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回路魔法  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第9章 ダンジョン調査編

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第93話 子供たち

なろうに誤字報告機能というのが実装されたみたいです。

入力ミスやGoogleIME先生の変換ミスがあると思うので、お手すきの際に報告いただけると助かります。

「なんか凄いことになってるね」


「ご主人様の周りでいっぱい寝てます」



 お昼ご飯の片付けを終わらせた施設長たちが帰ってきたが、俺の周囲の状況を見て驚いているようだ。



「……みんな、あるじ様にブラッシングしてもらった」


「なるほど、ダイ先輩のブラッシングを体験したのなら仕方ないですね」


「終わった後になでなでもしてもらっていたのです」


「旦那様になでなでをしてもらえれば、こうなるのもわかります」



 カヤが毛布を持ってきてくれたので、子供たちにかけてあげる。みんなは俺のなでなでやブラッシングには特別な力があると思ってるみたいだし、最近は自分でもよくわからなくなってきている。でも、周りの子供達はみんな気持ちよさそうに寝てるし、何が理由かはどうでもいいだろう。



「人見知りの子もいるのに、こんなに懐いてしまって、本当に凄いね」


「ダイには種族を問わず人を惹きつける何かがあるわね」



 そう言えば以前、俺から何か出てるとか言われたけど、今日は男の子の獣人にも懐かれたし、女性限定でないことが証明されただろう。エリナが俺にいだいている、女たらし設定が無くなる事にも期待しよう。



「この施設の子供たちは人族も獣人族もみんな仲が良いですね」


「あぁ、私は耳やしっぽの噂なんて信じてないし、みんな可愛い子供だからね」



 最初に顔合わせした時から気になっていたが、子供たちが無邪気にアイナやエリナのしっぽを触ったり触れ合ったりしているのは、そういう事だったのか。この施設長のように、獣人に偏見を持たない人に育てられた子供がここから巣立っていって、その輪が少しづつでも広がっていくと嬉しい。



「そこの2人を見るとわかるけど、あんたも獣人を大切にしてくれてるみたいで私も嬉しいよ」


「ご主人様は出会った時からずっと、私のことを大事にしてくれてます」


「……あるじ様と出会えたのが私の幸せ」



 アイナとエリナの言葉を聞いて施設長も笑顔を浮かべている。それから施設長と色々と話しをしたが、やはり俺たちを最初に見た時は驚いたそうだ。冒険者ギルドから、あらかじめどんな人が来るかの連絡は受けていたが、様々な種族が所属しているパーティーが本当にいるのか半信半疑だったらしい。


 しかし、こうして子供たちに良くしてくれるし、新しい料理も教えてもらって、とても感謝してくれた。俺としても、子供たちと一緒になって楽しそうに遊ぶオーフェやキリエの姿が見られたので、ここに来て良かったと思っている。



◇◆◇



 少しお昼寝をした後に子供たちが起き出してくると、それぞれ分かれて遊び始める。俺は絵の描いたカードの中から1枚ランダムに抜き取って、残りを配ってお互いに引きながら同じ柄のカードを捨てていく、ババ抜き(ジジ抜き)の遊び方を教えてあげる。


 この世界には無い遊び方のようで、2セットあったカードを使って、2つのグループになって夢中でカードを引き合っている。最後までどの絵柄が抜かれているか判らないので、運勝負になって年齢のハンデなしに遊べるのがいい。



「お兄ちゃん、おひざの上に乗せて」


「いいよ、おいで」


「これ読んで欲しい」


「わかった、こっちにおいで」


「頭なでてほしい」


「じゃぁ、そこに座ってくれるか?」



 俺はお昼寝スペースから離れられずに居た。獣人の子供は俺の膝の上に座ったり、背中にべったり張り付いているし、人族の子供も撫でて欲しいと近くにやって来る。順番に膝の上に乗せたり、本を読んだり撫でたりしながら時間が過ぎていく。


 満足して離れていった子は、イーシャやエリナのところに行ったり、カードゲームに参加したり、外に遊びに行ったりしているが、犬人族の男の子と兎人(とじん)族の女の子はずっとそばに居る。


