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「ある方を探して欲しいのですわ」

 シフォンはそれだけ言って話すのをやめた。

「漠然だな」

「……わたくしの話を理解してくれる方がこの世にいるはずないもの」

 シフォンは言いにくそうに少し俯く。相談しようとしていた決意が少し揺れているように見える。

 さっきまでの勢いはどうしたんだ。体の力が一気に抜けそうになる。

 それぐらいの決意なら話を聞くだけ無駄だ。私は手をひらひらとさせてその場を立ち去ろうとした。

「何も言わないなら協力出来ないね、じゃあね」

「おい、リル、待て」

 ニースが私の腕を掴む。私はニースの腕を一瞥した。ニースって割と細身だけど、筋肉がある。上腕二頭筋、上腕三頭筋を馬鹿みたいに鍛える人がいるけど、彼の筋肉の付き方は理想的だ。バランスよく鍛えられている。体脂肪率どれくらいなんだろう……。

「リル?」

「え、ああ、ごめん。何?」

「シフォンのペースで話を聞いてやろう」

「……分かった」

 ニースの視線にすっかり気圧されて頷いてしまった。

 私達はシフォンの方を振り向いた。彼女は少し申し訳なさそうな表情で口を開いた。

「……婚約者がいたの。親は関係なく、私達だけで交わした約束ですわ。だけど……、ある日から完全に姿を消してしまって、行方が分からないの」

 もうすぐ泣きそうな表情で彼女はそう言った。声が微かに震えているのが分かった。

 泣き顔も可愛らしいな、と余計なことを考えてしまった。美少女はどんな表情をしても何をしても可愛いという理論が作れそうだ。……まぁ、そんな論文誰も読まないだろうけど。

「相手は貴族なのか?」

「はい」

「両親に言えない理由が何かあったのか?」

 ニースの言葉にハッとシフォンは顔を上げた。眉間に皺を寄せて助けをすがるような子犬のような目でニースを見つめる。

「私が世間とずれていて、ニース様達を不快にされるようなお話でも、助けて下さいますか?」

 ニースは言葉に詰まった。

 確かに、内容によっては簡単に首を縦に振ることは出来ない。だが、シフォンが抱えている問題はとても重要で誰にもばらされたくないことなのだろう。もしその重大な話をするだけして、私達が力を貸さないとなると……、言うか迷うのも無理はないか。

「世間から白い目で見られるような内容?」

「……ええ」

「相手が女?」

 私の言葉にシフォンは目を大きく見開き固まった。ニースも私の言葉に瞠目した。

 彼女の反応から私の言ったことが当たったようだ。

 これぐらいしか思いつかなかったんだよね。親に秘密、フィアンセ、世間の目、だけの情報だと。

 ステレオタイプが多いこの世界じゃ、周りから認めてもらえないのも分かる。時代、貴族、型にはまった考え方、……面倒くさいな。

「どうして……」

 彼女を見ている感じだと、性同一性障害って感じはなさそうだから、普通にレズビアンってことかな。

「どうして分かったの?」

「適当だよ」

「私を忌避しないの?」

「して欲しいの?」

 私の反応がそんなに変なのか、シフォンは私にとても驚く。今にも泣きそうだ。

「ニース様は……」

「大丈夫だよ、私の主だから。従者の考え方を参考にして自分の考えを述べるはず」

 私が言ったことにニースはほとんど反応しなかったが若干引いていたのが分かった。今まで周りにそんな人がいなかったのだから、突然前例のないものが出てきても困惑するのは仕方がない。

 理解出来るか出来ないかは別として。知らないことを知るということが重要だ。

 異文化理解と変わらない。これも異文化の一種である。

「理解できなくとも尊重はしてもらう」

 ニースの方を見据えながら私はそう言った。一瞬きょとんとした表情をしたが、すぐに彼は口元を少し上げてフッと笑った。

 まただ、前回同様私に期待する目を向けている。

 期待に応えられるか分からないけど、私なりに頑張ってみますよ、主。心の中でそう呟いた。

「リル様は私の考え方に理解できるの?」

「出来ないよ」

 私がそう即答すると、シフォンの「え」とニースの「は」が重なって聞こえた。

「理解出来なくて当たり前なんだって。というか、簡単に理解されても困るでしょ? 個々違う考え方を持っているんだから。簡単に言うと、ケーキ好きとクッキー好きがどっちが良いかなんて争っても水掛け論になるってこと」

「そんな簡単な話なの?」

「皆馬鹿だから単純なことを複雑にしたがるんだよ。あ、馬鹿は失礼か」

 私の言葉にシフォンは表情を柔らかくして笑った。どんな表情をしても可愛いけど、やっぱり笑顔が一番良い。

「きっと、この私の考え方も理解されないよ。けど、それを貶したり軽蔑したりするのはよくない。お互いを尊重しようなんていうじゃん? ざっと言えば、そういうこと。」

 私はそこで一呼吸置いて、ニースの方を見た。

「ってことで、私の言いたいこと理解されましたか? 主」

「ああ。……リルが公で演説すれば世界は変わるかもな」

 そう言ってニースは私の頭を軽く撫でた。さっきからニースに私の髪型をどんどん崩されてる気がする。ニースと同い年なはずなのに、彼の方がずっと余裕で大人びている気がする。

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