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回路魔法  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第2章 新たな出会い編
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第15話 イーシャ先生の魔法講座

とうとう主人公のチート能力が発覚します

 今日は3人で魔物を狩りつつ、イーシャに魔法のことを色々と教えてもらうことにした。特に依頼は受けずに魔核を集めるだけなので、じっくりと腰を据えて教わることが出来る。



「ダイは他の世界から来たってことだから、魔法のことは全然知らなかったのよね?」



 イーシャがそう言ってきたので肯定する。なにせ一番最初に魔法を使ったのは、魔物が近づいてきたので必死に杖を振り回したら、偶然発動したようなものだからな。


 アイナも魔法のことはあまり詳しくないようなので、一緒に勉強する気満々みたいだ。



「魔法はこの世界に満ちているマナを、人の体を介して魔法回路に送り込んで発動する仕組みなの」



◇◆◇



 空気のように存在しているマナは、そのままでは魔法回路を起動するのに利用できない、そこで人の体を通すことでリアルタイムに変換して魔法回路を動かすのがこの世界の魔法らしい。いわゆるMPと呼ばれるような容量の大小がない代わりに、マナ耐性とマナ変換速度というパラメーターが存在する。


 アイナも以前言っていたが、マナ耐性で耐えられる量以上のマナを変換しようとするとマナ酔いを起こして、頭痛・めまい・吐き気などの症状が出て、最悪気絶してしまう。マナ耐性は人によって個人差があり、人族はかなりの振れ幅があるようだ、獣人族は総じて低くエルフ族は高いという、種族によっても特性が存在する。


 マナ変換速度はそのままの意味で、これが速いと魔法が速く発動できる。電流が多いとか電圧が高いみたいなものか、あるいはベースクロックが高くて、魔法回路がより速く動くみたいな違いに思えた。



◇◆◇



 イーシャの話をまとめると、大体こんな感じだ。そして疑問に思うことが出てきた、以前リザードマンの長老が言っていた魔法が使えない種族という言葉だ。確かに人間とは大きく違う姿をしているが、魔法が使えたり使えなかったりする差はどこで生まれるんだろう。



「以前リザードマンが魔法の使えない種族って聞いたんだけど、あれはどういう事なんだ?」


「恐らく魔法回路を起動できるマナに変換できないんだと思うわ、魔法回路に関しては解らないことが多くて、研究もあまり進んでいないの。どうして生まれたのかは謎のままだし、回路自体も古代の遺跡やダンジョンで発見されるか古文書に記載されてる程度で、それを元にして試行錯誤しながら使っているのが現状ね」



 魔法回路屋でブロック状に別れたパーツを売っていたが、あれは判っている機能ごとに切り出して繋げて使えるようにしたものらしい。中身はブラックボックス部分が多いようだ。確かに電子部品でも動き方はわかるが、中身までは理解してないものも多いな。特にCPUなんかの半導体部品は完全なブラックボックスだ。



「一つ面白い使い方を教えてあげるわ、これはコツを掴めば誰でも出来るんだけど、魔法を発動せずに魔法回路だけ起動することが出来るの」


「それ何か役に立つのか?」


「魔法回路を刻んだものって、多少手荒に扱っても大丈夫なんだけど、傷がついたり欠けた場所が悪いと回路がだめになって発動しなくなったりするのよ。実際に魔法を撃つ前にチェックできるから、覚えておいても損はないと思うわ」



 ひと通りマナと魔法回路のことを説明し終えたイーシャは、そう言いながら自分の杖を手にして魔法回路を起動した。



「どう? 魔法回路が動いてるのがわかるかしら」



 イーシャの言ったとおり、魔法は発動しないけど回路は起動してるようで、杖の表面に幾何学模様の線が浮かび上がった。



「あぁ、幾何学模様の線が見えるな」



 そう言うとイーシャは不思議そうな顔をして俺の顔を見てきた。



「もしかしてダイには刻まれた魔法回路がそのまま見えてるのかしら。

 アイナちゃんはどう?」


「私には杖の表面がぼんやり光ってるようにしか見えませんね」


「そうよね、私にもそう見えるわ。他の人も同じだと思うし、もしかしたらダイの特殊な能力なのかもしれないわ」



 2人でそんな話をしているが、俺には気になったことがある。今までは攻撃する相手を見ながら振って発動してたので気づかなかったが、よく見ると魔法回路はすべての部分が光っているわけではない。特にまだら模様になっている場所は、位置的に充填部分だろうか。直線の魔法回路を組む時は、充填・構築・発動の回路を直列に並べていて、他の部分とは異なる形のインターフェースブロックで区切られているので間違っていないはずだ。もしかすると光ってない部分は、動作していないか効果を発揮していない回路で、そこにマナを流すことによる無駄や単なる抵抗として、流れを邪魔する存在になっているんじゃないだろうか。



