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第20話 王都散策

 今日はみんなで王都の散策をすることにした。旅の疲れも残っているし、どこに何があるか把握しておかないと暮らしていけない。


 昨日、冒険者ギルドに行った時に街の案内図を見たが、俺たちが入ってきた南門の周辺が冒険者ギルドや宿泊施設が集まっている冒険者のための区画、中央に大きな広場があってその周辺は色々な店舗や飲食店が並ぶ商業区画、北西方向一帯が王城と貴族の住む区画、北東方向には国の施設や研究機関が集まっていて学校もあるそうだ。冒険者区画にも酒場や飲食店があったり、普通の住宅や小さなお店もあちこちにあるので、きっちり分かれている訳ではないが大別するとそんな感じだ。


 東西南北に伸びる大通りは、馬車の通る場所と人の通る場所が縁石で区切られていて、どちらの道幅も広いので今日も3人手を繋いで歩いている。もちろんアイナが真ん中だ。



「中央広場には屋台や露店もたくさんあるって聞いたぞ」


「屋台なら私も1人で買い物できます、楽しみです」


「どんな露店があるのかしらね、掘り出し物とか見つかるといいわね」



 それぞれが期待に胸を膨らませて歩いていくと、通りの先からいい匂いが漂ってきた。人の姿もたくさん見えるのであそこが中央広場だろう。


 東西南北の道が交わる地点が大きく開けていて、中央の馬車が通る道に区切られた4箇所が露店や屋台に割り当てられた区画になっていた。食べ物や飲み物を売る屋台、何かの道具や本を売ってる露店、大道芸や楽器の演奏をしてる人達もいる。



「ご主人様あそこ! お肉を棒に挿して焼いてますよ!」


「おっ串焼きか美味しそうだな、行ってみるか」


「いいわね、とても美味しそうだわ」


「行きましょう!」



 アイナが俺たちの手を引いて屋台に歩いていく。串焼き肉や、焼いた生地に野菜を並べてソースをかけて巻いたもの、カットした果物もあったので飲み物と一緒に購入する。広場に設置されている長椅子に座ってみんなで食べる。



「このお肉、ちょっとピリピリするけど美味しいです」


「この野菜を巻いたものも辛味のあるソースで美味しいわ」



 お肉には胡椒みたいな香辛料がかかっていて少しピリッとする、野菜にかかってるのはマスタードみたいな辛味のあるソースだ。王都は調味料や香辛料も豊富に出回っているみたいで、ファースタの街では食べたことのなかった味ばかりだ。



「どれも美味しいな、屋台はたくさんあるし全制覇するまで色々楽しめそうだ」


「美味しそうなものばかりで目移りしてしまいます」


「ここにはしばらく滞在する予定なんだから、じっくり攻略していきましょう」


「そうだな、ギルドの依頼もしっかりこなして、美味しいものがたくさん食べられるように頑張ろう」


「「おー!」」



 食事を終えた俺たちは露店を見たり大道芸を眺めたり、雑貨屋や魔法回路屋にも足を運んだ。王都のお店は流石に品揃えも多く、特に構築部分のパーツは興味を駆り立てるものが多かった。今日はあちこち回るのでゆっくり見られないが、お金に余裕が出てきたら色々なお店を見て回って、様々な回路を試してみたい。



◇◆◇



「ねぇ、あなた達は自分のマナ耐性やマナ変換速度を計ったことないわよね」



 広場に設置していた街の案内板を見ながら次はどこに行こうかと相談していたら、イーシャがそんな事を言ってきた。



「あぁ、俺は今までマナ酔いはしたことないけど、どれくらいが上限なのか知らないな」


「私も耐性が低いってことしか知らないですね」


「でもそんなのわかるのか?」


「この王都には魔法回路の研究をしている魔法ギルドがあるから、そこに行くと誰でも無料で測定できるわよ」



 ファースタの街には無かったが、大きな街には魔法ギルドがあってそこで測定できるらしく、この王都だと北東の区画にあるようだ。せっかくなので行ってみることにする。また3人で手を繋いで街並みを眺めながら歩く。



