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「で、どこに行くんだ?」

 暫くの間笑い続けた後、グラントは私の目をじっと見つめながらそう言った。

 シフォンのことは勿論内密に行わなければならない。私からグラントには何も言えない。

「どこに行くってぇ? なんのことぉ?」

 本来ならここは首を傾げたい所だけど……。代わりに高音の少し耳障りな声を出した。

「いつもニースと何かコソコソしているだろ」

「何のことかよく分からないよぉ~」

「俺をあんまりなめんなよ」

「怒んないでよぉ! リル、本当に……何の話をされているのか、分かんないんだもん~」

 私は少し泣きまねを挟みながら、眉を八の字にしてそう答えた。

 ここは何があってもぶりっ子演技を突き通さなければならない。これ以上グラントに勘付かれるとまずい。というか、何故グラントは私のこの演技で引き下がらないんだよ。

「リル、俺は真剣だ。お前の助けになりたい」

 グラントは私の手を掴み、真剣な目で私を見る。焦げ茶色の瞳の中に私が映っているのが分かった。

 どういう展開でグラントは私のことを助けたいなんて思うようになったんだろう。誰かの差し金?

「助けるって何の話ぃ?」

 私は満面の笑みでそう言いながらグラントの手を解こうとしたが、思ったより力強くて全く動けなかった。

 男の人ってやっぱり力強いな。女の私が筋力で彼に挑もうとしても絶対に負けるから、急所を突くしか……。

「リルが変になったことなんて皆気付いているんだ」

 でしょうね。逆に気付いていなかったらそっちの方が大問題だよ。

「変になってからソフィアを虐めることはやめたし、色々な問題が解決していくし、一体何があったんだ?」

「リルは怪しいことなんて何にもしていないよぉ~、ただ心チェ~ンジッしただけだお」

 私は無理くりグラントから手を引き抜き、そのまま目の隣でピースをした。

 もう、私に言うことは何もなくなったのか、グラントは大きなため息をついた。

「今は一体なんの為に生きているんだ?」

「はい?」

 思いもよらぬ質問に素の私が出てしまった。そんな哲学的な質問を今する?

「前に言っていただろう、私の生きがいはソフィアを苛め抜いて苦しみを与えるんだって」

 あ~、そんなこと言ってたんだ私。どれだけウィクリフに溺れていたんだろう。そう考えたら過去の自分が気持ち悪過ぎる。

 ウィクリフに愛される為に自分磨きをするんじゃなくて、実の姉を苛める方に走った私って……なんて愚かだったんだろう。

 そもそもどうして人間は生きている意味とか生きている目的とか見出そうとするんだろう。

「そんなもの、何にもないのに……」

「え?」

「人間だけだよっ、そんな何の為に生きているんだろうって考えるのなんてぇ~。ただ生まれて死ぬだけ、その過程の生きているってことに意味をを考えるなんて馬鹿だよぉ~」

「どういうことだ?」

「もうっ、グラント様の分からず屋ぁ! 生きている意味なんてものは人間が生み出したものなの! 生きている意味や目的を作ることによって、私達の生活はより充実するし幸せになれるから、人間はそんなことを考え始めたんだよぉ~」

「……例えば?」

「家族を守りたいってことを生きる目的にするのなら、その人は日々精進し、強くなろうとするでしょぉ~?」

 私の返答にグラントは瞳孔を開き固まった。私の言った内容よりも私がそう答えたことに対して驚いているみたい。

 …………もしかして、さっきの「例えば?」って質問は私を試した? まずい、非常にまずい。

 こういう時、いつもならニースが助けてくれていたけど、今は自分でどうにかしないと。

「だからねっ、ソフィアを苛めることによって私は日々幸せを感じてたんだよっ」

 私はニコッと口角を上げてそう答えた。

 ここまで言ったらグラントももう私と話をしたいなんて思わないはず……。

「それは昔の話だろう?」

 ……そうきましたか。まぁ、そうくるよね。

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