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第27話 新しい武器

 中央広場の屋台でお昼ご飯を買って椅子に座って食べながら話をする。



「アイナの短剣は風の密度を少し上げようと思うんだ、もちろんマナの流れは減らすから大丈夫だ」


「剣が固くなって良く切れる様になるってことですよね、マナが少なくなるなら問題ないです」


「麻衣は範囲をもう少し狭めようと思う、勇者パーティーのように人数が多くないから、今の3分の2程度の範囲にしたい、その上で強度を上げて流れるマナの量を減らそう」


「そこまで贅沢に変えてもらえるなら文句のつけようもないです、お願いします」


「イーシャは水の上位属性を使ってみないか?」


「つまり氷の矢にするってことかしら」


「そうだ、貫通力も増加するしいいと思うんだ」


「普通は上位属性の魔法回路にすると威力が大幅に落ちるんだけど、ダイが組むなら大丈夫そうね、面白そうだしそれでやってみましょう、お願いするわ」



 4属性には上位属性があって、水だと氷、土だと石、風だと雷、火は特殊で普通は赤い火だが上位属性は青い火になって温度が上昇する。その分必要なマナが多くなってしまい、威力や規模が犠牲になるのであまり使う人はいない。スキルが成長して充填部分の効率が更に良くなったので、上位属性を使っても同等のマナ消費で同じかそれ以上の威力は保てるはずだ。



◇◆◇



 今回は普通の魔法回路屋に行く。食堂のおじさんに教えてもらったマニアックなお店は、俺の武器で実験してみるつもりだから今日は我慢だ。看板は何処の街でも同じデザインに決まっているので、王都でも◇の中が+印で区切られていて、4箇所に火・水・風・土のマークが入った看板だ。何店舗かあるが一番大きな店に行く。



「いらっしゃいませ」



 少し眠そうな目をした女性の店員さんがお店に座っている。挨拶をしてお店にあるレシピ表を見ながら回路をレールに並べていく。



「ダイ先輩ってこういった機械みたいなものを扱うのが好きななんですか?」


「俺は電子部品で色々なものを作るのが趣味だったんだ」


「電子部品ってパソコンとか?」


「パソコンも好きだったけど、最近は小さな(Blueberry)コンピューター(Tarte)と、それに繋げる周辺機器を部品から作るのが楽しかったな」


「それで魔法回路屋に来てから、とても楽しそうな顔してるんですね」



 以前アイナにも言われたけど、魔法回路屋に来ると俺は楽しそうな顔をしてるらしい。まぁ実際ワクワクしてるのは確かだ。


 アイナ用は充填のパーツを今の半分程度にして、密度のパーツを大きなものに変更する。


 イーシャ用も充填のパーツをリークで消費されてしまった無駄な分を動作する回路に置き換えて、トータルでマナの流れが同じになる程度に減らして、属性を氷に変更する。通常なら充填部分の出力が足りなくて魔法の威力が落ちてしまうが、回路を全て動くものに置き換えると十分補えるはずだ。


 麻衣用は充填を大きく減らして、密度を大きくして範囲のパーツは3分の2ほどの大きさのものに変える。発動は今と同じコマンドワードタイプで、キーワードは“障壁”だ。小型の魔法回路を並列接続すると、中型魔法回路を超える威力が出せるのはイーシャの水の矢の杖で実証済みなので、これで大幅な強化になる繋がると考えている。


 それを2本づつ作って支払いに向かう。



「お客様、大量に買ってくれてありがとうございます、これで私の分のノルマが……」



 一度に6本のレールを持って行ったからだろうか、店員さんがなんか世知辛いことを言い出した。同じ種類の回路を2本づつとか、変わった買い方をしてると思うんだがあまり気にしていないようだ。アルバイト店員みたいな人なんだろうか。


 印刷機の場所を教えてもらって、いつものように中サイズの印刷機に少サイズのパーツを2列に並べて魔法回路の印刷された紙を作る。



「魔法回路ってこうやって作るんですね」


「私も見るの初めてです」



 麻衣とアイナが興味深そうに印刷するのを見ている。上蓋を押し込むと隙間から光が漏れるのを見て少し驚いてるようだ。



「これはかなり特殊な使い方をしてるから、あまり参考にならないけどな」


「回路を2つ並べるなんて普通はやらないものね」



 印刷し終わったパーツをお店に返して、次は武器を見に行く。いま使ってるのと間違えないようにデザインの違う武器を選んでもらおう。新たな性能の武器になるからなのか、みんな真剣に選んでいる。



「私は持ち手の端が緑になってるこの剣にします」


「私は細い青の飾りがついた杖にしようかしら」


「私は透明な玉のついた杖にしようかな」



 それぞれ自分の使う属性の色や形状を意識した武器を選んだようだ。支払いを済ませて、お店の外に備え付けられてる台を使わせてもらい魔法回路の露光をする。その場で魔法回路を刻む人も多いので、自由に使えるように設置してあるそうだ。


 女性陣におやつを買ってきてもらって、それを食べて話をしているうちに露光が終わったので、また街の外へと移動した。



◇◆◇



「それじゃぁ、一人づつ魔法回路を起動状態にしれくれるか」



 そう言って魔法回路の改造を始める。今までは使われてない部分の接続を切ってバイパスするだけだったが、今回からは別の回路に置き換えるスキルが使える。


 まずは左右の回路のインターフェース同士を繋いで、一つの回路にしてしまう。麻衣も魔法の同時発動は出来ないようで、2つの回路が明滅している。


 次に、使える回路にどんどん置き換えていくと、まだら模様になっていた魔法回路の充填部分全体がきれいに光る。置き換える部分のサイズはまちまちだが、最小単位のブロックは全部同じサイズなので、小さなブロックを次々並べていくだけで問題ない。


