第3話 リザードマン
「あの魔物、倒したの、お前か?」
突然話しかけられて後ろを振り返るとそこには、緑色のツルッとした皮膚、立派なしっぽ、手には槍、身長が2メートル以上ある2本足で立つトカゲの顔をした生物が居た。
「リザードマン!?」
びっくりして、さっき手放した木の杖を手元に引き寄せる。
「まて、オレ、敵じゃ、ない」
リザードマンは片膝を付いて、手に持っていた槍を地面に置く。
すぐに襲われることは無さそうなので頷くと、少し離れた場所にいた2人のリザードマンも近くに来た。
「オレの名前、リク、こっちが――」
「オレは、カイ」
「オレ、クウ」
3人のリザードマンがそれぞれ名前を教えてくれた。
額に傷跡があるのが“リク”、尻尾の先が少し欠けてるのが“カイ”、他の2人と違って剣を持ってるのが“クウ”と言うらしい。
「俺はダイと言います」
俺も自分の名前を告げると、リクが話し始めた。
他の2人は倒れている人の様子を見に行くそうだ。
「あの魔物、最近、オレたちの、住処の近く、住み着いた」
リクの話はこんな感じだった。
あの一つ眼の魔物はリザードマン達が住んでる場所の近くに居着いて、度々仲間が襲われ怪我を負うようになった。何度も倒そうとしたがあの魔物は固く、槍で傷つけてもすぐ回復してしまう。今日も魔物と戦って森の浅いところまで追いやり、怪我をした仲間を集落に連れて行ってから、別の部族から応援に来たクウと合流して魔物を探していたらしい。
「森の外、炎が見えた、見に行くと、あの魔物、倒れるところ、だった」
リザードマンの体つきは立派で、すごく強そうな感じがするが、そんな彼らでも倒せない強い魔物だったのかと、運良く倒せたさっきの出来事を思い出して身震いしていると、カイが戻ってきてリクに何かを手渡した
「これ、魔物、落とした、魔核と、アイテム、お前のもの」
リクが渡してくれたのは、濃い青色の結晶と立派な牙のようなアイテムだった。
「これは何?」
「これ、魔核、言う、魔物倒すと、落とす、人族の街、魔核、買ってくれる、こっちの牙、魔物倒すと、時々落とす、武器の、材料になる、貴重」
魔物を倒した時に出るコモンアイテムと、レアドロップの牙という感じだろうか。
アイテムの説明を聞いていると今度はクウが戻ってきた、手には皮で出来た袋を持っている。
「全員、死んでる、これ、ヤツらの、持ち物」
皮袋を俺に渡してくれたので受け取ると、中には銀色や茶色の硬貨がたくさん入っていた。
「これ、勝手に取っちゃっていいのかな」
「死んだ、ヤツのもの、見つけたヤツ、貰っていい、置いておく、誰かに、持って、行かれる」
リクの説明で日本との倫理観の違いに戸惑ったが、ここは異世界のルールということで無理やり納得して受け取った。正直、カバンも落としたし無一文だし、今後のことを考えると助かる。
「そっちの、子供、生きてる、のか?」
怒涛の急展開にすっかり存在を忘れていた。
倒れている子供を仰向けに寝かせて確認したが、息はちゃんとしてるようだ。貫頭衣に包まれた胸も上下に動いている。栄養状態が悪かったのか、かなり痩せているが顔はとても可愛い。短めの髪は濃いオレンジ色で、耳っぽいくせ毛がある。そっと触ってみると動物の耳みたいだった。
「この子、こんな場所に耳がある……」
「恐らく、ソイツ、犬人族の、子供」
リザードマンに獣人、流石に異世界だ。
ライトノベルやゲームなんかは人並みに嗜んでたけど、割とすんなり受け入れている自分に驚いた。
むしろ開き直った感じかもしれない。
「お前たち、オレたちの、住処、来ると、いい」
「え!? いいんですか?」
「ここから、人族の街、遠い、それに、その子供、放って置くの、良くない、この辺り、暗くなると、危ない」
「じゃぁ、お言葉に甘えてお願いします」
「お前、あの魔物、倒してくれた、お礼も、したい、遠慮なく、来ると、いい」
クウが剣で手枷を壊してくれたので、倒れた子供をおぶって歩きだした。
子供はとても軽かった、それに背中に当たる胸が柔らかい。
この子、女の子だ。