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回路魔法  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第8章 エルフの里編
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第88話 海水浴ふたたび

今年もやります、水着回(笑)

 数日経ち、キリエも生まれた時より、ふた回りほど大きくなった。家の中だけではストレスも溜まるだろうと、みんなで海に行くことにした。


 先日、ロイさんの家に行き、別荘を一晩貸して欲しいとお願いしている。あいにくロイさんは仕事中で不在だったが、リンダさんが応対してくれて何日泊まってもいいわよと、例の空間を発生させながら言うので、思わず了承しそうになった。


 別荘を貸してもらうお礼にと、麻衣のお菓子とエルフの里で採れた野菜と果物を持っていったが、料理人のひとが飛び上がりそうに喜んでいた。なんでも料理の修行時代に、師匠がエルフ野菜で食事を作ってくれたらしいが、その味が今でも忘れられず、いつか自分も作ってみたいとずっと夢見ていたそうだ。リンダさんもそんな料理人を見てとても喜んでいたので、また機会があれば持ってこようと思った。



◇◆◇



 アーキンドに転移して不動産屋で鍵をもらい、ロイさんの別荘へ到着した。俺はひと足先に着替えて、テラスで待機中だ。シロが足元に寝そべって、キリエは机の上に座っている。3人で庭をボーッと眺めていると、家の中から女性陣が続々と登場する。


 アイナは去年と同じ赤の水着だが、今年はビキニタイプにしたようだ。麻衣が追いつかれたと言っていた部分は、確かに去年より女性らしさが増した気がする。


 イーシャは去年と同じワンピースタイプだが、今年は濃い目の緑を選んだようだ。きれいな金髪とのコントラストは相変わらず素晴らしい。


 麻衣もビキニタイプだが、去年と違い青に近い色にしたようだ。今年は腰にパレオを巻いていて、まとめた髪の毛の雰囲気とも相まって、いつもより大人の女性に見える。


 ウミは今年もイーシャの手作りの水着だが、今度は明るめ青色にしていてよりビキニタイプに近い形になっている。精霊は上位の存在にならないと外見は全く変わらないそうだが、色と形が違う水着になるだけでもその印象は違って見える。


 エリナは今年も白のビキニタイプだが、去年より戦闘力が増している部分が相変わらず圧倒的だ。白くて可憐な姿は変わらないが、内に秘めた迫力はさらに増大している。


 オーフェは黒のチューブトップタイプの水着を着ている。ひらひらとした布があしらわれていて、子供らしい可愛さを引き出している。赤くて長い髪もリボンで結んでまとめているので、いつもと印象が違って見えて新鮮だ。


 カヤは少し赤みがかった黄色のワンピースタイプを選んだみたいだ。妖精なので背の高さこそ小さいが、キリエに対して見せた母性溢れる姿を表しているように、可愛くて綺麗という絶妙のバランスをしている。



「アイナは去年と違う形にしたんだな、それも似合っていて可愛いよ。イーシャも濃い緑色にきれいな髪が映えて美しいし、やっぱり全体の印象が綺麗だ。麻衣は去年より大人っぽくなっていて驚いたよ。ウミも水着の形が変わるだけでずいぶん印象が変わるんだな、今年のもよく似合ってる。エリナは相変わらず白い妖精みたいで、去年より更に魅力的になったと思うよ。オーフェは黒の水着のお陰で、綺麗な赤い髪の毛が一層美しく見えるな、それにひらひらとした水着が可愛さを引き立ててる。カヤも普段は可愛いという印象が強かったけど、こうして見ると凄く綺麗で魅力的だよ、もちろん水着もよく似合ってる」



 よし、今年も一気に感想を言えた。少し頬を赤くしているメンバーも居て、ちゃんと喜んでくれたことに安堵する。



◇◆◇



 キリエを胸に抱いて砂浜をみんなで移動する、こうして抱いていれば変わった形のペットに見えるかもしれない。飛行スキルで重さを調整してくれているのか、羽のように軽くて負担にならないのが助かる。キリエも手足を広げて、ベッタリとしがみついているが、その姿はかなり可愛い。


 他にも泳いだり浜辺で過ごしている人が居るが、少し離れた砂浜の端っこの方に移動して、ここで遊ぶことにする。



「……アイナ、今年も勝負」


「ふふふ、負けませんよー」



 去年に引き続いてこの2人は泳ぎの勝負をするみたいだ。走るスピードはエリナのほうが速いけど、泳ぎなら2人共いい勝負するからな。



「今年はボクも参加するよ」


「オーフェは泳げるのか?」


「ボク、泳ぐのは得意なんだ」



 空間収納に水着を入れていたくらいだから、泳ぎは得意なのか。身体強化やマナコートが使える3人の勝負はちょっと楽しみだ。



「ちゃんと準備運動して、ゆっくり体を慣らしながら海に入れよ、それとあまり遠くに行って迷子にならないようにな」


「わかりました」「……わかった」「はーい」



 体や足を曲げ伸ばししながら、徐々に水の深い所に向かっている。オーフェの腰くらいの水深になった所で、合図とともに一斉に泳ぎだした。



「オーフェは身長の割にむちゃくちゃ速いな」


「あれはマナコートの効果なのかしら」


「あまり水の抵抗を感じていないように泳いでますね」



 マナコートは汚れを防ぐ効果もあるので、水も弾くのかもしれない。それをうまく制御しているのか、推進力を殺さないまま水の抵抗を減らしてる感じに見える。そのせいだろうか、他の2人に比べて水しぶきがあまり上がっておらず、船のようにスイスイ前に進んでいる。



