表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(とある街並みの風景)  作者: 珀武真由
4/13

先輩

 「ふわぁ、眠い眠い」


 目を擦りながら赤いバトンを振り上げる。

   (ピイィィイイイイ)


 奥の道路から笛がなり、確認をして自分側の車を止めるためバトンを横に、胸の前におし止め指定位置に立ち、車を止めた・・・・・・はずなのに

 なのに、車が突っ込んでくる。


 「!!!」


 目の前ギリギリで車は止まった。

 危なく自分は轢かれ掛けた。


 「大丈夫ですか? 起きてますか」


 開いている窓から声を掛ける。

 なぜか冷静に運転手に声を掛けてる。


 「あっ!!!」

 「おおっ」


 同じ会社の男の先輩だった。


 「ああ、君か。大丈夫かね?」


 (おお! なんてことか・・あ・・あろうことか先輩! しかも、掛け持ち禁止! )


        焦った。


 「はいっ。大丈夫ですが、起きてます?」

 「すまない。一つ間違ってたら・・・」

 (ピイィイイイイ)

 「あっ」

 「あ! 進むのかな? ごめん。また明日?いやっ、今日だな」

 「あっあっ、お疲れさまです」


 誘導して別れた。


    (がっ!! ちょっと待て! 本当に一つ間違っていたら事故だぞ? こっちはこっちで誘導側だから何か言われるかもだぞ? 死んでるかも? 大怪我かも? ばれたぞ! 責任が問われたかも? ・・・・・・。)

 


 先輩と別れてから色々と頭の中に感情が押し寄せる。

  (ピイィイイイイ)


 「・・・・・・・・・」


 一通り振り終え、頭のメットを外し整備を終了で、この仕事は終えた。

 まさか、整備の警備をしてるときに先輩に会うとは思いもしない出来事に疲れながら家路に着く。


   (ぼふっ)

 「はあ。寝よ! 会社まで時間あるし」


 ベッドに、身を委ねとりあえず一旦寝ることにした。


   『おはよう』『おはっよ』

 (っパツパツ カタカタ パッチカタタタ)


  『この書類はー』『ねえ、ここ誰がー』


 (カタッ カタタッ パン)

 「ふう、打ち終えました。これ、持って行きます」

 「ああ、頼む」


 書類を、打ち終え上司に出しに席を立つ。

 無事、会社で仕事を出来る今日に安堵した。


 (夜のことが嘘みたいだっ。良かったぁ。ちゃんと動いてるよ~自分)


 書類を出すとき、轢かれ掛けた先輩の席の後ろを歩いた。


 「あっ」

 「おお! 元気だね」


 先輩は、ニコッとしている。


 (いやぁ、違う。ニコッではなくてここは謝るとこだと思うが?)


 少しドキドキしながら気丈に振る舞い去って行く。

 お昼になり、席でお弁当を食べていると車の先輩が声を掛けてきた。


 「今日この後良いかね」


 声を、掛けられるとは思いもしなかったのでびっくりしながらも返答をする。


 「良いっすよ」


 会社が終え先輩に連れられ居酒屋の暖簾をくぐる。


 「はいっお二人、生2丁!!」

 「えっ、あの!」


 席に着くなり注文が決まっているので驚いていると先輩が笑っている


 「はは、驚いた? ここ通いでね。いつも私が悩むから初めがもう決まってるんだよ」

 「はあ、っすか」


 席にはお通しと生が出てきた。


 「ささっ、ではとりあえずこれで。お疲れさまです」

 「あっ、お疲れっす」


 ジョッキを合わせると、カチンとガラスのいい音がする。

 泡が弾き、とにかく喉を潤おした。

 

 「くうぅ。美味っし」

 

 ジョッキを置き、ビールの炭酸に打ち震えてると隣から喉が呻る音がしている。


 「ゴキュ。ゴキュ。ゴキュググッ、プはぁ」


 (嘘だろ? 一気に飲めるモンなのか?)

 「先輩、そんなっ大丈夫なんですか」


 先輩は、見た目四十前半の中年の叔父さんに見えるが大丈夫なのか、と心配した。


 「ぐわぁぁ、いいね。仕事終わりの一杯」

 「はい、美味しいです」

 「店員さん。生二つ」

 「はい、生二。はいりまーす」

 

 呆然と先輩を見つめた。


 「大丈夫っすか? 速くないですか」

 「? いつものことだ。君も飲みなさい。遠慮はいらないよ。今日の詫びだよ」

 「はいっ、いただきます。食べ物のいいですか?」

 「いいよ。いいよ。今日バイトは」

 「あっ、ないっすよ。あっ」


 気まずそうに言葉を止めると先輩はニッと笑い肩を叩いた。


 「大丈夫! 内緒にしておくから」

 「すみません」

 「まあ、確かにいけないことだが、君の働きに感動だ。若い内だけだよ。出来るときにやりたまえ」

       

 (ドンッ)

 「はっい。お待ち」


 目の前にジョッキが置かれる。


 「ささっ、また乾杯しよう。君と私の愚痴り大会だ。夜、車を走らせてたのは取引先に荷物搬入を頼まれてね」

 「はあ、そうなんすか」


 とにかく乾杯をしたが愚痴を言い合うのか。そうか、そうなのかって納得いくかッ!!


って思いながらもいつの間にかお互い打ち解け愚痴りあっていた。


 「もう、ほんと、給料何とかならないっす? このままだと」

 「君、まだいいじゃんか。私なんてね、ここしか()いのよ」


 グダグダになりお互いふらふらで暖簾をくぐり家路に着いた。


 って先輩おるじゃん。


 朝、目が覚めると先輩がいびきをかいて顔を掻いている。


 お持ち帰りは普通女子だろ?

 女性だろ?

 まあ、自分にそんな縁がないから今の現状なんですけどね。


 溜息をつき先輩の寝顔を見ていると笑えてきた。四十のおっさんの寝顔が無邪気で面白い。


 (こんなことを考えてるのは失礼かな?)


 インスタントの味噌汁を二つ用意して先輩を起そうとしたら・・・。


  《メールです。メールです。おーい》


 な、なんでキャラボイス?っと驚いていると先輩が起きた。

 驚いた先輩はひたすら謝り、その後奥さんにも謝っている。


 面白い。こんな中年もいるんだと感心した。


 その後、なぜか気が合い色々と連むようになる。

 不思議なモノだと思いながらも今日はランチの約束をしている。

 だが、お互いを全部知り尽くしているかと言えばそうじゃない。

 まあ、こんなお付き合いも有りだと思い連んでいる。

 相談もしやすいしね。


     ただ一つ気になる。


 「やあ、お待たせ。今日は珈琲の自慢のお店だ。ランチもうまうまだ」


 たまに可笑しな口調にこの人は気づいてるのだろうか?


 「先輩、あの時のキャラボイス何ですか?」


 尋ねると小さい声でごもごもと返答された。

 

 「あはははは、息子のお気にって!」


 横に照れる先輩がいる。

 あと自分がこんな風に人と付き合えるのに驚いている。

  

 そして、先輩おすすめのカフェへと歩く。


  ああ、先輩もいいが彼女が欲しいと

      思う自分がいた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