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第15話 アリスは いきなり出てきたバンジャマン王子に 拘束されました

「げっはっはっは!! ここかぁ! 我が娘と孫を地獄へ陥れようとする女のいるところはぁ!!」


 ジル・オセアン伯爵は獣のような声でげらげら笑っていた。まるではカオフマン王国に住む雪色熊に似ている。違うのは両手には樵が使う鉄の斧を二本持っていることだ。

 というかなんで私が命を狙われるわけ!? 信じられないんですけど!!


 セバスチャンは私を守るように前に立ってくれた。60歳を超えているけど背筋がピンとしていてて頼もしい。彼はどこからかレイピアを取り出し、その剣先をジル卿に向けた。


「ジル卿。何の真似ですかな? マジェンタ家に無断で入り、あまつさえこのような狼藉は許されませんぞ」


「ダマれぇぇぇぇ!! わしは娘と孫を救いに来たのだぁぁぁ!! そこの女はマジェンタ公爵をたぶらかしに来た淫婦なのだぁぁぁぁ!! だから殺しに来たんだぁぁぁぁぁ!!」


 まるで獣の咆哮だ。というかなんで私がアルベールをたぶらかさなくちゃならないの? この人頭がおかしいよ!!


「……ジル卿。あなたは誰にそそのかされたのですか? なぜ旦那様が奥様を蔑ろにすると思い込んだのですかな?」


 セバスチャンは鋭い目でジル卿を睨みつける。普通の人なら蛇に睨まれた蛙の如く、身を縮めるだろう。だけどジル卿はまるで石像のようにびくともしない。


「バンジャマン殿下だぁぁぁ!! あのお方は枯れ木のように年老いたわしに、宝玉の如き情報を教えてくれたのだぁぁぁ!! なのでわしは老骨を鞭打ってここまで来たのだぁぁぁぁぁ、だっだっだぁ!!」


 ジル卿の眼は胡乱だ。口から涎を垂らし笑い続けている。もう正気の人間ではない。いくらソフィアから武術を習ってもこの人に勝てる気がしないんだけど。


「お嬢様は後ろに下がっていてください。この方の相手は私がします」


 セバスチャンはレイピアを構えた。でもジル卿はセバスチャンより一回り身体が大きいし、筋肉の量も三倍近くある。その上斧も軽く一撃で木を切り倒せそうに分厚い。レイピアどころかセバスチャンの細い腰を一刀両断にしてしまうだろう。


 大人と子供のように差がある。下手すればセバスチャンは殺されてしまうだろう。

 だけどセバスチャンは歴戦の戦士だ。40代の彼は領内を荒らした盗賊たちをあっという間に切り捨てたのを見たことがある。相手の動きを予測し、武器を振るう瞬間に相手の手首を切り捨てたのだ。

 そして流れるように身体を回転させ、瞬時に全滅させたのである。


 ジル卿は吠えると斧を滅茶苦茶に振り回した。まるで台風である。だがセバスチャンは慌てていない。

 すぐに懐に飛び込むと、ジル卿の下顎にレイピアを突き刺した。

 そのまま一気に突き刺すと、ジル卿の頭部から剣が生えた。目から血の涙が流れ、口から血の泡を吹いた。


 うげぇ、ちょっと吐きそう。マジェンタ領にしろ、クールベ領でも兵士が暴れる盗賊を殺すところは何度も見ている。それでも人が死んで慣れることはない。一応アンドレ―の父親でもあるしね。


「うげっ、げっげっげ!!」


 うめき声を上げるとジル卿は手をだらりと垂らし、斧を二本落とした。頭を突き刺されて死なない人間はいない。さすがはセバスチャンである。


「うごぉ!!」


 突如ジル卿は目を見開き、セバスチャンに抱きついた。

 ええ!! なんで!? ジル卿は白目をむきながらセバスチャンを抱きしめ力を込める。

 バキバキと骨が折れる音が響く。だけどセバスチャンはうめき声ひとつもらさない。


「お嬢様、お逃げ下され!!」


 セバスチャンは血泡を吹きながら叫ぶが、私は逃げない。使用人を見捨てて逃げるなんてわたしの性に合わないもの。

 この場合ジル卿に突き刺さったレイピアを使うべきだ。私は度胸を決めるとレイピアを思いっきり引っ張った。

 顔が真っ二つに裂けると、血が噴水のように噴き出る。


「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおお!!」


 ジル卿から血が抜け出ていくと、身体が見る見るうちに萎んでいった。

 そして血が抜け終わると、そこには干物のように干からびたジル卿の遺体が残った。


「セバスチャン大丈夫? すぐ医者を呼ぶわ!!」


「私は大丈夫です。お嬢様無茶をしすぎです。お礼は言いますけどね」


 セバスチャンは床に寝ころんだまま嫌味を言った。だってあなたを見捨てて逃げるなんてできないわ。あなたは使用人じゃなくて家族の一員ですもの。あとルイーズもね。


「お待ちください!!」


 ルイーズの声がした。何やら慌てているみたいだ。

 すると部屋に数人の男たちが入ってきた。銀色の鎧を着ている。デュプレ王国の騎士たちだ。


「ふん、お前がアンナ・マジェンタ公爵令嬢を自称する女か」


 金髪碧眼で髪の毛を後ろに流している三十代の男性だ。整った顔立ちだがどこか嫌味な感じがする。こちらは白銀の鎧に赤いマントを羽織っていた。

 どこかで見た覚えがある。そうだバンジャマン王子だ!!


「この女を拘束しろ。国家反逆罪の大罪人だ」


 バンジャマン王子が命じると、私はたちまちのうちに拘束された。

 え? え? なんなのこの展開!? 急展開すぎて意味不明なんですけど!!

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