「キリエちゃんはウミと一緒に水の上に浮かんで遊ぶです」


「きゅいーっ!」



 俺の頭の上と胸元から2人が飛び出していって、海に着水して波に合わせて上下に揺られながら器用に浮かんでいる。去年も見たがあれは本当に気持ちよさそうだ、海水浴場では使えないが(いかだ)みたいなものに乗って浮かんだらあんな感じだろう。この世界にゴムボートがあれば俺も体験できるんだが。



「キリエ様は、生まれた時から飛ぶのが上手ですね」


「きっと俺たちが手や足を動かすような感覚で空が飛べるんだろうな」



 生まれてすぐ一緒にお風呂に入った時も器用に水中から顔だけ出していたし、恐らく意識しなくても飛んだり浮かんだり出来るんだろう。



「カヤはどうする、少し泳いでみるか?」


「泳いだことはないので出来るかどうかわかりませんが、やってみたいです」


「俺が手を持って支えるし大丈夫だよ」


「では、よろしくお願いします旦那様」


「私も今年は少し泳いでみるわ、お昼からでいいから付き合ってね」


「ダイ先輩、私もお昼から泳ぎたいので付き合って下さい」


「わかったよ。シロも泳ぎに行こう」


「わぅっ!」



 カヤの手を引きながら波打ち際まで行って少し体操をする、横を歩いてきたシロもゆっくりと水の中に入っていく。お風呂と勝手が違うので最初は慎重に進んでいるが、ある程度の深さの所に来たら一気に飛び出して泳ぎ始める。



「シロ様も泳ぐのが得意ですね」


「あれは犬かきって泳ぎ方だけど、上手に泳げてるな」



 手足を水中でバタバタ動かしているだけに見えるが、ちゃんと前に進んでいる。ちょうどそれを見ていたのか、泳ぎの競争をしていたアイナたちも戻ってきた。



「シロも泳ぐの上手です」


「……なかなか速い」


「シロもあっちでボクたちと競争しよう!」


「わうんっ!」



 4人で少し離れたところに行って、いっせいに犬かきで泳ぎ始めた。シロもかなり健闘してるが、バタ足の出来る泳ぎには敵わないみたいだ。4人とも水中から顔だけだして、手足をバタバタ動かして泳いでる姿はなんか可愛い。



「皆さん楽しそうです」


「カヤも泳いでみようか。俺が手を持ってるから、顔を水の上に出して足だけ動かしてみてくれ」



 カヤの小さな手を握って、後ろ向きに歩きながら引っ張ると、足をバタバタさせて少しずつ進んでくるので、合わせるように俺も移動する。



「初めて泳いでみた感想はどうだ?」


「水の上に浮かんで進むのは、とても不思議な気分です。少しドキドキしますけど、旦那様が手を握ってくれていますから、安心できます」


「せっかくだから、ウミやキリエの所まで泳いでみよう」


「はい」



 こちらを見ながらニッコリと笑ってくれたので、そのまま手を引いて2人が浮かんでいる方に進んでいく。カヤも楽しそうな顔で足を動かしてるので、海水浴を満喫してくれているみたいだ。



「カヤちゃん、ちゃんと泳げてるのです」


「きゅきゅー」


「旦那様に手伝ってもらって泳ぐことが出来ました」


「バタ足も上手だし、練習すれば自分で泳げるようになると思うよ」



 泳ぐのをやめて横に立っているカヤは、俺の腕につかまって嬉しそうな笑顔を浮かべている。しばらくお喋りしたり泳いだりしていると、麻衣がお昼にしようと呼んでくれたので、アイナたちも連れて海岸に戻った。


 仲間たちの身長差が大きくなってきたので、今年は立食をやめて大きな布のシートの上にローテーブルを置き、周りに座って食事をする。今年もミニバーベキュー風の串焼きを作ってくれている、去年も美味しかったので楽しみだ。



「それじゃぁ、オーフェとキリエの誕生日に乾杯!」


「「「「「「「乾杯[なのです]!」」」」」」」「わんっ!」「きゅーっ!」



 今年も冷えた果実水で乾杯する。テーブルの上には色々な種類のミニバーベキューが並べられて、とてもいい匂いが漂ってきている。新しい味付けにも挑戦したんだろう、去年より品数も増えているようだ。



