過去の彼と今の彼
窓の向こうには少し低い位置に街の光が瞬き離れた場所にライトアップされた城が見える。
高級マンションの一室のようで黒いソファとテーブルが広々としたリビングダイニングに置かれていた。
「すげぇ、金持ちマンションだ」
伽羅がそう思ったとき二人の人物が向かい合うように立っており、片方の壮年男性が跪いた。
二人の間には背中から血を流した青年が倒れており壮年男性と向かい合うように立っていた青年の手に包丁が握られていたのである。
…。
「これって」
伽羅は「あの夢だ!」と心で叫び壮年男性が抱き起そうした青年の顔を見て蒼褪めた。
見知った顔の人物。
知っている人物である。
去年の9月に九州へ春彦と行き、10月の事件で九州を去った一色一颯。
神宮寺家を脅迫してその特別な家系の権力を背景に好き勝手をしていたクラスメイトだ。
伽羅は目を見開き『一色君だ』と思った瞬間に、包丁を手にした青年が足を踏み出し突進してきたのである。
伽羅は「ぎゃぁ!」と声を上げると上布団と共にガバァツと上半身を起こした。
「また、一色君が…殺される夢見た」
俺もやられた
「こわっこわっ」
伽羅は携帯を手にすると春彦の番号を呼び出して通話ボタンを押した。
枕元の時計は午前2時だ。
春彦は自室のベッドの上で目を開けると携帯を手にした。
真夜中の二時である。
こんな時間に電話を入れてくる相手など携帯の名前を見なくても分かった。
「きっと伽羅だ」
春彦はモソモソと携帯の応答ボタンを押して
「もしもし、伽羅…夢見た?」
と聞いた。
伽羅は頷き
「見た」
また殺されてた
「俺も」
と必死で告げた。
…?
「また殺されてた?」
と春彦は身体を起こすと
「またってどういう意味?」
伽羅もってことは一人は違う人?
と返した。
伽羅は部屋の電気をつけて
「一色君…あの一色君がまた夢に出てきた」
と告げた。
「それで背中刺されて倒れてた」
春彦は考えながら
「一色君?あの?」
と聞き返した。
伽羅は頷いて
「間違いない」
と言い
「…今から行っても良い?」
と聞いた。
春彦は起き上がると
「静かにな」
と告げた。
「それとご両親に心配かけないようにすることな」
伽羅は頷いて
「今から行く」
と立ち上がった。
最後までお読みいただきありがとうございます。
続編があると思います。
ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。




