5.報告、上司家族と説明を
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予想外のアクシデントもあったが、俺はそれでも俺は無事に家に帰ることができた。これもラピッドハートが助けに来てくれたおかげである。今回は妙に到着が早かったので、もしかすると学校の近くに住んでいるのかもしれない。
そうなると俺はラピッドハートと知らず知らずのうちに朝の挨拶を交わしていたりするのではないだろうか。
「なんか、興奮してきたな……!」
今日も俺は絶好調である。俺は、半ばスキップで鹿島さんのいる部屋へと向かった。
鹿島さんのいる部屋は決まってリビングか、仕事用に改築されたオフィスである。今日はクライマーの出現もあったため、オフィスにその姿はあった。
「ただいま戻りました」
俺は形式上の堅苦しい挨拶をして、鹿島さんに一応礼をする。
「はいよー」
特徴的な赤茶髪の頭を揺らしながら、鹿島さんがだらしなく答えた。こうなれば、俺ももう堅苦しい言葉は不要である。
「怪我人とかいたか?」
「いや、いないよ。今回もバッチリだった。おかげで私も褒められたし、今月はちょぉっとお給金に色も付くってー」
「ああ、だから嬉しそうなのか」
くねくねと動きながら、だらしのない笑みを浮かべる一応の上司を見て納得した。
「ふふー、お肉高いの買っちゃおうっかなー」
「それ、俺も食っていいのか?」
「勿論だよー。何食べる? 豚? 牛? 鳥?」
「うーん、鳥」
「そっかー。よし、ジンギスカンにしよう」
「もう決まってたろソレ、おい」
他愛もない会話をしながらソファーに座る。来客用という事もあって、少し質の良いそれは、任務終わりの体を程よい眠気に誘う。
「なぁ」
「ん-?」
「ひとつ聞いていいか」
「今ならなんでも答えちゃうよー」
「……服、おかしくねえか」
俺がこの部屋に来た時から今の今まで、鹿島さんの服はおかしかった。上がスーツで下が短パンなのだ。何やら書類整理をしていたから、仕事中ではあるはずなのだが、随分と社会を舐め腐った恰好である。
「私気が付いたんだけどー、上層部との通信って上しか映らないからこれで良くないー?」
「仮にも部下にする発言じゃねえな」
「じゃあ家族としてー」
「そんな恰好で仕事する奴に家族を名乗ってほしくない」
「どうしてそんなこと言うの、お兄ちゃん」
「まさかの妹枠!? アンタ今年で26だろ!?」
「うっ……」
俺の指摘に、胸を抑えるようにして鹿島さんが呟く。
「ありじゃ、ない?」
「キツイ」
「まさかの一刀両断でもはや気持ちがいいよー」
「なんだコイツ無敵か?」
苦しそうな顔をしていたかと思えば、次の瞬間にはへらへらと笑っている。やはり鹿島さんはイカれているようだ。
「ねえ、ユキくん」
「あ?」
しばらくソファーでぐーたらしていると、鹿島さんが再び俺に話しかけてきた。顔だけ動かして見てみれば、また何やら嬉しそうな顔で此方を見ている。
「何か、良い事でもあった?」
「なんでそんなこと訊くんだよ」
「だってさー、嬉しそうだったし」
「誰が」
「ユキくん」
「いつ」
「今も、ずっと」
「……どうしてそう思ったんだ」
「いやぁ、勘? というか、もう何年も一緒に居るんだしわかるよー。私じゃなくてもわかるんじゃないかなー?」
胸の前でパタパタと手を合わせながらそう言う鹿島さん。俺はそれに釣られて顔を触ってみるが、自分では変化がわからない。いつも通りだと思ったのだが。
「何かあったのー?」
「何か……」
そう言われて一日を振り返る。確かに、思い当たる節はいくつかあった。
「友達、出来たかもしれねえ」
「えっ!?」
今までで一番の声の張り上げだった。そこまで驚かなくてもいいのでは、と思うのだが鹿島さんはそういう訳にも行かないようで、すぐさま俺の方へと駆け寄ってきた。
「嘘嘘! 年は? どこに住んでいるのー? 趣味はー? どこで知り合ったのー?」
「まてまて、そんな一気に訊くな。俺だってそんなに知らねえよ。名前と趣味くらいだ」
「そっかー。……男、女?」
「男だ」
「ああ……もう半分興味ないよー」
「それ申告する必要あるか? というか、男じゃ悪いのかよ」
「悪くないけどー。やっぱりお年頃だしー、少しは浮いた話の一つでもさー?」
「あるわけねえだろ」
残念ながら、俺に浮いた話はない。まあ、ラピッドハートへの告白次第では変わるかもしれないが。望みは薄いだろう。
「そっかー。あ、お友達はどんな感じの子なのー?」
「んー、根暗、らしい」
「他人事みたいだねー」
「周りにはそう言われてんだよ。けど、実際話したらそこまで悪い奴じゃなかったな、うん。むしろ良い奴だった」
「素直に他人を誉めるなんて、珍しいねー」
「は? 誉めるときは誉めるわ。それにようやく見つけた三人目のラピッドハート有識者だぞ」
「あぁ、そういうのか……」
鹿島さんの声のトーンが数段落ちた。新聞の勧誘とかに対応するときの声となんら変わりない、興味ゼロの声だ。
「い、いやそれだけじゃねえよ!」
せっかく出来た友達だと言うのに、そんな反応をされるのは癪である。俺は、どうにか他に冬稀の良いところを挙げようと頭を働かせた。
そして、
「かわいい」
「……ゑ?」
「だから、かわいい」
「女?」
「男」
「……女?」
「だから、男だっての!」
「だったらその感想はおかしいよねー!?」
「しょうがねえだろそうなんだからァ! 女みたいな顔っていうか、仕草の一つ一つが女子っていうかァ! 綺麗な目だったし、髪も……って何言ってんだ俺ェ!」
「本当だよ……」
まだ友達になったばかりで、内面まではわからないのが仇になった。上げるとしたら特徴的な外見くらいだったのだ。
「そういうのじゃねえからな?」
「そう願ってるよ……」
「マジで違うから、勘違いすんな」
「ごめんね……?」
「謝るなァ!」
なお、誤解が解けるまでに一晩掛かったことをここに明記しておく。
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