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回路魔法  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第4章 アーキンド編
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第40話 エリナの才能

ブックマークや評価ありがとうございます。

今日はキリのいい所まで2話更新します、その2話目です。

 エリナを保護してから5日経つが、特に誰かが探しに来たとか、捜索願いが出てるとかいう話は聞かない。エリナも普通に動けるようになって、今は食事もみんなで食べることにしている。最初のうちは俺とアイナ以外とはぎこちない接し方だったが、今はだいぶ慣れてきて他のメンバーと会話も普通にできるようになってきている。


 エリナは15歳で、今まで南部地域の街を転々としてきたそうだ。彼女は存在を感じにくくさせたり気配を断ったり、いわゆる隠密系のスキルを使えるみたいで、これまでは街に居て誰かに追いかけられても逃げることが出来ていたそうだが、今回はスキルが通用しない相手がいて追いつめられた末に、崖から海に飛び込んで逃げたらしい。


 試しに気配を断って近づいたりしてもらったが、俺は後ろに立たれてもわからないくらい見事な隠形(おんぎょう)だった。アイナが辛うじて反応できていたので、エリナを追い詰めた相手は気配察知の感覚に優れた人物だったのかもしれない。


 あれ以来、俺との関係は良好で度々頭を撫でて欲しいとお願いしてくる。エリナは頭を撫でるとしっぽがピンと上を向くので、猫人族はこれが喜んでる動き方なのだろう。



◇◆◇



 夕食を食べた後に、俺の隣の席に来たエリナがみんなにお願いがあると言ってきた。



「……私を、みんなの仲間に入れて欲しい」



 テーブルに集まったパーティーメンバーを見ながらそう言った。その言葉を聞いたみんなが俺の顔を見るので代表して聞いてみる。



「俺は構わないけどエリナはいいのか? このパーティーって自分で言うのも何だけど、ちょっと訳ありの人も何人か居るぞ。まだその理由とか話してないけど、簡単に決めてしまって大丈夫か?」


「……それは自分なりに考えてみた。……それに訳ありなのはエルフ族や精霊がいるだけでも十分普通とは違う。……アイナを見ていると分かるけど、あなた達と一緒に居ると私も笑って生きていける気がする」



 そう言われたら断れないな。それにエリナは素直な娘だというのはこの数日で十分わかっている、それに俺にかなり懐いてくれて、ぎこちなくも甘えてくれるのは嬉しかったりする。



「わかった、みんなはどうだ?」


「同じ獣人族の仲間が増えるのは嬉しいです」


「私も異論はないわ、エリナちゃんはいい子だし可愛いもの」


「私も料理を美味しそうに食べてくれる人が増えるのは大歓迎です」


「ウミも仲間が増えるのは嬉しいのです、いっぱい頼ってくれていいのですよ」


「決まったな、これからよろしく、エリナ」


「……うん、よろしくお願いします」



 そう言ってエリナは笑顔を浮かべた。



◇◆◇



 その後、俺の方を向いたエリナはもう一つお願いをしてきた。



「……あなたに私の主人になって欲しい」


「それは俺に主人登録してほしいってことか?」


「……うん、だめですか?」


「俺はアイナの主人登録をしてるんだが、それでもいいのか?」


「……私はあなたがいい、アイナは私も一緒に主人になってもらうのは嫌?」


「私はエリナさんが一緒だと嬉しいです、2人でご主人様にお仕えしましょうね」


「……うん」


「わかった、じゃぁ明日登録に行こうか」






 こうしてエリナのパーティー登録と、俺の主人登録が決定した。




―――――・―――――・―――――




 翌日、まずはエリナのギルドカードを作るために街へでかけた、念のためフード付きのローブで顔を隠して行くことにした。俺とアイナが挟むようにエリナと手を繋いで歩く、アイナはかなりご機嫌でしっぽが左右にゆらゆら揺れている。



