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回路魔法  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第6章 ヴェルンダー編
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第57話 パーティー名

朝の更新に続いて本日2話目の投稿になります。

最新話の更新表示から飛ばれた方は、小説のトップページもご確認下さい。

「ねぇダイ兄さん」


「なんだ?」



 俺の隣で寝ていたオーフェが話しかけてきた。今日は麻衣・アイナ・俺・オーフェ・エリナ・イーシャの順番で寝ていて、枕にはウミも居る。


 アイナは寝ているとどうしても俺にくっついてくるし、俺の右隣が定位置になってしまっている。麻衣はアイナを挟んで俺の隣でなるのがいいらしく、そちらも定位置になってしまった。エリナとオーフェはローテーションで俺の隣で眠るよう決めたそうで、イーシャも今まで通り時々隣に来ることにしたらしい。



「このパーティーって名前はないのかな?」


「そう言えばパーティー名って考えたことなかったな」



 ギルドの冒険者の間では、名前をつけているパーティーも結構ある。“白銀の翼”とか“龍の咆哮”なんていうカッコイイ系や、“鮮血の誓い”というちょっと怖いものまであった。指名依頼を受けるときなど便利みたいだが、俺たちは有名じゃないし、アイナと最初にパーティーを組んだ時からずっと無名だったので、そのまま現在に至っている。



「人数も増えてきたし、何か考えてもいいかもしれないわね」


「私たちのパーティーはメンバー構成がかなり特殊ですから、それを象徴するような名前がいいですね」



 パーティー登録するとメンバーに魔法的なパスが通って、全体スキルの恩恵を受けられる、俺たちの場合は麻衣の回復力強化と状態異常耐性上昇だ。そのパスも人数が増えると細くなって効果が無くなるので、ギルドでは8人までを推奨していた。オーフェが加入して7人になったので、増えても後ひとり分しか無い。



「何かいい案はないか?」


「ダイ兄さんと愉快な仲間たち」



 オーフェ、それは少し適当すぎる。それにパーティー名に俺の名前を入れるのはやめてくれ、とんだ羞恥プレイだ。



「……至高のなでなで」



 エリナ、それは自分の感想だよな。パーティーを紹介する時に「至高のなでなでのリーダーを務めるダイです」とか言うのは、どう考えても冒険者じゃなくて何かの団体名みたいに聞こえる。



「ダイの髪の毛の色を象徴するように、漆黒の秘密結社とかどうかしら」



 イーシャ、それは真面目に考えているのか、というか顔が少し笑ってるじゃないか。それに秘密結社ってなんだ、しかも漆黒とか人目につかないように暗躍してそうな名前だぞ。



「ダイ先輩とアイナちゃんから始まったパーティーなんですから、ダイナとかでしょうか」



 麻衣、アイナは今も寄り添って寝ているが、名前もくっつければいいってもんじゃないからな。それに、そんな名前のトラックを日本の街なかで良く見かけた気がする。



「すぐ思いつかないし、このままだと決まりそうもないな」



 明日アイナとウミが起きてから2人の案も聞いてみよう。




―――――・―――――・―――――




「と言う訳で、パーティー名を決めようと思うんだけど、2人は何か案はないか?」



 翌朝、アイナとウミが起きてからパーティー名のことを話した。昨夜はみんな変に悪ノリしてまともな案が出なかったし、一晩寝て新たに考えてみる事にする。



「急に言われても何も思いつかないのです」


「ご主人様と2人で始めたパーティーですけど、人数も増えて色鮮やかになりましたね」



 色か、髪の毛の色も黒やこげ茶色、オレンジ色や金色に水色、銀色と赤でみんなバラバラだ。7色といえば虹だな、8色という人もいるし、あと一人増えても問題ない。



「なぁみんな、パーティー名は“虹の架け橋”とかどうだろう?」


「虹って、雨が降ったりすると時々見える綺麗なのですか?」


「そうだよアイナ、以前も雨上がりに一緒に見たあの丸い光の帯が虹だ」


「虹なら7色って言われてますし、今の人数ともぴったりですね、私はそれがいいです」


「あぁ、俺たちの国だと7色が一般的だったし、中には8色という人もいるから、パーティー名としてはちょうどいいと思うんだ。それに色々な種族が仲良く出来る架け橋になりたいって希望も込めてみた」


