朝宮大
これは、古い友人から入籍したと発表があって、ノリノリで書いた話になります。
頭をからっぽにしてお読み下さい(笑)
連続更新していますので、最新話から飛ばれた方は前にもう一話投稿しています。
ユリーとヤチが一緒に住むようになって15人になった俺たちの家族だが、みんな仲良く暮らしていていつも笑顔あふれるこの家はとても住心地がいい。
広くなった土地は地続きにして、家を“匚”型に拡張した。裏庭だった所が中庭のようになり、クレアが花を育てたり畑を作ったりして、楽しそうに世話をしている。拡張した部分には広い厨房と食堂や、多数の個室に加えて大きなお風呂も設置した。
マナ耐性がカンストしている俺がいるから、どれだけ大量のお湯でも沸かしてしまえるが、流石に毎日は時間もかかるし大変なので、普段は元からあったお風呂を使っている。全員で入っても余裕の広さがあり、海水浴に行く前に俺の理性が試される事になったが、みんな大風呂の日をすごく楽しみにしてるので、作って良かったと思っている。
流石にこれだけの大きさの風呂を個人宅に設置する人はおらず、お城の建設や維持に関わっている人たちにお願いしたが、費用もかなりかかってしまった。しかし、パーティー口座の残高は減るどころか増えていたりする。その理由は、地下シェルターで発見したマスターパーツには新発見の物が多く、結びの宝珠と同じく分割で支払われる事になったからだ。
◇◆◇
俺の回路魔法は、あれから少しだけ進化した。丸や四角の形で魔法回路が作れるようになっただけだが、杖以外にも刻めるようになったので、活用の幅も広がるだろう。
ただ俺の作る魔法回路は、その人に特化したものになってしまうので、マスターパーツのような汎用品として、多くに人に使ってもらえないのは少し残念だ。
新しい魔法回路もいくつか試作してみたが、想像力不足もあるのか失敗も多い。そんな中で一番喜ばれたのが、鍛冶屋にお願いして魔法回路が刻めるようにしてもらった“じょうろ”だ。そこに回路魔法で水を生み出す回路を刻んで、楽に水撒きが出来るようにしてみた。
魔法で作った水は不純物が交じるので飲用には向かないが、植物に与えるのならば問題がない。ウミにお願いして水の下級精霊をエンチャントしてもらえば同じ事が出来そうだが、クレアが自分の力を使って世話ができるのが良いと大喜びしてくれた。
市販の魔法回路で同じ事は出来ないし、こんな生活が便利になる魔法に限って成功するのが、実に俺らしいと思っている。
◇◆◇
冒険者活動の方も今までどおりギルドの依頼を受けたり、自分たちの興味がある探索に出たりしている。ストレアさんはギルドの受付嬢に大人気で、カウンターの上に降り立った所を撫でてもらいながら手続きをするのが、いつもの光景になった。ウミも良くこうしてもらっていたが、大きくなってしまってそれが出来なくなり、癒やし成分が足りなくなったと全員が嘆いていたそうだ。
ある受付嬢に「やっぱりダイさんには小さな女の子が乗っていないと落ち着きません」と言われてしまったが、一体どんな目で俺は見られていたんだろう、ちょっと不安になる一言だった。
そしてユリーとヤチのダンジョン調査には、必ず付き合うことにしている。街の近くにあるダンジョンでも出口まで戻る行程が省けるし、王都の拠点から通えるのでとても好評だ。読み書きを憶えたエリナやキリエも資料整理を手伝ってくれたりするようになり、ヤチが厨房に立つ時間も多くなって料理のレパートリーも順調に増やしていってる。
◇◆◇
休暇の日は全員で出かけることが多く、リザードマンの住処に行ってヤチのテンションがおかしくなったり、三日月湖でピクニックや真夜中の止まり木にある特別室に宿泊に行ったり、海水浴にももちろん行った。
ちょうどへストアさんがこちらの様子を見に来ていたので一緒に泳ぐ事になったが、超絶まろやかさんの迫力は凄まじかった。少し動くだけで零れ落ちそうに揺れる姿を見て、数人のメンバーから表情が消えた。
他にもメイニアさんやヤチそして大きくなったウミも居るので、浜辺で遊んだり泳いだりしていた人が一斉に動きを止めたが、溺れれたりする事故がなくてよかった。まぁ、ウミの目の届く範囲なら、水難事故は発生しないと思うが。
