表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/24

第4話 アリスは 突然 命を狙われた

 私はソフィアと一緒に廊下の掃除に勤しんでいた。マジェンタ家はかなり広く、メイドが数十人いないと掃除が行き届かないのだ。

 もちろんメイドだけでなく庭師や男の使用人もいる。執事長のセバスチャンは16年前だと白髪の混じった人だったけど、今も変わってないのでびっくりした。

 まあ私はメイドだから執事たちには関わらないと思うけどね。


 私たちがモップで廊下を掃除していると、傍を先輩メイドが数人通り過ぎた。

 全員金髪碧眼で、胸が大きく背が知らりとしていた。どこか嫌味そうな顔をしている。


「あ~ら、赤毛のそばかすじゃない。確か没落男爵の娘ですって?」


「たぶん旦那様に秋波を送るために来たのよ、身の程知らずねぇ」


「黒髪の黒女とおそろいだわ。こいつらと一緒に仕事なんかしたくないわねぇ」


 うがー!! なんなのあいつら!! 人の身辺的特徴をあざ笑うなんて!! マジェンタ家はあんな品のないメイドを雇うようになったの!! 信じられない!!


 私が憤慨していると、ソフィアは無言で首を横に振った。怒っちゃダメと言っているのだろう。

 私は悔しさを押し殺しながら、拳を握っていた。私を馬鹿にするのはいいけど、ソフィアが馬鹿にされてとても悔しかった。


 ☆


「あの人たち、旦那様の側室を狙うために、来た人たちだよ」


 掃除が終わり、厨房で昼食を取っていた。お肉と野菜たっぷりのパスタを食べている。南方の国の料理で生前は町に出てレストランに行き、よくアルベールと一緒に食べていたものだ。

 厨房は大忙しで、誰も私たちの事など気に留めていなかった。ソフィアは逆にそれがいいらしい。


「旦那様の亡くなったお姉さまに似た人を、メイドに送っているってメイド長が言ってたよ。でも旦那様は相手にしない。むしろ目障りだと思っているね」


 ソフィアはパクパクと大盛されたパスタを食べていく。割と小柄な身体だけど人の十倍は仕事をしているね。逆にあの女たちはまったく働かず怠けてばかりだ。ルイーズはなんで何も言わないのだろうか。


「メイド長はあいつらの弱みを握って、有無を言わさず追い出すことが多い。たぶん三日も持たないと思う」


 あーなるほどね。役に立たない人間をいつまでも野盗ほどマジェンタ家は落ちぶれていないか。

 多分決定的な証拠を掴んでから追い出すと思うな。ルイーズはもちろんだけど、セバスチャンも普段物静かな分、怠け者で弱い者いじめが好きな使用人を徹底的に追い詰め、廃人に変えたことがあったっけ。


「それとは別に事故に遭って怪我する人も多い。それは特に旦那様と親しくしている人がほとんど」


 親しくって、アルベールが私以外の女に興味を抱くとは思えないんだけど。単純にアルベールの機嫌がいいときに当たっただけじゃないかしら。


「大体旦那様が機嫌のいいときに出くわした人が不幸になっている。あなたも気を付けた方がいい」


「私は大丈夫でしょう。赤毛でそばかすだらけだし、器量は十人並みだし、胸も小さいし」


「関係ないよ。旦那様があなたを見た瞬間、恋に落ちた。アリスに対するラブラブ光線の強さは半端じゃないから」


 ラブラブ光線て何よ……。私が突っ込もうとしたら、ソフィアがいきなり腕を引っ張った。

 その後に包丁が飛んでくる。包丁は私に当たらず壁に突き刺さった。何よ怖い!!


「おいお前、なんで包丁を投げた!!」


 中年男性の料理長が叫んだ。岩のように顔がごつごつしており、私の知らない顔だが厳格そうな職人顔である。服の下の筋肉も発達しており、牛の首を絞め殺しても不思議ではないと思う。

 包丁を投げたのは新入りの料理人のようだ。二十代前半で軽薄そうな男である。私を見てにやにや薄笑いを浮かべており、寒気がした。


「いえ、私は包丁を投げていませんよ。見間違えじゃありませんか?」


 新入りはしれっとした顔でごまかそうとしたが、料理長は誤魔化されない。


「ふざけるな!! 俺は見ていたぞ、にやにや笑いながらそこの新入りメイドの顔目掛けて包丁を投げつける姿をな!! お前は二度と厨房に入れん!! 執事長に頼んで首にしてもらう!!」


「ええ、そんなぁ!!」


 料理長に怒鳴られ新人は私に対して鬼のような憎しみの表情を向けた。新人はそのまま先輩の料理人たちに死刑囚の如く引きずられていく。新人は喚いているけどぼかっと殴られて黙り込んだ。正直ざまぁとは思わず、なんで私に包丁を投げつけたのか疑問に思った。とても怖い。


「あの男、奥様が連れてきた使用人の一人……。でも奥様に忠誠を誓っているわけじゃない」


 ソフィアがそっと耳元でつぶやいた。その表情は不機嫌そうである。あまり働き者ではないのだろう。

 何なのもう!! いったい私が死んだ16年の間に何が起きているのよ!!

 今日の投稿はこれで終わります。次回は明日の18時に投稿します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