「それいいよダイ兄さん、ボクもそれに賛成するよ」


「私もご主人様の考えた名前がいいと思います」


「七色の架け橋、とても良いと思うわよ」


「ウミもきれいな名前でいいと思うのです」


「……みんな仲良くできるのは素敵」



 全員賛成のようなので、これでパーティー名を登録することにしよう。



◇◆◇



 ギルドに向かいパーティー名の申請をして、依頼をいくつか受けてダンジョンに行く。この32階層のダンジョンもアーキンドと同じ洞窟タイプのダンジョンだった。壁た天井もぼんやり光っているし、通路は枝分かれしながら伸びている、ここなら麻衣の土の壁も存分に効果を発揮するだろう。


 そしてダンジョン内は地熱の影響だろうか、外より温かい。風も吹いていないし体感温度がだいぶ違うので、防寒具を脱いで精霊のカバンにしまう。



「……ここは暖かい、ここに住みたい」



 確かにダンジョンには魔物の沸かないセーフエリアがいくつもあるが、他の冒険者も入ってくるし落ち着いて休めないと思うぞ。



「エリナちゃん、ダンジョンの中でお料理を作ってると、他の冒険者の人が寄ってきますよ」


「……それは困る、やっぱり今のままがいい」



 麻衣の一言であっさり諦めてしまうエリナだった。ダンジョン内で野営をしながら下層を攻略しているようなパーティーなら、簡単な料理くらい作っていそうだが、精霊のカバンを持ってる麻衣の作る料理は普通とは一線を画してるからな。それにとてもいい匂いがするから、ダンジョン内で作っていたらすごい注目を浴びそうだ。



「ご主人様、前から魔物が1匹来ます」



 雑談しながら歩いていると、アイナが魔物の気配を感じ取った。近づいてみると大きなトカゲの魔物だ、コモドドラゴンみたいな感じだろうか、尻尾が長くて短い手足で地面を歩いてくる。



「あれはボクが倒してくるよ」



 そう言ってオーフェが走っていく、彼女が戦ってるのは崖の上から飛び蹴りをして以来見たことがないので、どんな風に倒すのか注目する。


 魔物の近くまで一気に駆け寄ると、まずは先制とばかりに頭を蹴った。魔物は一瞬ひるんだが尻尾を使って攻撃してくる、それを掴んだオーフェがそのまま振り回すと、トカゲの頭が壁に激突して青い光になって消える。


 オーフェが向こうの方から手を降ってくるので、こちらも振り返してやる。戦い方はかなりダイナミックだが、そんな所は年相応でとても可愛い。



「身体能力も他の種族より優れていると言っていたが、あれは凄いな」


「恐らくスキルも使ってるでしょうけど、あんな小さな娘が魔物を振り回してるのは違和感あるわね」


「オーフェちゃん強いです」


「……オーフェが居ると安心」


「あのスキルはお腹が空くって言ってましたから、ご飯もたくさん用意しとかないといけませんね」


「たくさん動いて汗をかいても、ウミがきれいにしてあげるのです」



 体つきは10歳の人間とほとんど変わらないけど、他の種族より優れた身体能力を持つ魔族の実力の一端を見た気分だ、人間が数で力押ししないと勝てない理由もわかる。



「ダイ兄さん、どうだった?」


「凄いな、魔物を振り回して倒すのなんて初めて見たよ」



 魔核を持って駆け寄ってきたオーフェの頭を撫でながら感想を言うと、とても嬉しそうに目を細めて笑ってくれる。こんな無邪気に笑う姿だけ見ると、さっきの戦い方なんて想像もできないな。



◇◆◇



 全員で連携も確かめつつ、見つけた魔物を倒しに横道に入りながら下層へとダンジョンを進んでいると、エリナが急に立ち止まって壁の方を見ている。



「エリナどうした、なにか見えるのか?」


「……あるじ様、あの奥の壁に違和感がある」



 エリナの指差す方を見ているが、俺には普通の壁と変わらないように見える。他のメンバーにも聞いてみたが、誰もわからない様子だった。



「この辺りか?」


「……もっと下」



 そう言われて、中腰になって岩肌を触ってみるがやっぱりわからない。もしかしたら何か埋まってるんだろうか。



「この下に何か埋まってたりするのか?」


「……それはわからない」


「ダンジョンは生きていると言われるのだけれど、今まで何もなかった所に偶然攻撃が当たったりするとアイテムが出たりする事があるのよ、エリナちゃんはそれに気づいたんじゃないかしら」



