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「長旅だったね~!」
リマが背伸びをしながらそう言った。
本来なら皆帰る。しかし、今日はソフィアと私の誕生会を家で開かれるからそのまま私達の家で全員馬車を降りた。
誕生日か、ということは私、今日で十七歳……。正直、何も感じない。年を取ったな、ぐらい。
「ソフィア誕生日おめでとう!」
「十七歳か、早いな。おめでとうソフィア」
「ソフィアにとって素敵な一年になるように」
「有難う! 皆!」
リマ、グラント、バイロン、次々とソフィアを祝う。それに応えるソフィアの笑顔がとても素敵で可愛らしい。
昔からずっとこの調子だ。私はほとんど祝ってもらうことはない。
まぁ、しょうがない。私はおまけだ。この誕生日会はソフィアがメインなのだ。私の両親はそうはおもっていないだろうが、周りがそういう雰囲気を醸し出している。
自業自得だな。散々ソフィアを虐めてきた代償だろう。
「ソフィア、おめでとう」
「ウィクリフからは何度も聞いたよ」
呆れた口調だが、表情は頬を少し赤くして照れていた。
さっきのキスを思い出したのかな?
というか、私的には十七歳の誕生日を迎えられたことは凄い嬉しいことなんだよね。もう宴会でもしてほしいレベルだよ。……まぁ、貴族のお誕生日会だからそれなりにでかいはずだけど。
どうして宴会にしてほしいかと言うと、前世では私は十七歳の誕生日を迎えられず死んでいるのだ。
正直、今は休憩したいが。予定が詰まりすぎていて休む暇もない。
「ねぇ、皆、リルも誕生日だよ?」
気を遣ってくれなくていいよ。なんだか虚しくなるから。
ソフィアは馬車の中で私に沢山「お誕生日おめでとう」と言ってくれた。その度に私も答えた。あのぶりっ子テンションで。
「誕生日おめでとう」
「リルも誕生日おめでとう」
「おめでとう~」
「十七歳か、楽しめよ」
上っ面。虫唾が走る。
ちゃんと心から言われた言葉じゃないと人を不快にさせるからやめた方がいい、と言いたいところだが、今の私のキャラじゃないので言わないでおこう。
「有難うおおおおぅぅぅぅ!! 皆に祝われるなんて、私、幸せ者だねッ! 本当に嬉しいよぉぉぉ」
私は目をキラキラと輝かせながら、首元で手を小刻みに揺らしながら喜んだ。ぶりっ子テンションマックスの私の威力は見事に効いた。
全員が少し顔を引きつっている。……ニース以外は。
あんたも協力しろ。私の演技の信憑性がなくなる。ニースも顔を引きつってくれ。
私はニースにそう懇願した。勿論効果はなかった。
「そういえば、皆火事がどうして起こったのか分かる?」
急にソフィアが話題転換した。
私を思ってなのか、単に突然思いついた疑問を発しただけなのか、どっちなのかは分からないが私は助かった。これ以上誕生日の話を続けられていたら私は色々な意味で死んでいただろう。
「確かに、どうして火事なんか急に起こったんだ?」
グラントは眉をひそめながらそう言った。彼の赤い髪が太陽に反射してますます赤さを増している。
「それに火事になった時、僕達外にいたし」
「火事は家の蝋燭が倒れて起こった。皆を助けたのはレイチェルの父親だ。俺達も彼に助けてもらったんだ。その後、彼はレイチェル達の元へ走っていった」
リマの言葉にニースがすかさず答えた。
なんという素早い対応力。流石ニースだ。色々追及したら「あれ?」と言われてしまいそうなところが出てきそうだが。
「レイチェルが虐められていたっていうのは?」
ソフィア、そこは突っ込まないでくれ。
「今日はソフィアとリルの誕生日なんだ。もうこの話はやめにしよう」
「そうだな。もっと楽しい話をしよう」
ウィクリフはニースの意見に便乗した。
彼らは結構絆が深いし、良いコンビだと思う。お互いを信頼し合っている関係はとても素敵だ。
「皆、戻ってきたか。待っていたぞ」
父の低く趣のある声が聞こえた。
わりと歳だが、美形だ。ある一定の層には人気のありそうなおじさん、という感じだ。大人の良き雰囲気を醸し出している。まぁ、でも悪役令嬢とヒロインの父親が美形なのは当たり前か。父と私は比較的よく似ている。
父の金髪とつり目の紫色の瞳はほとんど私の顔と一緒だ。唯一違う所と言えば、私のもう片方の目が赤色ということぐらいだ。この左目だけ母親に似たのだ。
「ただいま、お父様」
「おかえり、ソフィア。おかえり、リル」
父は私達に微笑んだ。
……そう言えば、前世の記憶が戻ってから父と話すのは初めてかもしれない。




