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リバースプロキシ  作者: 如月いさみ


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特別家系の公認会計士

春彦は男を見ると

「初めまして、夏月春彦です」

3年前に音水精密工業の社長をしていらした音水藤吾さんの息子である音水吾郎さん

と告げた。


始は驚いて音水吾郎を見た。

「君が、音水精密工業の」


春彦は頷いて

「そうです、上場したばかりで単独監査をしたとニュースになり音水精密工業は上場を取り消しになり1年後に現在の菅森電機に吸収されてしまったんです」

と告げた。

「音水さんは失意の内に半年前に亡くなり吾郎さんは大学に通えなくなり今はアルバイト生活をしているんですよね」


吾郎は視線を伏せたまま拳を握りしめていた。

「あんたが父に単独監査はダメだと説明してくれていたらあんなことにはならなかったのに」

あんたは知っていたんだろ?

「なのに」


始は軽く首を振り

「いや、私は音水さんにちゃんと伝えて単独監査しかしていないので監査法人を紹介させてもらったんだ」

と告げた。


吾郎は驚いて

「まさか!?あんたが紹介した監査法人が費用を低く抑えられると…」

と拳を握りしめた。

「親父は喜んで任せたのに」


始は視線を伏せると

「そんなことになっていたなんて…」

と立ち上がると頭を下げた。

「知らなかったとはいえ申し訳ない」

私が紹介した監査法人は四国では信頼がおける会社だったのだが


春彦は吾郎を見ると

「その監査法人もそのことでペナルティを受け、単独監査をした人はその後公認会計士を辞めています」

と告げた。

「確かにしてはいけない違反をしたその公認会計士の方は悪かったと俺は思いますが平良さんは単独監査がダメだということをちゃんと忠告していた…全てを公認会計士だけのせいにすることは違うと思います」

まして

「貴方がそのことで人を殺したり傷つけたりして良い理由にはならないと思います」


吾郎は俯いた。


春彦は吾郎を見つめ

「音水さんはまだ21歳だ」

大丈夫です

「貴方はまだ罪を犯していない…未来は変えられる」

貴方が頑張って生きることがご主人を亡くして貴方と同じように悲しんでいるお母さんを励ますことにもなると思います

「子供が頑張って幸せになっていく姿がきっとお母さんの一番の幸せの元だと俺は思います」

と告げた。

「誰かを傷つけるより自分が貴方のお母さんが幸せになる道を生きてください」


吾郎はふぅと息を吐き出すと

「確かに…全てあんたたちのせいじゃない。だけど大学を辞めなければならなくなって…その苛立ちを…ぶつけたかった」

あんたの言った通りにそうなんだ

と唇を噛みしめた。

そして、始を見ると

「…すみません」

と小さな声で告げた。


始は首を振ると

「私も紹介したら終わりでなくもっと気に掛けておくべきだった」

本当に申し訳ない

と答えた。

「もし良ければ君がしたい勉強を続けられるように力にならせてもらえたら」


吾郎は泣きながら笑顔で首を振り

「いや、それは出来ない」

俺…ここは自分の力で頑張ります

「来年、夜学の試験を受けて働きながら勉強してみます」

腐っていた気持ちも落ち着いたし

「止めてもらって良かった」

と答えた。


春彦は笑顔で頷いた。


吾郎は憑き物が落ちたようにスッキリした顔で

「母と話をします」

と告げて四国へと帰った。


始は春彦に

「良ければLINEで連絡を取り合いたいと思っているんだが」

税務処理のこともある

「だがそれだけでなく君に力を借りたいことも出る気がしてね」

良ければだが

と告げた。


春彦は笑顔で

「いえ、俺こそお世話になります」

とLINEを交換した。


始は立ち去り際に

「私が監査を辞めたのは…旧知の刑事に助力を頼まれてね」

その時にコンサルティングや税務相談の方が良いと言われたからなんだ

「実家を離れて四国に住むようになった理由は…いずれまた」

君が婚約を破断したせいではない事だけは言っておく

と笑顔で告げて去って行った。


…ああ、その旧知の刑事はテリアーサー君も知っている私の所属していたギルドの中心人物だよ…

「じゃ、彼によろしく」


春彦は「え!?」と驚きながら呆然と見送った。

「…それって…監査からコンサルティングに変えたのは…まさか…ゲームの為だったのか?」


流石にそれを推理することはできなかったのだ。

その日、花村巴瑞季から絵の手ほどきを受けて戻ってきた伽羅に春彦がそれを告げると伽羅もまた驚いて

「えー、そんな理由で…俺びっくりした」

とガクガクと震えた。


そして、春彦はその日の夜に東雲夕矢から5月に頼まれていた件を夕矢と平良始の伝言を白露允華に知らせた。


夕矢に関しては「ありがとう、春彦さんの考え…参考にして今度会ったらぶつかってみる」と返してきた。

允華に関しては「スイフィさん!?そうなんだ。今度会ったら俺からも宜しくって言ってたって伝えておいて」と返ってきた。


春彦は一人自室のベッドの上で二人の返事を見て笑みを浮かべると

「何か…不思議な縁だよなぁ」

と呟き

「そろそろ夏休みに東京へ帰ることお母さんと春馬兄さんに知らせておかないとな」

と身体を横にすると目を閉じた。


事件が終わり、7月を前に期末テストが始まろうとしていた。

そう、いつの間にか夏が訪れようとしていたのである。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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