そして火の月の青になり、アイナの誕生日パーティーをする事になった。へストアさんにも参加してもらいたかったが、外せない用事があるらしく帰っていったのが少し残念だ。
みんなの誕生日や出会った日は、こうしてお祝いしたり言葉を贈るようにしているが、今日は少しだけ特別なものにする予定にしている。
◇◆◇
みんなで乾杯をして、いつもより凝った料理を食べた後に、リビングに全員で移動する。
「アイナ、改めて15歳の誕生日おめでとう」
「アイナおかーさん、これみんなで買ったから受け取って」
「キリエちゃん、みなさん、そしてご主人様、ありがとうございます」
キリエから花束を受け取って、アイナはとても嬉しそうな顔になる。出会ってからもうすぐ3年になり、顔や体付きも少女から女性へと少しずつ変わっていっているが、この笑顔だけはいつまで経っても変わらない。
「それとは別に、アイナには俺から贈り物をしたい」
精霊のカバンから小さなケースを取り出して渡す。アイナはそれを受け取って、少し不思議そうな顔をしてケースを開けている。
「……えっと、これは指輪ですか?」
「そうだよ、アイナ。
でもこの指輪には特別な意味があるんだ」
「ご主人様の付けている指輪みたいに、何か宿っているんですか?」
「ちがうよ、これは俺たちの世界で結婚の約束をする相手に贈って、左手の薬指につけてもらうものなんだ」
「えっ!? ……それって、ご主人様と私が?」
「もちろんそうだよ。
……アイナ、俺と結婚してくれ」
それを聞いたアイナは驚いた顔をして、それが戸惑った表情に変化していく。
「でっ、でも、私は獣人ですから、ご主人様となんて……」
「この世界に来てからずっと一緒に生活してきて、その笑顔に何度も救われている。種族とか身分とかは一切関係ない、俺はアイナだからこれからもずっと共に生きていきたいと思ってるんだ」
「イーシャさんやマイさんや他の人はどうするんですか、みんなご主人様の事が好きなのに、私だけなんて嫌ですよ」
「みんなの気持ちにも応えようと思ってる、でも一番最初はアイナに告白したいと決めていたんだ。だから他の人には、アイナが15歳の成人を迎える日まで待ってもらっていた」
アイナはみんなの顔を見渡して確認しているみたいだ、実際に告白された人も居るし、俺から待って欲しいとお願いした人も居る。それに、今日の事はアイナ以外の全員が知っている。
「そっ……そんな……。
……本当に私でいいんですか?」
「アイナ一人に全ての愛情を捧げられないのは申し訳ないと思う、でもどれだけ考えても今の答え以外出てこなかった。それでもアイナを愛する気持ちは、これから先もずっと変わらない。こんな俺だけど、一緒になってくれないか?」
俺の言葉を噛みしめるように少しだけ下を向いて、それからこちらをまっすぐ見てくれた顔は、花の咲くような笑顔だった。
「今まで生きてきた中で一番嬉しいです、この世界に生まれてきてご主人様に出会えて本当に良かった。
……私も愛しています、結婚して下さいダイさん」
アイナは指輪の入ったケースを大事そうに両手で包み込んで、俺の胸に飛び込んできた。その瞳からは涙がこぼれているが、とても幸せそうな顔をしていて、しっぽもこれまでで一番勢いよく左右に揺れている。
しばらくそうして嬉し泣きの涙を流していたが、俺から離れたので左手の薬指に指輪をはめてあげた。見ただけで指のサイズがわかる、ミーレさんの特技で作ったその指輪はアイナの薬指にぴったりで、それを愛おしそうに撫でている姿はとても可愛らしい。
「アイナちゃんおめでとう、良かったわね」
「お祝いにお菓子を作ってるので、後で食べましょうね」
「ダイくんならアイナちゃんを、これまで以上に幸せにしてくれるのです」
「……アイナおめでとう」
「アイナちゃん良かったね、ボクも嬉しいよ」
「アイナ様、本当におめでとうございます」
「アイナおかーさん、おめでとう!」
「アイナさん、お兄ちゃんにいっぱい幸せにしてもらってね」