 麻衣が夕食の仕込みと作り方を教えに行っているが、それが終わったら俺たちも帰らないといけない。このままだと離してくれない気もするが、どうしたものだろう。



「ダイ兄さん、すごい人気だね」


「おとーさん、帰りはだっこして」


「了解だ、キリエ」


「ボクも手を繋いでね」


「あぁ、もちろん構わないよ」



 キリエとオーフェは他の子に遠慮して、あまり俺にくっつかないようにしているようなので、帰りは思う存分甘えさせてあげよう。



◇◆◇



「今日は本当にありがとうね、それに野菜とか豆とかもらってしまって」


「俺たちもお昼を食べさせてもらってるので、その分だけでも受け取って下さい」



 ウミとシロを除けば、16人の子供たちの半数に当たる8人が増えたことになるので、その分の野菜や豆や芋に果物はこちらの方で補充させてもらっている。



「お兄ちゃん、もう帰っちゃうの?」


「ごめんな、そろそろ帰らないといけないんだ」



 兎人族の女の子が俺の方を見上げてそう言ってくるので、キリエを抱き上げている反対の手で頭を撫でてあげる。その目は潤んでいて、今にも涙がこぼれそうになっている。



「帰っちゃいや」



 犬人族の男の子は俺の足にすがりついてきた、その子の頭も撫でてあげるが、まさか半日でこんなに懐かれるとは思わなかった。この2人だけでなく、他のメンバーと一緒に遊んでいた子供たちも、名残惜しそうな目でこちらの方を見ている。


 みんなの方を見ると、俺の言いたいことがわかっているのか、全員が頷いてくれる。



「あの、ギルドの依頼だと1日だけでも良いとなっていましたが、お手伝いの人が復帰できるまで受けさせてもらう事って出来ませんか?」


「私としたらそっちの方がありがたいけど、いいのかい? あんた達ならもっといい依頼があるだろうに」


「この依頼は俺たちに向いてますし、何よりこの子たちと居るのが楽しいので、是非やらせてください」


「じゃあ、しばらくお願いするよ」



 施設長のおばあさんがそう言うと、周りの子供達の顔も一斉に明るくなった。



「お兄ちゃん、明日も来てくれるの?」


「あぁ、かならず来るよ」


「また、ぶらっしんぐもして欲しい」


「お昼寝の前にやろうな」



 兎人族の女の子と犬人族の男の子にそう言って頭を撫でてあげる。その後は全員が近くに来て、頭を撫でたり他のメンバーと明日の約束をしたり、しばらく留まって話をする。



「キリエちゃん、また明日遊ぼうね」


「また明日ねー」


「白いお姉ちゃん、またご本読んでね」


「……わかった」


「明日はぜったいアイナちゃんに追いつくからな」


「私も負けませんよー」


「次こそ捕まえるぞ」


「ウミだって簡単に捕まらないのです」


「またお裁縫教えて」


「もちろん構わないわよ、頑張りましょうね」


「ごはん美味しかった!」


「明日も美味しいのを作りますね」


「カヤちゃんもまたお話聞かせてね」


「はい、喜んで」


「白いわんちゃんもまたね」


「わうっ!」


「オーフェちゃん、また絵札で遊ぼうね」


「今日ダイ兄さんに教えてもらった遊びが面白かったからまたやろうね」



 門の所まで見送りに来てくれた施設長と子供たちに手を振りながら帰路についた。



「おとーさん、今日はすごく楽しかった」


「キリエもいっぱいお友達が出来てよかったな」


「うんっ!」


「ボクもみんなにすごく仲良くしてもらって嬉しかったよ」


「オーフェもみんなとすぐ打ち解けてたからな」


「こんなに一度に友だちが出来たのは初めてだよ」



 2人も嬉しそうにしているし、他のメンバーも楽しそうにしていて、この依頼を受けて良かったと改めて思う。明日からしばらく通うことになるが、いい経験と思い出ができるように、俺も力になってあげよう。




