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晩陽の女神 3

 口を開こうとした巫女式神を制すように、彼女は矢継ぎ早に言った。

「あなたは神格を得たいと言っていたわね」


「なんでそれを?」

「最高神は決まっている物事なら、多少は読み取れるのよ。──最高神になるというのはあなたの願いが叶う、最良の未来ではないのかしら?」

「…そうだとは思ってる。けど、町の者たちは春木が最高神でいるべきだと考えてるんじゃないか?」

「越久夜町の人や人ならざる者は私の眷属のようなもの。それが町の変革を望むのなら、仕方の無いこと。でしょう?」

「…う、うん。」

 有無を言わせない言い草に同意するしかない。


「私よりもうんと…素質のある者はたくさんいるわ。あなたや──神威ある偉大な星…アイツが、次の最高神にふさわしいのかもしれない。あたしより力がある。狡猾さも、生きる気力も」

「神威ある偉大な星…?」

「ああ、いえ…あなたや巫覡、どちらかが最高神になる。それは変わらないシナリオ。時が来たら、返事をちょうだい。あなたなら巫覡より物の読み込みが早そうだからね」

「…。考えておくよ」


「さあ、行くわよ。有屋」

「はい」

 女神は席を立つと、本殿の奥の暗がりに消えていく。闇に溶け込む女神を慌てて有屋が追う。

 どういう訳か神鏡はくぐもり、ヒビが進んでしまった。女神が行動すると穢れが進行するのだろうか?

 ネーハはこちらを見て、無言で疲労を訴えてくる。

「大変だな、あんたも。」

「私は有屋さまに忠誠を誓うのみ、だよ」

 それだけ言うと、彼もモヤになり消えてしまった。


「はあ…おっかなかった。あんなの、あたしのアルジよりも邪神じゃねえか」

 独り残された巫女式神は本殿を見渡す。誰もいない空間は無機質で広い。高そうな玉座に触れ、裏にある神鏡に目がいく。

 無造作に神鏡を手に取ると様々な角度から眺めた。曇ってはいるが、まだ鏡としての機能は果たしているようだ。


「ふーん。アルジさまのやつとそう変わんないな」

 自らが映り込み、はっと凝視する。

「あたしか!」

 ──巫女式神。

 脳内に童子式神が呼ぶ記憶が過ぎる。「コイツは、巫女式神」

 ──羨ましいです。あっしには届きそうにない、そんな場所に軽々しく到達する。うらやましいです。

 彼女の言葉を思い出し、指をみる。指切りげんまんの形にして、見つめた。

「なあ、あたしよ。神格を得て何をしたい?」

 じっと神鏡を眺めて自らに問うた。


 ──あの方のような神を、再び町に崇拝の偶像を作り、世を安寧秩序にするのだ。

 自らの創世神である鬼神の残影が言う。


「あたしが、神になれば越久夜町は平和になるんだろうか?」

 鏡の中の己は何も答えない。

「わからねえや。…はは!情けないねえ!」

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