「この幸せな雰囲気はとてもいいね、おめでとうアイナちゃん」
「ダイさんとアイナさんなら、きっとこの世界からも祝福されますよ」
「今のアイナちゃんは、この大陸で一番幸せだと思うわ」
「こんな素敵な場面に立ち会えるなんて、この大陸に来て本当に良かったです」
「皆さん、本当にありがとうございます。
私いま、とっても幸せです」
また両目に涙のにじみ始めたアイナを抱き寄せて、その頭を撫でてあげる。この世界に来て一緒に暮らし始めて、ずっと隣に立って歩んでくれたこの少女と、これから先もずっと歩んでいこう。
◇◆◇
「あの、ご主人様お願いがあるんですが……」
「結婚したんだから、ご主人様呼びでなくてもいいと思うんだが」
「ご主人様はやっぱりご主人様ですから、だめですか?」
「いや、呼びやすい言い方で構わないよ。それでお願いってなんだ?」
「私はみんなが一緒の方が嬉しいんです、ご主人様の答えを皆さんにも伝えてあげてもらえませんか?」
「わかったよ」
みんなの方を見ると、全員が微笑みを返してくれたので、俺の気持ちを一人ひとり伝えることにしよう。
▽▼▽
俺はイーシャの前に立って、その顔をじっと見つめる。
「イーシャが隣で導いてくれたから、この世界の事を何も知らなかった俺が、冒険者として今まで活動してこられたんだ。イーシャの気持ちは両親に聞いていたけど、今まで待たせてごめん。
これからも一緒に歩んでいって欲しい、愛してるよイーシャ、結婚しよう」
「ダイと出会ってから、今まで知らなかった事をどんどん経験することが出来て、もうあなたの居ない生活は考えられないの。それにあなたがアイナちゃんの事を大切に思っているのは、出会った頃から知っているから気にしないで。
私もあなたを愛しているわ、幸せにしてね」
少し涙を浮かべたイーシャの頭を撫でて、指でそっと涙を拭いてあげた後、その手に指輪をはめてあげる。
▽▼▽
次に麻衣の前に立ち、同じように見つめ合った。
「俺は麻衣の作ってくれる料理が大好きなんだ、それに同じ日本人だからどんな話題でもわかってもらえるのがとても嬉しい。元の世界だとまだ未成年で頼りないかもしれない、それに日本だとありえない結婚をしようとしている。
そんな俺だけど一緒に付いて来て欲しい、愛してるよ麻衣、結婚しよう」
「私は自分の料理を美味しいって言ってもらえるのが、一番嬉しいんです。それにあなたは私に居場所をくれて、こんなに温かい家庭もくれました。転移に巻き込んでしまってずっと申し訳ないって思ってたんですけど、一緒にこの世界に来られて良かったです。
ここではお味噌汁を作れませんが、毎日美味しい料理を作ります、あなたのお嫁さんにして下さい」
ポロポロと涙を流し始めた麻衣を抱きしめて、頭を優しく撫でながら泣き止むのを待って、その手に指輪をはめてあげる。
▽▼▽
少し離れた場所に浮いていたウミにも、床に立ってもらって見つめ合う。
「ウミに俺の頭の上が居場所と言われた時は、すごく嬉しかった。それに守護精霊にまでなって俺を守ろうとしてくれたのは、言葉では言い表せないくらい感謝してる。いつの間にか俺にとって近くに居るのが当たり前で、そばに居てくれるだけで安心できる存在になっていた。
精霊と人は全く違う存在なのかもしれないけど、一人の女性として愛してる、結婚しようウミ」
「そばに居るだけで安心して落ち着く気持ちになるのは、ウミも同じなのです。それに中級精霊だった頃から、ずっと女の子として扱ってくれてたのが、すごく嬉しかったのです。
ウミもダイくんが大好きなのです、ずっと一緒に居て欲しいのです」
俺に飛び込んできたウミを抱きとめて、頭を撫でたあげた後、その手に指輪をはめてあげる。
▽▼▽
緊張しているのか、しっぽがピンと伸びているエリナの前に立つ。
「エリナには色々なものをもらってばかりだ、君が居なかったら失っていたものも多いだろう。そして俺はエリナに甘えられるのがすごく好きなんだ、これからもずっとそばに居てその温もりを感じさせて欲しい。
与えてもらってばかりの俺だけど、エリナの事を愛している、結婚しよう」
