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回路魔法  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第1章 異世界転移編
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第2話 サイクロプス

 最初に目に入ったのは斜めになって傾いている馬車だった、そして何かを掴んでいる赤茶色の巨大な人形(ひとがた)の背中が見えた。



「なっ……」



 目の前の光景に言葉が出ない。


 馬車の近くには太った男が倒れていて、少し離れた場所には曲がった剣と体格のいい男が倒れていた。そして壁の近くにはローブを着た男と杖みたいな棒が転がっている。


 全員ピクリとも動かない……



「GYUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO」



 赤茶色の怪物が立ち上がる。最初は夢かVRゲームかと思った、だが圧倒的な存在感や匂い、そして体を震わせる叫び声がそれを否定する。


 怪物が立ち上がるのと馬車も一緒に持ち上がり、荷台から何かが落ちてきた。茶色っぽいそれはよく見ると人だった、手には木の板が嵌められているようだ。


 落ちてきた人物はゆっくりと起き上がり、怪物の方を見て一瞬動きが止まったあと、俺の方を見て驚いた顔をしたが、おぼつかない足取りで走り寄ってきた。手枷のせいでうまく走れないのか、数十メートル走った所で転んでしまう。こちらの方を見てなにか口を動かしたが、力尽きたのか動かなくなってしまった。


 それを見た俺はようやく我に返った。



「見捨てるって選択肢は……無しだな」



 せめて何か武器になりそうな物をと、ローブの男に近くに転がっていた杖を拾い、倒れた人物に駆け寄り声を掛ける。



「おいっ! 大丈夫か!?」



 倒れていたのはまだ小さな子供だった。話しかけても全く反応しないので少し不安になる。


 とりあえずこの場を離れようとその子を抱き上げようとした時、声が聞こえた。



「GYUO?」



 怪物がゆっくりとこちらの方に振り返る。

 怪物の顔には眼が一つしかついていなかった。



「サイクロプス!?」



 ゲームに良く出てくるモンスターそっくりだ。


 怪物はしばらくこっちを見ていたが、動く人間反応したのか掴んでいた馬車から手を放し、こちらの方に近付こうとした。


 背中を向けていた怪物が気づく前にこの場から逃げようと思ったが甘い考えだった。馬車を軽々と持ち上げる化物相手に、人間の力ではどうあがいても勝てる気がしない。


 そう思うと恐怖で足がすくんでしまう。


 しかし何もせずに殺されるのは嫌だ、少しでも抵抗してやろうと怪物の方を見据えて、拾った杖を強く握りしめ振り下ろした。



「くっ……くるなっ!」



 その時、指先の方に何かが抜けていく感じがして杖に幾何学模様の線が浮かび上がり、先端から火の玉が飛び出した。



「えっ!? なんだ、これ!?」



 火の玉は怪物の方に飛んで行き肩の辺に当たる。



「GYUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」



 火の玉が当たった部分から煙が上がり怪物が叫ぶ。


 自分に魔法が使えたことに驚いて動きを止めてしまったが、肩を焼かれて叫んでいた怪物がこちらを睨んで走ってきた。



「GYUAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」



 地響きを立てながら近づいてくる怪物の姿にパニックになり、杖をむちゃくちゃに振り回した。



「来るな! 来るなっ! 来るなぁーーーっ!!」



 振るたびに杖の先から火の玉が生まれて怪物の方に飛んでいく。そのうちの一つが怪物の眼に命中した。



「GYUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!」



 怪物がその場でのたうち回るが、杖を振り回すのをやめない。



「倒れろっ! 倒れろっ!!」



 火の玉が怪物に次々命中して火だるまになる。



「GY…………」



 やがて怪物は動かなくなり、青い光になって消えた。



「はぁっ、はぁっ、はぁっ……

 倒した、のか?」



 俺はその場にぺたんと座り込んでしまった。

 全身汗びっしょりで、杖を強く握りすぎたせいか手は真っ白になっている。



「魔法が使えたりモンスターが出たり、これって異世界転移ってやつじゃ……」



 少しづつ落ち着いてきた頭で今の状況を考えると、帰り道に女の子を助けようとした時に見た光の渦が、異世界に繋がるゲートだったのではないかと思い当たる。どうも俺はそれに巻き込まれてしまったらしい。


 まさかライトノベルで良くあるような事が自分の身に降りかかるとは思ってなかったが、いま目の前で起きた出来事はそれ以外に考えられず、突拍子もない考えだと頭の隅では思いつつも納得しようとしてた時に後ろから声をかけられた。



「あの魔物、倒したの、お前か?」


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新しく連載も始めています

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