「今年は焼き料理専用の調理器具で作ったので、去年より美味しいと思いますよ」


「私が焼いたのもありますから、食べてくださいねご主人様」


「私も焼いてみましたので食べて下さい、旦那様」


「……私も頑張って串に刺した、あるじ様食べて」


「ボクが手伝ったのもあるから、食べてねダイ兄さん」



 みんなが俺の皿にそれぞれ乗せてくれたので、一本一本食べていくが確かに去年より美味しい。タレも進化しているのだろうけど、焼き加減がどれも絶妙だ。焦げすぎず、パサパサにもならず、焼きすぎて固くもなっていない。



「どれもちょうど良く焼けていてうまいな、去年より断然美味しくなってるよ」


「ほんとね、新しい味のソースも美味しいし、どれも上手に焼けているわ」


「今年もはちみつ入りの味付けがあるのが嬉しいのです」



 ウミも今日はミニバーベキューを頬張って幸せそうな顔をしている。甘いソースのバーベキューも美味しいから、俺もお皿に確保しておいた。シロも麻衣の作った、魚や鳥の骨でとった出汁をかけてもらった食事を美味しそうに食べている。泳いでお腹が空いたからだろう、いつもより食べるペースが速い。



「キリエちゃんには果物がありますからね」


「きゅきゅー」



 バーベキューは食べられない様子のキリエだったが、麻衣から果物の乗ったお皿を出されて喜んで飛びついていた。こちらも外で食べる食事が美味しいのか、切り分けられた果物が次々減っていく。


 こうしてみんな揃って外で食事ができるだけでも、海水浴に来たかいがある。



◇◆◇



「ダイ、絶対に手を離さないでね」


「大丈夫だよ、安心して任せて足を動かすことだけ集中してくれていいよ」



 イーシャは泳いだ経験がなかったみたいで、俺の手を握りしめて離さない。エルフの里の水は泳ぐには冷たすぎて、今まで機会がなかったんだろうな。


 不安そうにこちらを見るイーシャの手を引いて、ゆっくり後ろに移動していくと、足をばたつかせて前に進み始める。



「ちゃんと泳げてるよ、イーシャ」


「お風呂でも(ふち)に体を預けて力を抜くと、浮くような感じはあったけれど、こうして浮かびながら移動するのは新鮮で面白いわね」


「一人で泳げるようになると、さらに面白くなるぞ」


「こうやって手を引いてもらうのも楽しいし、それは少しづつ練習するわ」



 そう言って足をばたつかせながら笑うイーシャは、いつもより少し幼い印象に見えて新鮮だった。しばらくそのままイーシャと泳ぎの練習をしていたが、麻衣も泳ぎたいと言っていたので交代する。



「麻衣は海水浴とか行かなかったのか?」


「行くことはありましたけど、フロートに掴まってのんびりすることが多かったので、ほとんど泳いだことはないんですよ」



 麻衣の手を引きながら後ろに歩いているが、流石に地球出身だけあって俺の手を掴んで上手に泳いでいる。



「この世界には浮き輪も無いし、何かに捕まって水に浮くのは難しいな」


「私もウミちゃんやキリエちゃんみたいに浮かんでみたいです」


「あれは凄く気持ち良さそうで、俺もやってみたいよ」



 2人でそう言って笑い合う。そのウミ達は、去年俺が教えた砂の城づくりに夢中だ。午前中泳いでいた4人も加わって、シロやキリエは砂に埋められたりしている。ウミの洗浄魔法できれいになるので、ベッドに砂が落ちるような心配はあまりないけど、今夜は念入りに洗ってやろう。



◇◆◇



 その後も順番に泳ぎの練習をしたり、砂の城づくりに参加したり、全員で思う存分遊んで別荘に戻った。みんな疲れているので、軽く食事をとった後にお風呂に入る。去年と同じようにベッドを2つ連結して、ブラッシングを順番に終わらせていくと、泳ぎ疲れた年少組がどんどん眠りについていったので、みんなも早めに横になり起きているメンバーだけで話をする。



「今年の海水浴も楽しかったな」


「キリエちゃんと2人で海に浮かんで、去年よりもっと楽しかったのです」


「私も泳ぐという体験ができてとても嬉しいです、それにこんなに楽しい事だとは思いませんでした」


「海水浴を楽しんだ家の妖精なんて、たぶんカヤちゃんが初めてよ」



 隣に寝ているカヤもイーシャの言葉を聞いて幸せそうに微笑んでいるので、一緒に来ることが出来て本当に良かったと思う。



「去年は言い出せませんでしたけど、今年はダイ先輩に手伝ってもらったので、泳ぐのを楽しめました」


「私も去年は踏み出せずに機会を逃してしまったけれど、今年は泳ぎが経験できてとても楽しかったわ」


「次もみんなで来て、また思う存分泳ごうな」



 その言葉に起きているメンバーが嬉しそうに返事をしてくれる。俺とカヤの間で寝ているキリエも十分楽しんでくれただろう、この思い出も成長のきっかけになると良いと思いながら頭を優し撫でてあげる。


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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

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