「……私の世界はあるじ様がくれたもの、それを少しずつ返してるだけ。
……これで身も心も捧げられる、愛してますあるじ様、全部あなたのものにして」
俺に抱きついて、しっぽを器用に巻き付けてきたエリナの頭を撫でてから、その手に指輪をはめてあげる。
▽▼▽
オーフェの前に立って、赤くてきれいな瞳をじっと見つめる。
「オーフェリアの人懐っこい笑顔が俺は大好きだ、それにきれいな瞳や髪の毛も、とても魅力的な女の子だと思ってる。でも、もう少し体が大きくなるまで待ってもらえないか、オーフェリアが15歳になったら、俺の気持ちを指輪と一緒に受け取って欲しい」
「そうやってボクのことを見てくれたり、体の事を大切にしてくれるのはすごく嬉しいよ、すぐ大きくなるから待っててねダイ兄さん」
魔族と人では年齢の概念が違うが、オーフェはまだ12歳だ。人より遥かに高い身体能力を持っているとはいえ、その体格は人とあまり変わりがない。この世界の成人年齢になったらもう一度気持ちを伝えようと思いながら、抱きついてきたオーフェの頭を撫でてあげる。
▽▼▽
次にカヤの前に立つ、身長差がかなりあるが、しゃがんだりするのは子供扱いしてるようで嫌なので、そのまま話しかける。
「出会った時から俺は、ただの使用人とその主人という関係は嫌だったんだ。だから、みんなと同じ生活をして欲しいと思っていた、それを受け入れて少しずつ変わっていくカヤを見るのはとても嬉しかった。そして、俺のためにその存在を変えてくれたのは、何ものにも代えがたい喜びを俺にくれた。
この先もずっと俺たちの生活を見守ってほしい、カヤ愛している、結婚しよう」
「旦那様は私に眠ること、お風呂に入ること、一緒に食事すること、そして誰かを愛おしく思う気持ちを教えて下さいました。複数の家を管理できる存在に生まれ変われたのも、旦那様が居て下さったからです。私を人と変わらない存在として接してくださる旦那様にお仕えできて、とても幸せです。
あなたをお慕いしています、末永くおそばに居させて下さい」
俺に抱きついてきた小さな体を抱きしめて、その頭を撫でた後に伸ばしてくれた手を取って、指輪をはめてあげる。
▽▼▽
キリエの前に立つと、嬉しそうにこちらを見上げてくれる、この子は自分たちの娘だけど、俺の気持ちはちゃんと伝えよう。
「キリエは俺たちのとても大切な娘で、それはこの先も変わらない。でも、キリエが産んだ卵のお父さんにもなってあげたい。キリエが卵を産めるくらい成長したら、指輪を受け取って欲しい」
「ありがとう、おとーさん! キリエ頑張って大きくなるから、子供ができたらおとーさんになってあげてね」
嬉しそうな笑顔でジャンプして、俺の首に掴まってきたキリエを抱き上げ、その頭を撫でてあげる。竜族が大人になるのにどれほどの年月がかかるかわからないが、その時が来たらちゃんと指輪を贈ってあげよう。
▽▼▽
クレアがじっと俺の事を見つめてくれる、オーフェに出した答えと同じだとわかっているだろうけど、ちゃんと言葉で伝えよう。
「最初はオーフェの幼馴染という目で見ていた、でも俺の事を慕って頼りにしてくれるのがとても嬉しかった。そして、クレアと一緒に暮らしていくうちに、楽しそうに笑う姿や嬉しそうに植物の世話をする姿を見るのが、とても楽しみになった。それが君の事をずっと大切にしていきたいという気持ちに変わって、これからも隣で見続けたいと思うようになったんだ。15歳になったら指輪と一緒に俺の気持ちを受け取って欲しい」
「私はお兄ちゃんのおかげで救われた、そして自分の力が人の役に立つってわかった。お兄ちゃんに出会わなかったら、ずっと暗闇の中をさまよい続けて壊れていたと思う。私に希望と光をくれたお兄ちゃんの事を愛してる、大きくなったら絶対お嫁さんにしてね」
今日の約束を刷り込むように、俺の胸の飛び込んで頬ずりしてくるクレアの頭を優しく撫でて、絶対にその時が来たら指輪を渡そうと誓う。
▽▼▽
少し緊張しているユリーの前に立つ、俺も年上の女性への告白なので緊張する。
