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リバースプロキシ  作者: 如月いさみ


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狙撃

春彦は5人で弁当を食べると輪になって話をしていた。

最近の話題は大学のことであるが、今日は樹から話があったのだ。

「実は、詩音…の話しただろ?」


春彦は頷いて

「うん、磐井栞さんと陸奥君のお父さんとの子だろ?」

直兄の父違いの妹になると思うけど

と告げた。


悠真は「そうか」と言い

「思わないところで繋がってるよな」

と呟いた。


凜も朔も頷いて

「「確かに」」

と答えた。


樹は考えながら

「それで、多分…今日あたり詩音がその尋ねるというか…こっそりかもしれないけど見に行くというか」

とシドロモドロと告げた。


春彦は理解すると微笑んで

「直兄なら大丈夫だと思う」

年末に来た時に詩音ちゃんのこと言っておいたし

「血のつながってない俺をここまで育ててくれたんだ」

詩音ちゃんのことも受け入れてくれる

「絶対に」

と告げた。


樹は安堵の息を吐き出すと

「良かった」

と身体の力を抜いた。


樹とは母違いの妹でこれまで二人三脚で生きてきたのだ。

やはり悲しい目に合って欲しくなかったのである。


春彦は笑顔で

「俺にとっても妹になるよな」

俺は直兄の弟だし

と告げた。


その時、扉が開き羽田野大翔が姿を見せた。


春彦も誰もが顔を向け

「羽田野君」

と声を零した。


次の瞬間に大翔は目を見開くと

「お前ら!早く中へ入れー!!」

と手を払うように動かした。


太陽は燦々と照り、一陣の風が流れていく。


声に弾かれるように全員が立ち上がりかけた瞬間に屋上の床に血が広がった。

春彦は一瞬何が起きたのか分からなかった。

いや、その場にいた誰もが何があったのか分からなかったのである。


春彦は胸を抑えると息苦しさにその場に倒れ込み駆け寄ってくる大翔を見つめた。

朔は春彦の背後のビルを見ると間に入り込むように両手を広げて立ち

「早く!夏月君を」

田中君!!

と怒鳴った。


悠真は頷くと春彦を抱き上げて扉を開いて駆け寄ってくる大翔の影になるように走った。

凛と樹も悠真に沿うように走って狙撃者から春彦を守ったのである。


正に一瞬の悪夢のような出来事であった。


大翔は血が溢れる場所を抑え

「南は直ぐに医務室に行って医者を呼んで来い!」

それから

「お前らの誰でも良いから島津家に連絡を!」

と叫んだ。


「死ぬな、絶対に死ぬな」

夏月


みるみる蒼褪め生気を失っていく姿に全員が言葉を失っていた。

頭が真っ白になって言葉も何も浮かばなかったのだ。


長いような短い時間の後に春彦は不意に薄目を開けると震える指先を空間に伸ばした。

「…思い…出した…お…父さん…」

と、指で何かを描くとそのままぱったりと手を床に落とした。


血はその場にも広がり医師が慌てて上がってきたときには血だまりがそこに広がっていたのである。

救急車は島津家の病院へと向かい、そのまま緊急手術へと突入したのである。


伽羅は春彦に通じないと直ぐに夏月家へと連絡を入れたが、そちらでも留守番応答が返るだけで電話に応えることはなかった。


その福岡空港から島津家へ向かっている最中に譲から

「今、島津家から連絡が入りました」

学校で春彦さまが狙撃…され…病院で緊急手術を受けられていると

と告げられたのである。


譲は初めて一瞬路肩に車を止めて己を落ち着かせると直ぐにウィンカーを出して車を走らせた。


まさかである。


伽羅は震えながら前を見つめ強く両手を握り合わせていた。

「春彦…直彦さん…無事で」

絶対に生きてくれ


小さく呟き流れていく景色の中で祈るしかなかった。


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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