―――――・―――――・―――――




「よし、この辺りに広げようか」



 子供たちと協力して大きな布を何枚も地面の上に並べていき、風で飛ばされないように四隅を固定する。


 今日は以前、麻衣に教えてもらった王都にある公園の広場に来ている。さすが穴場と言われるだけあって、今日も俺たちの貸し切りだ。施設長に公園に行きたいと相談したら、よく行ってる場所なので問題ないと許可してくれたので、お弁当を作ってピクニックにすることにした。


 麻衣とカヤと施設長はお弁当を作るために遅れてくるが、今日も工夫をこらしたものを作ってくれると思うので楽しみだ。



「よし、捕まえたぞ!」


「わーん、つかまっちゃった」


「俺たちであそこの子を捕まえようか、俺が前の方から行くから後ろからこっそり近づいてもらえるか?」


「わかった、がんばる!」



 広場で鬼が増えるタイプの鬼ごっこをしている、小さい子はすぐ捕まってしまうが、今度は捕まえる側になるので、みんなで協力して追い詰めていくのが楽しく、もう何度目かのゲームになっている。



「この先は行き止まりだぞ」


「あっ、やばい、鬼が来た!」


「つかまえた!」


「くそー、後ろからも来てたのか」



 死角から男の子の前に飛び出して進行方向をふさぐと、慌てて逆方向に逃げようとするが、そこにはさっき俺が捕まえた女の子が待ち構えており、その子にタッチされて終わる。


 鬼の数がだいぶ増えてきたが、俊敏なエリナは毎回最後の方まで残っている。鬼になった子供たちを集めて、エリナを捕まえる作戦会議を始める。



「みんなで周りを取り囲んで、その後あっちの方に誘いこもう、そこに――」



 作戦も決まり、予定通りエリナの周りを鬼で取り囲む。辺りを見回して囲まれていることに気づいているが、まだまだ余裕の表情だ。



「エリナ、覚悟しろよ」


「……私はまだ捕まるわけにはいかない」



 何かの使命に燃える逃亡者のようなセリフを言うエリナが、包囲網の隙間から逃げようと走る。だがそこはわざと開けてるんだ、なぜなら……



「わんっ!」


「……!!」


「つかまえたぞー」



 死角から飛び出したシロに吠えられて、一瞬動きを止めたエリナに男の子がタッチをする。シロに協力してもらって、エリナの動きを一瞬でも阻害する作戦は成功のようだ。みんなが集まって、作戦がうまくいったことを喜び合う。



「……シロが居るのは気づかなかった、残念」


「わうっ」



 そうして遊んでいるとお昼にしようという声が聞こえてきたので、みんな揃ってシートの方に移動する。全員の手を濡らしたタオルで拭いて綺麗にして、お弁当のフタを開けると野菜とハンバーグのようなものを挟んだパンが並んでいる。子供たちは待ちきれないように食べ始めたが、ひとくち食べると驚いた顔をしている。



「これ、お肉じゃないのにお肉の味がする」


「柔らかくておいしい!」


「この丸い塊ってなに?」


「これは茹でた豆を潰して固めたものを、お肉の(あぶら)で焼いてるんですよ」



 いわゆる大豆ハンバーグみたいなものか。肉の脂で焼いているから、旨味もすごく感じられておいしい。それに最後に濃い目のタレを絡めているから、淡白なハンバーグが本当にお肉のような味わいになっている。



「こんな美味しい豆は食べたこと無いよ、お姉ちゃんやっぱり凄いな!」


「私、豆が好きになった」



 きょうの料理も好評で、みんな次々とパンに手を伸ばす。食後のデザートを食べた後はブラッシングタイムに突入したが、今日も終わった子から俺の近くで寝てしまうので、昨日と同じ様に塊ができてしまった。


 麻衣が施設から持ってきた毛布を精霊のカバンから取り出して全員にかけていく。まだ夏の季節なので少し暑い日もあるが、この場所は爽やかな風が吹いていて過ごしやすい。






 みんなが起きだしてから、その日は施設に帰ることにした。全員を送り届けて、夕食の仕込みをする間だけ遊び、明日の約束をして拠点に戻った。


エリナも身体強化や隠密スキルを使わなかったり、シロが居るのが判ってその方向に逃げたり、かなり手加減してくれています(笑)

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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

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いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
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【完結作】
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