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リバースプロキシ  作者: 如月いさみ


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27/124

狙撃

東京の羽田から福岡まで飛行機でほぼ二時間のフライトである。


伽羅は座席について手持ちの鞄の中を見た。

「これが更紗さんとこれが春馬さんで、これが武藤さんな」

忘れてない

と呟き、フムフムと頷いた。


春彦から東京へ帰る前に頼まれたモノである。


渡された封筒にはお金が入っており同封の手紙には

『東京でお母さんには本に挟む栞と春馬兄さんと武藤さんにはネクタイピンを買ってきて欲しいんだ。いつも心配かけてるから何かお礼と思ってるけど九州じゃ買えなので宜しくノシ』

『伽羅のセンスに任せる!』

と書かれていた。


確かに九州で買い物をしようとしても支払いは全て島津家になってしまう。

それでは意味がないのだ。


伽羅は中を確認して

「よし!大丈夫」

というとランディングを始めた飛行機の重力に身体を任せながらゆっくりと目を閉じた。


その夢の中で伽羅は喪服を着て呆然と立っていたのである。

雨がしとしとと降り口々に話をしながら人々が行き交っていく。


周囲には見知った友達や知り合いがジッと一点を見つめていた。

そこには二枚の黒縁の写真が飾られ、並ぶように棺が置かれていた。


淡い髪の少女が横に立つと

「伽羅君…春彦さんと直彦さんを奪った人を恨んじゃダメなのかな?」

春彦さんならこんな私を怒るかな

「学校の屋上で撃たれて即死だったんだって…田中さんも伊藤さんも神宮寺さんも陸奥さんも皆…申し訳なくて来れないって」

皆のせいじゃないのに…皆…苦しんでるの

「許せないって思っちゃダメなのかな」

と懸命に涙を堪えながら告げていた。


いつもは笑顔で『チャラ男くん』と呼ぶ彼女が…生気を無くした顔で立っている。


伽羅は背中をそっと押されて反対の横を見た。

津村隆が立って伽羅を見つめていた。

「直彦にも花を手向けてやってくれ」

俺が油断していたせいで

「…まさか、春彦君が狙撃されたなんて電話で呼び出されて狙撃されるなんて…な」

島津家も…終わってしまった

「俺たちの計画も…全て」


…気泡に還った…


伽羅はハッと目を覚ますと身体を起こして置いていた携帯で時間を見た。

到着まで15分。

時間は12時10分であった。


「まさか…」

伽羅は携帯をかけるために立ち上がり掛けて響いた機内アナウンスに目を見開いた。

『当機は間もなく福岡空港に到着いたします。お客様の安全の為に席に着きベルトの着用をお願いいたします』


伽羅は席に座ると祈る思いで携帯を握りしめた。

「今日じゃないように」

春彦…屋上に出ないくれ


飛行機は高度を下げて福岡空港の滑走路へと降り立ったのである。


3月最初の火曜日…3月7日。

春を告げるような太陽が青い空で輝く正午のことであった。


リバースプロキシ


最後までお読みいただきありがとうございます。


続編があると思います。

ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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