最終回 投げっぱなしになり ごめんね
「これは現実なのかしら?」
「その通りだよ」
私が呆けていると、ミシェル様が答えた。バンジャマンとリシュリュー侯爵の体は粉々に砕け散った。ミシェル様の勝利である。
だけど私は悪夢を見ている気分だわ。だってこんなことが起きるはずないもの。
そうだわ、これは夢よ、夢なのよ。きっと目が覚めれば現実が待っているわ!!
「残念だが、これは現実なんだ。そしてこれらの出来事は王侯貴族でもトップシークレットなのだよ」
ミシェル様が教えてくれた。世界は科学の力で発展を遂げている。しかし人ならざる力を持つ魔人たちも多く存在するそうだ。
ミシェル様とアミラル様はそれをよくご存じだという。リシュリュー侯爵は魔人の力をごく一部盗んだだけらしいが、それでもあのような人外な怪物に変生したのだ。
「君が前世の記憶を受け継いだのも、カオフマン王国の子孫であるクールベ家が持つ外法のおかげなんだ。そして君には三つ子の妹が二人いるんだよ」
三つ子? 何を言っているのかしら?
「アンナの記憶を受け継いだのは君だけでないのだ。クールベ男爵は三つ子の娘を作っていたのだよ。そのうちの一人が君なのさ。のちにアミラルとアルベールにも君をあてがおう。君は僕と結婚してくれ。そしてその力をこの国のために使ってほしいのだ」
あまりにも突拍子のない話に、私の思考がぷっつんと切れた。何の伏線もなく三つ子の設定を出すなんて、この作者は頭がおかしいんじゃないかしら? そうだわ、この世界はキチガイよ、キチガイ地獄なのよ。キチガイしかいない世界なのよ。
オホホ、オホホ、オホホホホホホホホホホホホホホー--。
☆
「という話を書いたのだけど、どうかしら?」
ここはマジェンタ家の庭で芝生の上に座っている。おてんとうさまは真上に来ているわ。私アンナ・マジェンタは弟アルベールとアミラル王子の前で紙芝居を見せた。
アルベールは10歳で素直に感心しているが、アミラル王子は微妙である。
「姉さまのお話ってすごい!! こんな面白い話はみたことがありません!!」
「俺は勝機を疑う内容だな。前世の記憶とか、バンジャマン兄上が怪物になるとかわけがわからない」
「でもバンジャマン王子はいつも不機嫌そうだよ。リシュリュー侯爵も外国人が嫌いだと公言しているし」
アルベールが反論した。
「確かにバンジャマン兄上は不機嫌だが、王国を同行する気はないよ。厳しいけど礼節を持った人さ。それに侯爵は外国人嫌いだけど、国力増加なら受け入れる性格だね」
アミラル王子は説明した。確かにその通りなんだけどね。
私は自分が見た夢をそのまま紙芝居にしたのだ。思い立ったら吉日が私のモットーだからね。
「でもミシェル兄上が変人なのは同感だな。俺はあまり好きじゃない。なんでアンナ殿は俺とバンジャマン兄上が不仲だと思ったのだ?」
「なんとなくね。確かにバンジャマン様は武骨だけど気遣いのできるお方ですもの。なんでこんな話を書いたのか私にも理解できないわね」
そうアミラル様にも言ったけど私自身、こんな話を書いて何が面白いのかわからないわね。
でもこれって夢落ちにならないかしら? 夢落ちほど物語としては最悪な手法と呼ばれているのよね。
「でも姉上。なんで姉上を殺したのですか? ボクはそれが不満です!!」
「そうよね。私が死んだらあなたは悲しむものね。ごめんね、こんな話はもう捨てるわ」
私は紙芝居をしまう。そして二人と一緒にお茶会へ向かうのだった。あと今夜馬車で城に向かう予定だったが、一人では怖いので護衛を頼むつもりでいる。
☆
「ふん。彼女は夢と思い込んだか。上出来だな」
そこに一人の武骨な男がのぞき見していた。それはバンジャマン王子であった。
「さて次は失敗しないようにな。彼女を自分の嫁にするためにはまだまだ俺自身を変えなくてはならぬ。別世界で死んだ彼女の意識をこの世界に連れてくるのに苦労したわ……」
バンジャマン王子には外法の力を持っていた。というか彼の母国デュプレ王国では王族は必ず異能を持っていたのだ。
そのうち彼は並列世界を自由に行き来できる力を持っていた。アンナが見たのは数多くある世界の結末の一つに過ぎない。
バンジャマンは惚れていたのだ。アンナに。彼女と結ばれるために努力をしたが、彼女が16歳のころに亡くなってしまった。
そこで彼は兄ミシェルに頼んだ。彼はクールベ家の外法を使い、前世の記憶を呼び戻すことにしたのだ。そして外祖父であるリシュリュー侯爵をそそのかし、強靭な人体を得る外法を施す。
彼がアンナが死ぬ前の世界線に戻ったのは、バンジャマンがありえない死を遂げる必要があったためだ。
「ふふふ、もうすぐだ。もうすぐお前を手に入れる。そしてお前の力を使い、デュプレは千年王国を築けるのだ……」
バンジャマンの表情は歪んでいた。まるで悪魔のようであった。
今回で最終回です。正直書いててつまらなかったですね。情けないです。
思い付きで描いた連載は、だめだということがよくわかりました。




