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 やっばい! どうしよう! 私の今の語彙力もやばい! けど、そんなことよりソフィアの言葉理解できなかった。全然科学的じゃない。目を見れば分かるの?

「えっと……」

 私、この件降りてもいい? ちょっと私の力じゃどうにもならない。ソフィアのその煌めく言葉でその子を救ってもらおう。

「それがルールなんだ。レイチェルを殺さないといけない」

 バイロンの眼鏡がキラリと光った。殺すって、私達が殺すのだろうか?

「ねぇ、とりあえずさ、おなか減ったからご飯にしない?」

「そうだな、そうしよう!」

 リマの提案に即グラントが答えた。ウィクリフも大きく頷いている。

 ……逃げたな。

「どこでご飯食べるんだ?」

「それは……、レイチェルの家?」

「彼女の両親になんて言うんだ?」

「うっ、そこまでは考えていなかった」

「まさか本当に魔女だったとはな」

「おいニース、言葉に気をつけろよ」

 ニースとグラントのやり取りを聞き流しながら私はぼんやりと自分のことを考えていた。

 私も魔女だとバレたら処刑されるしか道がないということになる。今回の件で法律を変えるという方法もなくはないが、時間がかかりすぎてしまう。

「レイチェル、私達レイチェルの家に行ってもいいかな?」

 ソフィアは穏やかな口調でレイチェルに尋ねた。レイチェルは少し困った表情を浮かべた。家に帰りたくなさそうに見えた。……そういえば、レイチェルは誰に暴力を振るわれていたのだろう。

「……いいよ」

 レイチェルは暫く間をおいてからそう答えた。あまり気乗りではない。

「こっち」

 私達はそのままレイチェルについて行った。


 かなり辺鄙な所に家があるみたいだ。結構遠目のところに小さな小屋が見えた。

 どうしてわざわざあんなところに位置しているのだろう。人気のない森奥の……、ちょっと待って、人がいないのに誰に虐められているの?

 そんな疑問がふと頭の中に浮かんだ。 

「おい、何を考えているんだ」

 突然ニースの声が耳元で聞こえた。気付けばニースは私の隣を歩いていた。

 皆と出来るだけ会話しないようにちょっと離れて後ろの方を歩いていたのに……。というか、ニースは私のことを嫌いなはずだ。なのにどうして私に話しかけるんだろう。

「リル?」

「え? え、ああ、今から食べるご飯は何なのかなぁって思っていたんだぁ~」

 語尾を伸ばしながら、気の抜けた口調で答えた。

 危ない、危ない。気を抜いた瞬間、素の私が出てくる。こんなところで私の計画を失敗するわけにはいかない。ニースは勘が鋭いからすぐばれてしまう。

「本性出せよ」

 わーお、バレてた★

 まぁ、ばれてるかなってあのマラソン大会以降思ってはいた。というか、最初からいきなり私のキャラが変わったんだし、ばれない方がおかしかった。この計画が最初から無謀だということは気付いていたが、やり通せばなんとかなると思っていたが甘かった。とりあえず、やり通してみよう。

「えっと、何のことぉ? リル分かんないっ」

「まだとぼけるのか」

「本当に分かんないんだもんっ。一体何を言っているのよぅ!」

 あ、なんだかオネエみたいな話し方になってしまった。

「もういい」

 ニースが折れてくれた。良かった。諦めてもらえるのが一番良い。これ以上、ニースを騙し続けるのにも限界がある。というか、もうばれているのだが。

「安心した顔するな」

 ニースは私の頬を片手で挟んだ。

 げっ、今私の顔はタコみたいになっているだろう。最悪だ、こんな不細工な顔させられるなんて。

 こんな不細工な顔しているのに、どうしてニースは私の事をじっと見つめているんだろう。彼の瞳に吸い込まれそうだ。どうせならもうちょっとましな顔の時に吸い込まれたい。もしかしてタコみたいな顔の女の子がタイプとか? いや、でもニースは確かソフィアが好きだったはず。

「可愛いな」

 へ? 今なんて言ったの? しかも真顔で。そういう台詞はもうちょっとふざけた調子で言ってくれないと。

「ニース?」

「あ、いや、リル見てるとソフィアのこと思い出して」 

 ああ、そういうことか。けど、私達は双子だけど二卵性双生児だから顔はそんなに似ていないんだけどね。私の目はたれ目のソフィアとは全く違うつり目だし。共通点と言えば瞳の色ぐらいだ。それだけでソフィアを思うなんてニースは完全にソフィアに溺れている。

「俺と二人だけの時は本当のリルで話してくれないか?」

「だからぁ、ニースの言っていることさっきから意味わかんないよぉ」

「どうしてレイチェルを殺すことに反対しなかったんだ?」

「え?」

 突然の質問に驚いた。まさかこんな質問をされると想像もしていなかった。

 レイチェルを殺すのは勿論反対だ。けど……。

「それがルールだから」

 私は高く甘い声を作らず、地声で答えた。

 バレているのだ。これ以上下手な演技を続けるのは逆に私が恥ずかしい。ニースは私のことを人に言う気もなさそうだし。……多分だけど。

 ニースは口の端を上げニヤリと笑った。私の本性を見れたのがそんなに嬉しいのか? ……それはないか。私はなんだかニースに負けた気分で悔しい。

「ルールだったら、小さな女の子を殺すのか?」

「私達貴族がルールを守らなくて誰が守るの? 何のためにルールがあるの? ルールはルール、……貴族が簡単に秩序を乱すような行動をとってはいけないでしょ」

 私の言葉にニースは固まり、目を見開いたまま私を見つめた。

 ……私、どこまでニースに馬鹿にされていたんだろう。

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