双界のレラシオン~暁のサクリファイス・ゲート~【短編】
自分が生まれた世界に疑問を抱くことは無かった。それは家系についても同様で、当たり前のことだとばかり思っていたのだ。あんなことにならなければ、自分という存在はあの世界のことも知りたいと思うことは無かっただろう。
「よし、これで問題ない。手を離していい」
「ありがとう、シャイン。いつも来てくれて助かるわ。あなたのその魔力は私たちの救いになるものなの。だから、自信を持って、堂々と胸を張っていいの」
「救い、か。術士にもなれないのにか?」
「なれなくてもあなたは特別ですもの。きっとこれから先も、必要とされることになる……偉大なマギカとして――」
俺が暮らす国は、星幽国家ラグンスト。国民のほとんどが幻魔術を使える者ばかりだ。家系が全てを左右する。当然だが、自分がどの家に生まれるかは選べない。だからこそ、16のこの時になるまででもずっと家系を憎んできた。
持って生まれた魔力と多様多彩な魔術をどれ程の威力で繰り出せるか。それによって、クラスごとに分けられ大人になるまでの道は勝手に決められる。家にもよるが、ガキの頃から風で草木を揺らすことが出来るのは当たり前だった。成長するにつれて、属性ごとの魔法と繰り出す種類が変わっていくのだが……俺はそうじゃなかった。
一貫した教育クラス。分けられた連中がこぞって俺を妬みの対象にする。「アレは特別だからクラス関係ないんだとよ」と。そういう目で見られながら過ごしてきた。だから友達と呼べる奴は誰もいなかった。それでも、俺の特別な力は誰もが必要とする。それだけに、馴れ馴れしくいつも話しかけて来る奴がいたりしたのも事実だ。
「はい、握手!」
「違う。ただ手を介しているだけに過ぎない」
「そうじゃないでしょ。あなたの手と、私の手が繋がれたから。これは握手でしょ? シャインのその力は人を繋ぐ力だよ。素敵な力なんだから、ふてくされていないでたまには笑顔を見せて欲しいな」
「どうして笑えるのか、教えて欲しいものだな。なぁ、マリサ」
「素直に生きればいいんだよ! シャインはどうしてそんなにもひねくれまくったのかな。教えて欲しいよ」
「……風でも使えれば笑えたけどな。でも使えない。それだけだ」
「私は認めてるからね。それだけは覚えておきなさい!」
「さぁね」
人の為の力、誰もが使える力を一切使えない存在。そんな奴が存在して何になるっていうんだ。教えてくれる奴がいたら教えて欲しいものだ。俺の無意味なマギカについてを。