「せっかくユリーの方から告白してくれたのに、俺のわがままで待たせてごめん。今日の事を相談した時も、そんな俺だから好きになったと言ってくれて、とても嬉しかった。一緒に暮らすようになって、甘えてくる姿や真剣に仕事の話をしている姿、どれも魅力的でどんどん惹かれていった。
今度は俺の方から言わせて欲しい、愛してるよユリー、結婚しよう」
「去年一緒にダンジョン調査に行った頃から、あなたの事を思い浮かべる時間が増えたの。これが私の初恋だと気づいたのは今年に入ってからなんだけど、あなたの周りにいる人たちはみんな魅力的で、童顔で背の低い私なんて相手にしてもらえないと思っていたわ。
でも、ダンジョンの事故の後に、大切な存在だと言ってくれてとても嬉しかった、私はあなたの事が好きよ、ずっと隣に居させて」
涙を浮かべながら抱きついてきたユーリーを受け止め、少しだけ泣いた後に自分から左手を差し出してくれたので、そこに指輪をはめてあげた。
▽▼▽
ヤチの前に立つと、彼女は真剣な目で俺の事を見てくれる、お互い緊張しているのかもしれないが、想いはしっかり伝えよう。
「俺はヤチの事を何でも出来るすごい人だと思ってた、そんな人に褒めてもらえるのがとても嬉しかった。そして一緒に暮らし始めてから、どんどんありのままの自分を見せてくれるようになって、新しい魅力を次々と知る事が出来た。俺が初めて魔法回路を作った時、大切な人を救いたいという想いがあったから成功したんだ。
まだまだ俺は未熟かもしれないけど、ずっと一緒に歩んでいきたい、愛してるよヤチ、結婚しよう」
「私はあなたのそばに居るだけで変われます。あなたと出会って、様々な種族と交流できて、そして家族にしてくれました。ダンジョンで助けを待っている時、真っ先に思い浮かんだのがあなたの顔と声でした。一緒に暮らすようになってからは、ずっと隣で笑いかけて欲しい、そう思うようになりました。
あなたと出会えたのが私の幸せです、これからもあなたと一緒に生きていきたい」
少し泣きそうな笑顔を浮かべて、左手を俺に差し出してくれたので、そこに指輪をはめてあげた。
▽▼▽
シロの前にしゃがんで目線を合わせる、狼と人間は結婚できないけど、気持ちだけはちゃんと伝えたい。
「シロが俺の事をとても大切に思ってくれているのはわかっている、最優先で言うことを聞いてくれたり、いつも近くに居て守ってくれようとしてありがとう。これからも大事な家族として、頼れる相棒として、そして愛しい伴侶として一緒に居て欲しい」
「わぅっ! わうわうん!」
尻尾を振りながら俺に飛びついて、全身で喜ぶシロの頭と首を撫でてあげる。指輪は贈れないが、衣料品を作ってる人にお願いして、白い布ベルトを作ってもらった。バックルに付いている俺の使っていた黒いベルトを外し、そこに白いもの取り付ける。
冒険者活動をする時以外も、シロはベルトを咥えて持ってきては装着をねだってくるので、こうして目立たない色にしてみたが、とても良く馴染んで本人も嬉しそうにしている。
▽▼▽
メイニアさんの前に立つと少し驚いた顔をされたが、もうこの人も大切な家族で俺の大好きな女性だ、それをちゃんと伝えよう。
「メイニアさんの生きていく時間からすれば、俺の存在なんてほんの一瞬かもしれません。それでも俺は、あなたと一緒に生きていきたい。そして、俺はあなたの子供を一緒に育てたい。
俺はメイニアさんが好きです、結婚して卵を産んで下さい」
「竜族は異性への恋愛感情というものを知らないんだけど、君に対してこれまで感じた事の無い気持ちが私の中に芽生えていたんだ。今までこれがどんな感情なのか想像しか出来なかったんだけど、君に告白されてやっと実感できたよ。
私も君の事が好きだ、次に卵を産める周期が来たら君の為に子供を作ると約束するよ」
俺に一歩近づいてきたメイニアさんの左手を取って、そこに指輪をはめてあげる。
▽▼▽
最後はストレアさんにもお願いして、俺の目の前に浮かんでもらう。
「夢の中で出会って俺の頭を撫でてくれた時に、すごく安心して落ち着けるあなたの中に、母親のような暖かさを感じました。でも、あなたが人の姿になって俺の前に現れてくれてから、その気持がどんどん愛おしものに変わっていきました。
