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巌流島の恋人たち

譲は指示を出し終えると春彦を見て

「春彦さま、警察機構でも一人で全てをしてるわけではありません」

ただ的確な読みと指示が無ければ事件は解決できないということです

と告げた。

「春彦さまはこれからそう言う部分を考えていかれると良いかと思います」


春彦は譲の言っていることと允華が言っていることが共通していることに気付き

「わかった、ありがとう」

武藤さん

と答えた。


譲は笑顔で頷くと

「では、午前中の警護のレクチャーを行います」

と告げた。


春彦は「お願いします」と答えた。


春彦が探偵をしているということは更紗も春馬も知っているところである。

以前に更紗が譲にそのことで人員を用意することをすでに伝えていたので3月の狙撃事件で一か月ほど空白はあったものの、譲としてはその手配を今回生かすことが出来たのは幸いであった。


その日の夕刻には春彦が頼んだ情報が譲の元へと届いたのである。


伽羅が帰宅し、夕食を終えると部屋へ戻った二人に

「春彦さま、届きました情報をお伝えしようと思いますが」

と告げた。


春彦は驚き

「え!?あ、うん」

ありがとうございます

と答えた。


譲は春彦の部屋にプロジェクターを持ち込むとそこに携帯をつなげて壁に映像を映した。

「先ず、愛媛県の松山の映像からお送りいたします」

興居島は島一周が大体二時間半から三時間くらいです


春彦は地図を思い出しながら

「どういうルートで?」

と聞いた。


譲は携帯を操作してマップを出すと

「この泊港から恋人峠に子持山、そして、這磯鼻から琴引鼻を抜けて再び泊港です」

と説明した。


春彦はそれを見ると

「あ、じゃあ…子持山まで見せてもらえるかな?」

一周してもらったのにごめん

と告げた。


譲は笑顔で

「かしこまりました」

と答え、映像を流した。


興居島の泊港の港の映像から始まり、ゆっくり走らせた車からの映像であった。

恐らく車の上に360度のパノラマビデオが付いているのだろう。

細長い映像であった。


春彦はそれを見ながら伽羅の描いた風景の映像と見比べた。

泊港から子持山まで30分程であった。


春彦は映像が一時停止すると頷いて

「ありがとう、巌流島の方を見せてもらえる?」

と聞いた。


譲は頷いて操作した。

「巌流島は徒歩でも40分もあれば一周できる小さな島で車などの乗り入れはできませんので徒歩での撮影になっております」

桟橋から

右回りに一周となっております


春彦は頷いた。

桟橋から直ぐに休憩所があり文学碑を前に海岸沿いを進み、武蔵小次郎像の前を通り人工浜の朽ちた船を横手に門司側の風景が海の向こうに広がった瞬間に伽羅が「あ!」と声を上げた。


春彦も慌てて

「ごめん、止めて」

と声をかけた。


譲は頷いて停止ボタンを押した。


春彦は画像を見ると

「やっぱり、巌流島の方だ」

と呟き

「確か、夜明け前だったよな」

と伽羅を見た。


伽羅は頷き

「ん」

と答えた。


それに譲は

「巌流島を往復する船は朝の9時台から夕方4時台で終わっております」

と告げた。


春彦は腕を組むと

「つまり、夕方4時台の最終に乗り損ねると翌日まで島を出れないってことか」

と言い

「だからこそ、ずっとそこにいたのかもしれないけど」

普通だったら

と心で呟いた。


譲は携帯を操作しながら

「それから、男性の方と女性の方につきまして」

と告げた。


春彦は驚いて

「それも調べられたのか?」

と聞いた。


譲は頷き

「はい」

と答えた。

「年齢が30代くらいと仰っておられたので両県の20年前くらいからの小中高の卒業写真を調べさせました」

ヒットした時点でその人物の戸籍等を調べる方向に切り替えましたが


春彦は固唾を飲みこみ

「そう、なんだ」

と答えた。

「それで?」


譲は手帳を出すと

「はい、女性の方は名前を久那須理と言い年齢は27歳で現在は下関にあるフレックスカンパニーという会社で事務員をしております」

と告げた。

「ただ、久那という家は島津や伊藤と同じ特別な家系です」

区域は違いますが

「同じ特別な家系でも区域が違えば情報量は極端に少なく今回のように深く調べて初めて分かることもあります」

もしかして、ご存じだったとか?


春彦はそれに目を細めた。

「うーん、そうだとは知らなかったけど…でも、そうなんだ」

それで男性の方は?


譲は頷くと

「男性は荒戸和也と言い年齢は久那須理と同じ27歳で幾つかの企業を経営しております」

いえ、こちらも男性も特別な家系です

と答えた。

「お二人は同じ小学校に通い幼馴染のようです」


春彦は頷いて

「そうなんだ」

と答え

「久那家と荒戸家の関係ってどうなの?」

と聞いた。


特別な家系の二人が伽羅の見たようなことになるというのは…伊藤家や島津家、神宮寺家などが抱えていたような何かがあった可能性がある。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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