とある教室の風景
おはようございます。
そしてお疲れさまです。
そしてお久しぶりです……。
「これ、貰ってください」
(ナヌッ?)
体育館の脇にあるベンチで寝ていると声がした。急いで飛び起きたのだが。
声を掛けられたのは、俺ではなかった。
「ん。コホン、ゴホッ」
「あっ、すみません」
慌てて消えて行く男女二人。
はぁあ、そうか。今日は例の日か……
考え起きた俺。
気が付くと、俺が寝ている場所は男女の憩いの場と化す。
何だよ。
チャラチャラ、浮かれやがって。
カップルが成立する者しない者。
俺は横目で見つつ、去って行く。昼寝を邪魔された上に、腹立つ所を見せられた。
ああ、これは僻みさ。自分が貰えるはずがない。
教室に戻ると、ここはここで、例のイベント場所に。
浮かれたヤロウと悄気るヤロウ。
無関心なヤロウと、関心あるヤロウとに。
誰だよ。こんな日を作ったヤツは、そもそもこれは日本の行事じゃねぇだろう?
周りの賑わいに心が濁る俺がいた。
気が付くと俺は席で寝ていた。
授業も知らない内に終わり、皆が急ぎ足で帰る。
「おお。よく寝て」
ヨダレを垂らす俺にハンカチを出す女がいる。後ろの席のそこそこ可愛い子。
挨拶と軽く言葉を交わすが、それ以外は……まあ、時折ノートを貸したり、教えたり。でも、ここ以外の接点は皆無。
「先生が怒ってたよ。でも起きないとは気持ちよく寝てたんだね」
俺は出されたハンカチを押しのけ、シャツの袖でヨダレを拭く。
一言、礼を述べ席を立つ。
「あっ、これ」
可愛いビニールの袋に入った板チョコを渡された。
「クラスに配ったんだけど、あなただけはいなかったから」
礼を述べ、受け取り無造作に開けその子の前で食い始めると……。
「あっ、君は家で───!」
言われ気がついたが時すでに、で慌てる。
半分、食べかけのチョコを見て茫然。チョコの残りに文字がある。
「好」の一文字。
「えーと」
彼女の顔は赤いが、俺は青い。
食べる前に言ってよ──!
チョコを握りしめ、机に項垂れる。気にせず食した俺もだが、お~い。
こんな告白はアリなのか。
照れる彼女を前に俺は笑う。
赤い顔は、口を半開きに歪めもじもじしている。
俺は思わず食いかけのチョコを突っ込んでしまう。
内心、俺も照れたから。
俺の無関心も関心へと変わった。