第7話 雑貨屋
看板のマークに注意しながら表通りをアイナと一緒に歩く。
「私のせいでかなりお金を使わせちゃったみたいですいません」
アイナは申し訳なさそうに俺の顔を見てあやまる。やっぱり服の裾は掴んだままだ。裾がシワになって少し伸びてしまっているが、新しいのを買うことだし好きにさせよう。
「一緒に居るって決めたんだから問題ないよ。
今から服とか小物を買いに行くけど、アイナも必要なものがあったら遠慮なく言ってほしい」
アイナは小声で「私はダイさんのお古でも」とか言ってるが、さすがに男物を着せる訳にはいかない。ワイシャツくらいならアリかもしれないけど。
雑貨屋はカバンのマークの看板が目印だと聞いてたが、少し先に目的の店があった。
「いらっしゃい」
恰幅のいいおばちゃんが挨拶してくれた。
店の中にはカバンやリュック、調理道具から食器類、家具も売ってるようで様々な商品が所狭しと並んでいて、奥の方に靴や服が並べられている。
とりあえず大きめのリュックと腰につけるポーチのようなカバン、タオルや布の袋なんかを選んで衣類コーナーに足を運ぶ。自分の分の下着を数枚、靴やシャツやズボンは適当に選んで買うものを決めたが、アイナの着る服とか男の俺にはわからない。
アイナに聞いてみたが「こんなお店で買い物したこと無いので……」と言われ、ここはプロである店の人に聞いてみることにした。
「見たところ犬人族みたいだけど、ウチは獣人が着られる服は置いてないね」
すげなく言われてしまったので、さっき選んだ雑貨類と自分の服だけ支払いして、獣人の着ることが出来る服を売ってる店がないか聞いてみた。たくさん購入したせいか、おばちゃんは機嫌よく「裏通りにある婆さんのやってる店に確か置いてあったね」と、道順を丁寧に教えてくれた。
店の一角にある小さな部屋で着替えをさせてもらって、購入したものや今まで着ていた服と靴をリュックに詰めて裏通りのお店に向かう。
◇◆◇
裏通りをしばらく進んでいくと目的の店があった。ちょっとくたびれた感じの外見で、こじんまりとしたお店だ。
「・・・・・」
店に入ったが店員のおばあちゃんは反応しない。
「あのー」
「・・・・・」
「ここで獣人が着ることが出来る服が買えると聞いてきたんですが」
「・・・・・」
「えっと……」
「そっちの娘は犬人族かい?
しっぽの出せる服はあっちの方に置いてるよ」
目を開いたまま寝てたわけじゃなかったようで安心した。
アイナと教えてもらった場所に行ってみたが、人間用の服と違って色や形のバリエーションは少ないみたいだ。これなら店で買物した経験のないアイナでも選べるだろう。
「あの、本当に私の分まで買っていただいていいんでしょうか」
「あぁ、今のままだといろいろ不便だし困るからね、好きなの選んでいいよ」
下着や服を1着づつしか買おうとしないアイナを軽く叱りつつ、寝間着になりそうな緩めの服も選んでもらう。リザードマンに貰った靴があるけど「ぼろぼろになる前に大切に置いておこう」と説得して、靴も選んで支払いに向かう。
「あんた、獣人に妙に優しいね。
変わった子だよ」
と言いながら、店員のおばあちゃんが少し値引きしてくれた。
最初の無反応な接客には戸惑ったけど、いい店だ。
このお店にもあった小部屋で着替えさせてもらって、今まで着ていた服や靴ともどもリュックに詰めてお店を後にする。
動きやすい服でと選んだのでパンツスタイルだけど、貫頭衣の時は隠れていたしっぽが見えるのがとても新鮮だった。相変わらず俺の服の裾を掴んでいるけど、しっぽがゆらゆらと左右に揺れている。もしかすると喜んでいる動きなのかもしれない。
◇◆◇
今日中にアイナの主人登録を済ませてしまおうと、冒険者ギルドを目指して表通りの方に歩いていった。