 並べるだけで接点も繋がっていくのでバイパス処理より楽かもしれない。俺が電子回路に興味を持つきっかけになった、父が買ってくれたブロック状の電子パーツを並べて作る回路みたいで、少し懐かしい気分になった。


 発動のみ片方の回路からカットして並列魔法回路の完成だ。



「まずはアイナの剣を試してみよう。麻衣、今日の朝に使ってた方の杖で障壁を張ってくれるか、アイナは新しい剣で攻撃してくれ」


「「わかりました」」



 今朝と同じ様に麻衣が障壁を展開して、周りと少し見え方の違う空気の層のような部分にアイナが斬りかかる。




  ――――パリーーーン




 障壁がアイナの剣に斬られた。午前中に試した時は障壁に阻まれて剣が滑ってしまい斬れなかったが、今度は密度のパラメーターパーツを大きくしたので、思ったとおり切れ味が増したようで満足する。それに合わせて充填部分の出力も上げているが、無駄がなくなった分マナの量は減っている。


 10の充填回路は使えない部分のお陰で4の出力しか出せず、最適化しても切断した回路にマナがリークしてしまい消費量が7にしかならなかったが、今度は5の充填回路にして全て使えるようにした感じだ。



「ご主人様凄いです、今度は斬れましたよ!」


「切れ味は増したけどマナの流れる量は減ってるので大丈夫だぞ」


「とっても嬉しいです! ご主人様、少し試し斬りしてきていいですか?」


「あぁ、今度はマナ酔いになるまで使わないようにな」


「わかりました、行ってきます!」



 アイナは近くの森の方に走っていった、しっぽも左右に揺れているのでとても嬉しそうだ。その姿を見ていると俺も嬉しくなる。次は麻衣の障壁魔法の強度をチェックしてみよう。



「麻衣、今度は新しい杖で障壁を展開してみてくれ、イーシャは水の矢の並列回路で攻撃を頼む」


「わかりました」「わかったわ」



 麻衣が新しい杖で障壁を張り、そこにイーシャが水の矢の魔法を放つと、今度は障壁に阻まれて魔法が霧散した。こちらも午前中に防げなかった魔法の攻撃を凌げる強度になった。今まで使っていた障壁はシングルの魔法回路だったので、それを並列にすることで強度が大幅に増加したようだ。


 充填部分も大きく減らしたのでマナの負担も軽くなっているし、範囲を減らした事と充填部分の効率アップで、魔法の発動にも問題は出なかったようだ。緻密な計算があったわけではないが、うまくいって良かった。



「ダイ先輩、この障壁を私が張ってるんでしょうか」


「あぁ、それが新しい武器の力だよ」


「私、ちょっと感動しちゃって言葉にならないです。私にもこんな事が出来るようになるなんて、ダイ先輩本当にありがとうございます」



 麻衣は新しい杖を愛おしそうに抱きしめていた。朝から何度か障壁を使ってもらってるが、まだマナ酔いはしていないみたいだし、もしかしたら既に今まで魔法を使えていた時間を超えているのかもしれないな。



「次はイーシャの新しい杖を試してみようか」


「そうね、2人とも想像以上の結果が出てるので私も楽しみだわ」


「イーシャの杖はマナの量はあまり変わらないと思うんだ、でも上位属性だから威力は上がってるはずだ」


「水の矢の時も岩を狙ったから、今度も同じにしてみるわ」



 そう言ってイーシャは杖を構えて少し離れた場所にある大きな岩を狙った。




  ――――カイーーーン




 少し甲高い音がして氷の矢が岩に突き刺さった。貫通まではいかなかったが、上位属性だし充填部分もマナの流れが増えすぎないように抑えている、構築のパラメーターも属性以外はほとんどいじってないのでこんなものだろう。しかし端の方を(えぐ)る程度だった水の矢に比べて貫通力が増加しているのは間違いない。



「マナの流れる量がそれほど変わらないのに、上位属性でこれだけの威力が出せるなんて驚きだわ」


「威力を上げようとしてもマナの量が増えるし、扱いづらいと思ったからこれくらいに抑えてみたけどどうかな?」


「十分すぎるわよ、これなら先日みたいに魔物が密集してる場合でも役に立つと思うわ」



 魔物の暴走(スタンピード)の時はかなり苦戦したから、水の矢の力不足を感じていたのかもしれない、いいタイミングで武器を新調できてよかった。



「ご主人様、前より良く斬れるようになったのが実感できます、ありがとうございました」


「そうか、良かったな」



 アイナが戻ってきて嬉しそうな目で俺を見上げてくるので頭を撫でてやる。しっぽも全力で揺れているので、新しい武器もかなり気に入ってくれたみたいだ。






 それから障壁の性能も更に試してみたが、アイナの新しい剣もイーシャの氷の矢も防ぐ強度があった。麻衣も今日一日で何度も魔法を使ったが、マナ酔いしなかった事に始終笑顔を浮かべながら、その日は宿に帰宅した。


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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

新しく連載も始めています

いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
強化チートを使いながら気ままに旅する物語
色彩魔法

【完結作】
突然異世界に来てしまった主人公が
魔操という技術に触れ世界に革新をもたらすスローライフ
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