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第13話 アルベールは 私を手放すことを 認めない

 私は屋敷に戻った。あんまりにも急展開だったので頭が追い付かない。クールベ男爵家でもある程度の文字の読み書きや計算は習っているが、それでもアミラル様の言葉は衝撃的だった。

 クールベ家は北方の国カオフマン王国から来る王侯貴族の宿代わりをしている。お父様を始め私や使用人たちも丁寧にもてなしていた。そのため屋敷にはカオフマン王国の民芸品や家具が置かれてあり、家ではその国の料理がメニューとして並んでいる。


 デュプレとカオフマンでは生活習慣は違うけど、どちらも尊い血筋であることは間違いない。

 アンナの時代もアミラル様と一緒に国王陛下とお茶会に参加したこともあった。あれ? よく思い出せばアミラル様と第一王子様は参加してたけど、第二王子のバンジャマン王子様は見たことがなかったな。


 私がぼんやり考えていると、突如馬が走ってきた。カオフマン王国から取り寄せた白馬だ。乗っているのは金髪碧眼の美青年、アルベールである。白い生地に青い襟と袖が目立つ服を着ていた。

 そういえばルイーズの話だと、アルベールは私が死んだ後馬車に乗らなくなったらしい。好き嫌いではなく、馬車に乗せると青くなり、泡を吹いて気絶するほどだとか。最愛の姉である私が死んだために、馬車を拒絶するようになったのだそうだ。


「姉上!! なぜ私の許可なく外出したのですか!!」


 アルベールは雷の如く怒鳴った。うう、これは言い訳が出来ません。


「俺が無理やり連れだしたのだ。文句を言うなら俺に言え」


 その横で赤髪に赤銅色の肌を持つアミラル様が答えた。アルベールはそれを聞いて露骨に不愉快そうな顔を浮かべる。


「貴様……。姉上は命を狙われておるのだぞ。それ以上になぜ貴様が姉上を連れ出すのだ!!」


「デートだよ、デート。俺はアリスの婚約者だからな」


 それを聞いたアルベールは鬼のような形相になった。視線でアミラル様を殺せる気がした。

 アルベールは馬から降りると、アミラル様の顔ぎりぎりに近づける。アミラル様は平然としていた。


「姉上の将来は私が決める。男爵のお前が口を挟む問題ではない!!」


「身分は関係ないね。俺は親父に頼んでアリス嬢を婚約者として認めてもらうよう許可を得たのだ。国王の勅命を無碍にできると思っているのか?」


 ええ!? もう国王様に認めてもらったの!! いくらなんでも早すぎない!? しかも男爵の娘なのに身分が違いすぎると思うけど!!


「身分は関係ないよ。アリスの実家クールベ家は北方のカオフマン王国に宿を貸している。初代クールベ男爵はカオフマン王国出身で当時の王弟だったからな。もっとも側室の生まれで身分は低いが公達は公達だ。デュプレ国王陛下はカオフマン王国の交易にも力を入れている。北方で採れる木材や鉱石は高く売れるからな。男爵であっても王妃になれるってわけだ」


「王妃だと? お前は何を言っているのだ?」


 アルベールが聞いた。


「俺は王になる。これは水面下で動いていたことだが、主だった貴族との話し合いはついている。保守派筆頭のフリードランド侯爵も俺が国王になることを認めてくれたよ」


 保守派とは王国の伝統を守ることを重要視している派閥だ。逆に革新派は外国の文化を積極的に取り入れているという。

 確かフリードランド侯爵はこの国の元帥を務めているはずだ。頭の固い人だったが、自他とも厳しいお人で王家に対する忠誠心は国一倍である。

 そういえばリシュリュー侯爵家も保守派のひとつだったが、あちらは反対しているだろう。それに近年は力も衰えているというみたい。フリードランド家を味方に引き込んだのはアミラル様の手柄だ。


「ぬぅ……。あの堅物の侯爵がお前を認めるなど……。いったいどんな手品を使ったのだ?」


「簡単なことさ。外国との交流は続けるが、極端に伝統を蔑ろにするつもりはないとな。ナーヒブ帝国ににらみを利かせるための軍事力強化を約束したよ。カオフマン王国の鉱石と我が国の技術力があれば、武器を大量生産できるからな」


 アルベールは黙り込んだ。確かにデュプレとして見ればナーヒブ帝国と戦争などしたくない。浪費ばかりで後継者は死に絶え、資源も底をつきかねない。

 だがアルベールは首を横に振った。


「だめだ!! 姉上はどこにもやらない!! 一生マジェンタ家の屋敷で暮らしてもらうのだ!!例え国王陛下の命令であろうと、私には関係ない!! そもそも姉上をお前に嫁がせるのは大反対だったのだ!! 話はこれで終わりだ。さあ姉上行きましょう!!」


 そういってアルベールは私の腕を強引に引っ張った。ちなみにソフィアはずっと無言で私の背後に待機している。

 というかアルベールのシスコンはひどくなっていた。私をどこにもやりたくない気持ちはわかるが、一生は無理だろう。それにアミラル様曰く、私との婚約は王家が認めているらしい。いくらマジェンタ家が公爵であっても、王命に逆らえばお家取り潰しになるのは必至だ。


 それにバンジャマン王子は私の命を狙っている。アルベールの妻であるアンドレ―の実家、オセアン伯爵家の当主も同じように死を願っているのだ。


 神よ、なぜ私は前世の記憶が蘇ったのでしょうか? 私が何をしましたか?

カオフマンはドイツ語で商人を意味します。

 フリードランドは草創期のフランスの装甲艦です。なんで軍艦の名前を家名にしたのか、私にもわかりません。なんとなくなんです。

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