「アイナご機嫌だな」


「だってパーティーの仲間と同時に、ご主人様仲間が増えるんです2倍嬉しいですよ」


「……ご主人様仲間」



 エリナもなにか思うところがあったのか、小さい声でつぶやいていた。


 名前を書くだけでも出来てしまう冒険者登録は、どの街のギルドでも同じみたいなので、ギルドカードはあっさり発行された。カードが出来るとパーティー加入を済ませて、次は主人登録に行く。


 アーキンドの街は入場に主人登録はいらないが、行政の出張所はここにもあるので登録は普通にできる。主人登録しておいたほうが獣人にもメリットがあるみたいで、買い物とか施設の利用がしやすくなるようだ。



「アイナはブレスレットを作ってもらったけど、エリナも同じでいいか?」


「……私は首輪がいい。……目立つ方が、さらわれにくくなると思う」



 そうか、ただでさえ目立つ容姿なので、ちゃんと主人のいる獣人だとアピールするほうがいいのか。



「わかったそうしよう」



 そうして主人登録を終えて、首輪をはめてあげる、エリナは嬉しそうに黒い首輪を撫でていた。



「……これであなたは、私のあるじ様」


「あるじ様!? エリナはそう呼びたいのか?」


「……うん、私の主人だから、あるじ様。……だめ?」


「いやいいよ、アイナもご主人様って呼んでるし、好きに呼んでくれて構わない」


「……わかった、これからよろしくお願いします、あるじ様」



 こうしてエリナのパーティー登録と主人登録が終わり、俺たち6人はギルドを後にする。そして通りに出た時にイーシャの目が光った気がする。



「さぁ、これからエリナちゃんの服を買いに行くわよ!」



 これはアイナの時と同じパターンだ。



◇◆◇



 雑貨屋に行くと、イーシャが「少し時間がかかるから」と言ったので、外で待つことにして近くのお店を覗いている、女性陣は全員服選びに参加だ。


 エリナの武器も作ってやらないといけないと思い、近くの魔法回路屋に行ってみる。アイナより素早さが上のエリナに合いそうな武器と魔法回路を考えてみるが、彼女の意見や戦闘スタイルを確認せずに作るのも悪いし、オーソドックスにアイナと同じ風の短剣にした。


 魔法回路の露光が終わった頃、イーシャたちが雑貨屋から出てきた。



「終わったわよ、ダイ」


「かっこよくなりましたよ、ご主人様」



 そう言ってエリナを俺の前に出すと、フード付きのローブを脱いだ姿で立っている。動きの速いエリナに合わせて選んだんだろう、黒のショートパンツと白のノースリーブシャツで動きやすそうな格好だ。時間がかかったのは、尻尾を出す穴をその場で加工していたからか。



「動きやすそうでいいと思う、かっこよくてエリナによく似合ってるよ」



 エリナは嬉しそうに頬を染めている。みんなで色々意見を出したんだろう、全員満足そうにやり遂げた顔をしていた。


 その格好のまま街を歩いているが、フード付きのローブを脱いだまま歩くのは不安なのか、エリナは俺の腕にしがみついてきた。彼女の胸部戦闘力はうちのパーティーメンバーで一番高いので、腕に当たる感触がとてもまろやかだ。なんとか顔に出さないよう、表情筋の活躍に期待しよう。



「エリナの武器を作ってみたいんだが、魔法回路の起動だけって出来るのか?」


「……たぶん出来る。……でもマナ耐性が低いから魔法はたくさん使えない」


「エリナさん大丈夫ですよ、ご主人様の作ってくれる武器は私でも使えるので心配ないです」


「……わかった。……お願いします、あるじ様」


「とりあえずアイナと同じ風の短剣を作ってみたから、家に帰ったら試してみよう」



◇◆◇



 家に帰ってエリナ用に作ってきた短剣を渡し、魔法回路の起動をしてもらう。本人の言葉通り回路が光りだすが、イーシャと同じように2つの回路がきれいに光っている。これは魔法の同時発動の才能があるはずだ。



