行くのですか?」

「ああ、不出来な計画でも会いに行く価値はあるだろ?それと、この術が本物なのかも確かめたい」

「最高神に会いに行くのは、とても危険かと」

 眉を下げて、童子式神は忠告した。

「式神が思慮というのを覚えだしたか。笑えるな」

「主さま!」


「魂から全てを抜き取られ、廃人になり死ぬまでには願いを叶えたいものだ。オレをテリトリーに入れてくれ。やりたいことがある」

「はい」

星守の祖父の名前を間違えていたので、修正しました。

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