 昔、予備の武器として買って、ほとんど使ってなかった安物の短剣を取り出して壁を掘ってみる。すると切っ先に何か硬いものが当たる感触がしたので、その周りを丁寧に掘り進んでいくと中から綺麗な石が出てきた。



「なんか綺麗な石が出てきた」


「すごくきれいな石ですね、ご主人様」


「これは宝石かしら」


「なんか宝石の原石って感じですね」



 麻衣の言うように、見た感じは宝石の原石の様にも見える。磨いていないので少しくすんだ感じに見えるが、色はきれいな青色をした石だ。



「青くてきれいな石なのです」


「これで首飾りとか作ったら素敵だろうね」



 確かにサイズも手頃だし、磨くときれいな宝石になるだろう。ペンダントやブローチなんかに付けると、とても良さそうだ。



「エリナ凄いな、俺たちにはここに何か埋まってるとか全然わからなかったよ」


「……昔から隠れているのを見つけるのは得意」


「アーキンドのダンジョンには無かったよな」


「……うん、あそこにはこんな違和感を感じる所はなかった」



 だとすると相当なレアアイテムを発見してしまったのかもしれない。これは売ってしまってもいいだろうか、とりあえず発見者のエリナの意見を聞いてみるか。



「これどうしよう、発見したのはエリナだから自分で決めてくれていいよ」


「……売ってパーティーのお金にしていいと思う」



 即答だった。他のメンバーにも聞いてみたが、あまり宝飾品には興味が無いのか、全員が売ってしまっていいという意見になった。



◇◆◇



 その後は更に下層へと降りていった、アイナの索敵で次々魔物を発見し、麻衣の魔法で一度に攻められる数を調整、俺とイーシャがいつもの様に先制攻撃で数を減らし、近づいてくる敵もアイナとエリナとオーフェが確実に倒す。


 前衛にオーフェが加わって、俺たちのパーティーも更に安定感が増した。



「これならもっと下の階に行っても大丈夫そうだね」


「そうだな、新しい武器が出来たら、このダンジョンの最下層にも挑戦してみようか」


「ご主人様、このダンジョンの最下層ってどうなってるんですか?」


「ここはアーキンドと違って、今いる場所と同じ様な洞窟のダンジョンみたいだ」



 ギルドで買ったダンジョンマップの情報だと、敵は強くなるが構造は普通のダンジョンと同じ作りになっていた。特殊な攻撃をしてくる魔物も居るようだが、事前にしっかり対策しておけば大丈夫だろう。



「それなら私の魔法で通路も塞げますから、だいぶ楽に進めそうです」


「危ない時はウミも水の壁を使うのです」


「アーキンドでも最下層まで到達しているし、ここも中級者向けだから難易度はそれ程上がってないはずよ、新しい武器の扱いに慣れる意味でもちょうどいいわね」


「……新しい武器でもっと倒す」



 みんなも気合が入っているし、オーフェとの連携も驚くくらいスムーズにできている。これがオーフェの言う“裸のつきあい”の効果かもしれないな。全員水着は着てるんだけど。


 その日は適当な所で切り上げて街に戻ることにした、ダンジョンから出た瞬間に、エリナが俺にくっついて離れなくなったのは、ダンジョン内との気温差を考えると仕方ないだろう。






 冒険者ギルドに戻って、依頼の完了報告と途中で出た宝石の買い取りをお願いしたが、宝石の方は査定に時間がかかるということで、後日買取金額を教えてくれることになった。


ダンジョンに埋まっていたアイテムを見つけたのは、エリナのスキルです。

この後に、エリナのプロフィールも更新します。

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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

新しく連載も始めています

いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
強化チートを使いながら気ままに旅する物語
色彩魔法

【完結作】
突然異世界に来てしまった主人公が
魔操という技術に触れ世界に革新をもたらすスローライフ
魔操言語マイスター
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