ストレアさんの事が好きです、そして俺の左手の薬指はあなたのものです、ずっとこの場所に居て下さい」
「私はただ世界の記憶として、流れてくる情報を眺めるだけの存在でしたが、あなたに興味を持ち自分でも驚くほど物事の捉え方が変わりました。それほどの影響を与えてくれる人には、この世界で二度と会うことは叶わないでしょう。それに私もあなたのなでなでが大好きなんです、ずっとその左手の薬指を私の居場所にさせて下さい」
嬉しそうに俺の肩に戻って体を擦り寄せてくれるストレアさんの温もりを感じながら、左手にはまった指輪をそっと撫でた。
◇◆◇
こうして様々な種族から慕われ、その大切な者たちを妻にし、世界にまで愛された男の物語がここから始まる。
~ 回路魔法 Fin ~
―――――・―――――・―――――
朝宮大の歩んできた軌跡
●王歴2047年
・土の月の赤 異世界に飛ばされきてアイナと出会う
・闇の月の赤 勇者と聖女が数日かけて様々な世界から召喚される
・闇の月の赤 イーシャと出会う
●王歴2048年
・光の月の青 王都で勇者召喚されたと噂を聞く
・水の月の青 王都に向けて出発
・水の月の赤 王都に到着
・1泊目 王都に着いた晩
・2泊目 王都散策した日
・3泊目 王都ギルドで初依頼
・4泊目 スタンピード発生
・5泊目 勇者たちとお茶会
・水の月の赤 麻衣がパーティー加入
・水の月の緑 ウミと森で出会う
・風の月の赤 王都出発
・4日目 魔族界の鳥に驚いて生息場所から逃げてきたワイバーンと戦闘
・5日目 ロイとリンダと共に移動開始
・8日目 セカンダーの街到着
・風の月の緑 アーキンド到着
・風の月の緑 海岸で倒れていたエリナを発見し保護
・火の月の青 アーキンドを出発
・火の月の青 怪我をしたノーム族のルーイと出会う
・土の月の赤 サードウを出発
・土の月の緑 魔族襲来、オーフェと出会う
・土の月の青 ヴェルンダー到着
・闇の月の赤 ミスリル武器の完成
・闇の月の青 教授たちの依頼を受ける
●王歴2049年
・光の月の緑 ヴェルンダー出発
・光の月の緑 瀕死の状態で谷底に倒れていたシロを保護
・光の月の青 王都到着
・光の月の青 荒れ果てた家の地下倉庫でカヤを発見
・水の月の赤 アーキンドへ馬車の旅開始
・水の月の緑 王都で学会があり教授たちと再会
・風の月の赤 エルフの里へ出発
・風の月の緑 イーシャの祖父の快気祝い
・風の月の緑 フォーウスの街へ出発
・風の月の青 フォーウスの街に到着、黒髪の女性と遭遇
・火の月の赤 黒竜の子供、キリエ誕生
・火の月の緑 キリエが人化スキルを身につける
・火の月の青 新しく発見されたダンジョンに出発
・火の月の青 狐人族の村で魔族退治
・土の月の赤 ダンジョン調査開始
・土の月の青 新階層発見
・闇の月の赤 地脈を開放して古竜族のメイニアと出会う
・闇の月の緑 ダンジョン調査終了
・闇の月の青 五輪の煌めきとダンジョン内で遭遇
・闇の月の青 冷蔵の道具と結びの宝珠発見
●王歴2050年
・光の月の赤 魔族界へ行きクレアを助け、引き取る
・光の月の青 ダイが原因不明の状態異常で倒れる
・光の月の青 ファースタへの家族旅行中にロイやリンダと再会
・光の月の青 ファースタの街到着
・光の月の青 アーキンドにあるロイの別荘を譲り受ける
・光の月の青 リザードマンの集落に到着、水質調査開始
・光の月の青 水源でルーイと再会し、採掘を手伝う
・水の月の赤 水質汚染の終結
・水の月の赤 遺跡調査開始
・水の月の緑 地下シェルター発見
・水の月の緑 ストレア顕現
・水の月の緑 王都近郊のダンジョンで実験中に魔物の異常発生事故
・水の月の緑 ユリーとヤチの引っ越し
・火の月の青 アイナに告白
いわゆる全員エンドとかハーレムエンドというやつですね(笑)
個人的には「結婚して卵を産んで下さい」が、最大の名台詞です(ぇー
年表にはワイバーンが何故あんな場所に出現したのかという理由が、しれっと書いてあります。
物語を書き進めながら年表も作っていたんですが、間違いがあるかもしれません。