「私、ご主人様はマナ耐性が高いんじゃないかって思ってます。私を助けてくれたときも、魔物が燃え上がるまで魔法を撃ってたって、リザードマンの人も言ってましたし」


「あの時は必死だったからな、それ以降はあまり連続で魔法を使うことはなかったし、最近だと移動中にオオカミに襲われた時くらいか」


「ダイのマナ耐性は人並み以上はあると思うわ、オオカミの時も耐性が低めの人は体調を崩すくらい使ってたもの」


「そうか、測定するのが楽しみだな」



 王都の魔法ギルドはとても大きな建物で目立っていた。ここはマスターパーツの管理もやっているらしく、2階以上の研究施設や保管庫は厳重な警備体制が敷かれていると、玄関にあった施設の案内に記載されていた。建物に入ると受け付けと机や椅子が並んだスペースがあるが、今は誰も使っていなかった。


 受け付けの女性に挨拶して耐性と速度の測定をしたいと言うと、向こうの仕切りの奥にあるので自由に使って下さいと言われ、その場所に向かう。完全な個室のようになっていて、外から覗かれないような配慮がしてある。



「まずは私が計ってみるわね」



 台の上に設置してある装置にイーシャが手を乗せると、温度計みたいな2つの棒の中を銀色の液体がせり上がってくる。右がマナ変換速度、左がマナ耐性の測定値のようだ。2つの棒には中心に太い線が引かれてあり、後は細かい線が何本か引かれている。そして銀色の液体は、そのどちらも高い位置で安定した。



「両方とも高いな」


「イーシャさん凄いです」


「エルフはどちらも高いのが特徴ね、魔法が得意な種族って言われてるのもこれのお陰よ」


「じゃぁ次は私が計ってみます」



 アイナが手を置くと、マナ変換速度が中心より上の方でマナ耐性は真ん中よりかなり下で安定した。



「アイナちゃんはマナ変換速度が高いわね。魔法の発動速度が上がるから、今みたいに剣で切った瞬間に効果が出せる魔法と相性が良いわ」


「ほんとですか! ご主人様の作ってくれた武器を使いこなせているようで嬉しいです」



 アイナがしっぽを揺らしながらニコニコしている。風の魔法で切れ味を増加させる短剣をかなり気に入ってるみたいだし、相性がいい特性を持っていたのがとても嬉しいようだ。



「次は俺だな」



 2人の後なので情けない結果が出ないように、ちょっと緊張しながら装置に手を置く。銀色の液体がせり上がってきて右のマナ変換速度は真ん中あたりで止まる、左のマナ耐性はどんどん上昇してイーシャの測定値を超えても止まらない。やがて棒の上限にまで銀色の液体が上がってしまい、それ以上計れなくなった。



「ダイ、あなたのマナ耐性ちょっと異常ね」


「ご主人様やっぱり凄いです、さすがです!」



 異常とは失礼だなイーシャ。アイナは褒めてくれるから可愛い。


 でも魔法をいくら撃ってもマナ酔いをおこさなかったのは、この耐性値のせいか。充填部分をリッチにして規模と威力に極振りしたような魔法回路を組んでも連射できそうだ。まぁそんな凶悪なのは作る予定はないが。



「でもマナ変換速度は普通だぞ?」


「それでもマナ耐性が測定不能なんて、どう考えておかしいわよ」


「俺の場合は事情が事情だけに、普通とは違うのかもしれないな」


「私は前からご主人様のマナ耐性は高いって思ってましたから驚きませんよ!」



 アイナはいい娘だな、今夜は思いっきりブラッシングしてやろう。


 イーシャは「エルフの私が人族に負けるだなんて」と少し落ち込んでいたが、測定を終えた俺たちは受け付けの女性にお礼を言って魔法ギルドを後にする。帰りは辻馬車に乗って宿屋の近くまで移動した。


 今日はイーシャにも優しくしてあげよう。


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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

新しく連載も始めています

いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
強化チートを使いながら気ままに旅する物語
色彩魔法

【完結作】
突然異世界に来てしまった主人公が
魔操という技術に触れ世界に革新をもたらすスローライフ
魔操言語マイスター
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