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 むかしむかし、人々が今のような文明を持つ、旧時、越久夜町には神々の声を聞き、民に神託を授ける女性のシャーマン──現代のいう巫女がいた。

 彼女の名をツクヨミと言った。その巫女はその力から民から大切に守られ、女神や他の神々もまた巫女を頼りにしていたのだった。


「それは知っているぜ。あたしの主さまから聞いたことがある」

「あの時代はたくさんのシャーマンがいたらしいな。君の主のように」

「うん。神さまとの距離が近かったのかもなあ」


 ムラには巫女の他に、異国の国から渡ってきた巫覡がいた。君の主となる人間だ。その者は村にいる神々の一柱の声をことさら聞いた。

 悪神と名高い神。神威ある偉大な星、または天津甕星だった。

「悪神、ねえ…」巫女式神らしからぬ、冷淡な表情をする。




 ネーハは再び、秘密裏に巫女式神へ接触した。誰にも気づかれぬよう寝静まっている朝方を狙い、彼女に話しかけた。

 快く承諾してくれた鬼神の眷属に再び神話と言われる話を言い聞かせる。それを聞いて、再び心を動かされるなんて望みのない行いだった。

 神話ではないかもしれない。ただ、山の女神側が神話に仕立て上げているのかもしれない。

 だが、もう手札はなかった。




 異国の者は悪神へのますます崇拝に傾倒していった。やがてこの国にいる巫覡のように、悪神の言葉をたくさん民へ伝えるようになった。

 巫女らはそれを危ぶんだ。悪神への信仰が広まれば、神々や最高神のヒエラルキーが崩壊してしまうかもしれない。それ以外に巫女への信頼が揺らいでしまいかねない。

 双方は自然と衝突し、巫女らは異国の者は悪鬼の化身であると非難し、処刑せよと扇動した。

 民たちはそれに従い、異国の者を処刑した。

 怨霊とかした異国の者は穢れをばら撒き、人々は病に伏せ、または死んでしまった。巫女は神々へ祈り、奇跡を願った。

 ムラは──


「それ──めでたしめでたし。なんかじゃあないだろう?」

 ネーハは彼女の言い草に違和感を覚えたが、構わず話を続ける。


 ああ、これには続きがあるんだ。

 また崇拝されていた悪神が腹を立て、女神へと逆襲した。双方はぶつかり合い、土地は壊滅した。越久夜町の神々はとても穢れた土地へ触れられず、どうしようもないと巫女へ伝えた。彼女には以前のような希望はなかった。

 民は巫女を叱責し、今までの行いはまやかしだったのだと怒りを顕にした。巫女はつるし上げられ、異国の者と同じく処されることになった。

 しかし巫女は異国の民が崇拝していた悪神の化身である剣を手にすると、

 ──あなた達はもう、神々の加護、神託を受けることはできないでしょう。人々と神々の時代は終わったのです──。

 民に呪詛を吐き、その身に深く突き刺した。神の化身であるはずの剣は折れ、また巫女は死んでしまった。


「ネーハはどこからその神話を仕入れてくるんだ?」

「使役者が物知りなんだ」面映ゆいと頬をかく。

「へえ~神話学者か何かなのか?」

「まあ…越久夜町の伝承には詳しいけれどね。これは神話なんだけれど、君もご存知、実際に起きた過去なんだよ」

 言い聞かせるように肩に手をおき、瞳をあわせた。

「その巫女はこの時代にも越久夜町へいるかもしれない」

「どうして?」

「それは分からないが、そう思わざる得ない出来事が起きているじゃないか。町の神々にとっても想定外の出来事だった。山の女神は…とくに。もし巫女が町を脅かしたとしても山の女神は、彼女を殺められない…」

「もしかして、惚れてたのかい?」


「神と人が…そのようなことなど、有り得ないのだ」

「神々と人類が婚姻するのは不思議なことじゃないと思うぜ?だったら魔だって」

「……そうかもしれない、だが!最高神と人が結ばれては、町のルールは崩壊してしまう」

「あー…そりゃあそうだよなぁ」

 わざとらしく頷くと、彼女は腕を組んだ。


「巫女は危うく保たれている調和を崩してしまう危険な原因になるかもしれないんだ。そうなると早めに芽を摘んでおいた方がいいよね」

「まあな」

 するとネーハは心を決めたように、呼びかけた。

「巫女と悪心を共に倒そう!君の可能性なら彼らを凌げる!」

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