「エリナ、魔法回路を刻んた武器を2つ同時に使ったことってあるか?」


「……うううん、ない」


「今この短剣には魔法回路が2つ刻まれてるんだけど、その両方がきれいに光ってる、この光り方はイーシャと同じだ」


「……それって凄いの?」


「エリナちゃんとても凄いわよ、魔法が得意なエルフ族でも私の居た里には2人しかいなかったくらい貴重な才能なの」


「これなら短剣で二刀流が出来るかもしれない、エリナは武器を2つ持って戦った経験は?」


「……昔、それやってた」


「よし、エリナの武器は小振りな短剣2本にしてみよう、それでいいか?」


「……うん、嬉しい。……よろしくお願いします」



◇◆◇



 街まで戻って小振りな短剣を2本買い、アイナに最初に作った短剣より少し規模を下げた風の魔法回路を4本作って会計に行くと、流石にちょっと驚かれた。ロイさんの紹介してくれたお店にしておけばよかったと後悔するが、今は新しい武器を作ってあげる方が重要だ。


 魔法回路が印刷された紙を持ち帰って、家にあるテラスで露光を開始する。



「エリナさん楽しみですね」


「……うん、ワクワクする。……こんな気持ちひさしぶり」



 アイナとエリナはテラスに来て露光が終わるのを待っている。エリナの方は待ちきれないみたいで少しそわそわしてる感じだ、しっぽがゆらゆら揺れている。


 露光が終わった短剣の魔法回路を起動してもらい、エリナ用のカスタマイズを始める。



「……あるじ様、それ何やってるの?」


「魔法回路って誰でも使えるように、色々な人に合わせて回路が組み込まれてるんだけど、その殆どは使われてないんだ、それをエリナだけが使えるように作り直してる」


「……私専用の武器、すごく嬉しい」



 エリナは俺が改造している短剣を見ながらすごく嬉しそうな顔をしている、やっぱり自分専用って響きはいいな。俺は横で幸せそうなオーラを出しているエリナを感じながら、2本の短剣の改造を進めていった。



◇◆◇



 俺と獣人組の3人で少し離れた場所にある雑木林に来ている。



「この短剣はアイナが最初に使ってたのより少し切れ味が落ちてると思うが、マナの流れはだいぶ抑えて作ってある。それでも二刀流だと手数が多くなるので、あまり無理はしないようにな」


「……わかった」



 そうして短剣を2本構えて身体強化を発動したエリナが、木々の間を縫うように移動して草や(つる)を斬り刻んでいく。アイナより素早いだけあってちょっと目を離すと見失いそうだ。



「あれがエリナの本気の動きなのか、速すぎて目で追うのも大変だ」


「エリナさん速いですよね、代わりに力はあまりないと言ってましたけど、それは二刀流で補えそうですね」


「そうだな、魔法の同時発動ができるのは幸運だった、きっとエリナと相性のいい武器になると思うよ」



 アイナと2人で短剣を振るエリナを見ながら、これが彼女自身も守れる武器になるといいと考えた。



「……あるじ様、こんなに斬れる武器は初めて」


「その様子だと使い勝手に問題は無さそうだな」


「……うん、こんな武器を作ることが出来るあるじ様はすごい、尊敬する」


「私の自慢のご主人様ですから!」


「……私も自慢する」



 アイナとエリナの2人で俺の自慢大会みたいになってしまった。何となくくすぐったくなるし、俺のスキルのことは内緒だからな。



「……この武器で一度ちゃんと戦ってみたい」


「そうだな、明日にでもみんなでギルドの依頼を受けてみるか」


「この街に来てからはじめての依頼ですね」


「……頑張る」






 帰って他のメンバーとも相談して、明日はギルドの依頼を受けてみよう。


まろやかさん。


この投稿の後に、資料集の方の更新作業に入ります。

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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

新しく連載も始めています

いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
強化チートを使いながら気ままに旅する物語
色彩魔法

【完結作】
突然異世界に来てしまった主人公が
魔操という技術に触れ世界に革新をもたらすスローライフ
魔操言語マイスター
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