「イーシャ、回路を起動してるだけの状態って、体に負担はかからないか?」


「えぇ発動しなかれば、あまり負担にならないわよ」


「じゃぁちょっと良く見せてもらってもいいか?」



 そう言うとイーシャは俺の隣に座って、杖をよく見えるように差し出してくれた。今までは幾何学模様かと思っていたが、じっくり見ると一定のパターンがあるみたいで、微妙に形が違うだけとか長さが違うだけのように見える部分も多い。フォントを変えて同じ文字を表示している感じだろうか、規則性は確かにあるみたいだ。



「うん、やっぱり回路の中に光ってない部分がいくつもあるな。これ配線を追いながら光らない部分を迂回しても問題ないんじゃないだろうか」


「あら、そんな事までわかるのね」


「そうだな、例えばこの部分のパターンをカットしてジャンパー配線したら……」



 喋りながら魔法回路を指さして説明していると、杖の表面に浮かんでいた回路が俺の思った通りにパターンカットされて、不要部分を飛ばすようなバイパスができてしまった。



「あれ!? ごめんイーシャ、魔法回路が加工ができてしまった」


「え!? どう言うこと?」


「いま、回路の光ってない部分の接続を切って、光ってる部分同士を結ぶとどうなるんだろって考えながら回路に触ったら、その通りに繋がってしまった」


「刻まれた魔法回路が修正できたってことなのね?」


「あぁ、そういう事になるな。すまないけどその状態で一度、魔法を発動してくれないか?」



 イーシャは少し離れた大きな岩に向かって魔法を撃ったが、問題なく発動できた。イーシャの武器を使えなくしてしまわなくて良かったと、ほっと胸をなでおろす。やはり光らない部分は動いていない回路のようで、そこを迂回するだけなら、動作に影響しないのかもしれない。



「ちゃんと使えるわね」


「あぁ、使えたな」


「ねぇダイ、さっき言ってた動いてない部分ってのを無くしていくと、どんな効果があるか予想は出来てる?」



 そう言われたので、さっき考えていたことを説明する。



「この水の矢の杖で、それを試してみてくれないかしら」


「いいのか?」


「これはどこでも作れる魔法回路だし、今のところ回路を起動状態にできるのは私だけだから、これでやってみて欲しいの」



 イーシャの好奇心を刺激してしまったのか、自分の杖を実験台に提供してくれるみたいだ。



「じゃぁ、一番動いてない部分が多い充填の所を加工してみるよ」



 そう言って回路を追いながら、動いてない部分にマナが流れないようにカットして、バイパスを作っていく作業を開始した。細かい作業になるが、加工したい部分に指を当てて、どこをどうしたいか考えるだけで思い通りに変更されていくので、ポカミスさえしてなければ動作に影響はないはず。



「出来たから試してもらえるか?」



 イーシャは杖を構えて岩に向かって何度か魔法を発動させた。魔法を撃つたびに少し考え込んだり確認をしている。



「どうだ、違和感ないか?」


「えぇ、これ魔法の発動が速くなってるわよ。何度も使ってる魔法だから間違いないわ。それにマナの流れも少なくなってるわね。いつもよりマナの流れる感覚が薄いもの」


「俺も試してみていいか?」



 イーシャから杖を受け取って振ってみたが、何故か魔法が発動しなかった。イーシャが使うと発動する、試しにアイナにも使ってもらったが発動しなかった。回路自体は正常に動作しているが、使える人がイーシャだけになってしまった、その事で俺は一つの仮説を立てる。ヒントはリザードマンが魔法回路を起動できるマナに変換できないって話だ。恐らく変換されたマナには波長や波形のような個人差があって、その差を吸収するため一定のレンジごとに動く回路を並べて構築して、誰でも使えるような汎用性をもたせてるのだろう。


 つまり俺がイーシャの杖に行った加工は、魔法回路を起動する人だけに使える部分のみを残した、個人専用の回路にしてしまったということだ。そのかわり無駄や抵抗が減って、発動時間の短縮や流れるマナの減少というメリットが発生した。



「これは凄いことよ、ダイ」


「もしかして私も魔法がたくさん使えるようになったりするんでしょうか?」



 俺の仮説を説明すると、イーシャとアイナも期待を込めた目で俺のことを見ている。たしかに最適化を突き進めていけば、これまでにない効率や燃費で魔法が使えるようなるのは間違いない。汎用性が失われるというデメリットはあるが、装備品や道具を複数人で使い回すことさえしなければ問題ない。俺も回路の起動だけができるようになって色々試してみたい。


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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

新しく連載も始めています

いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
強化チートを使いながら気ままに旅する物語
色彩魔法

【完結作】
突然異世界に来てしまった主人公が
魔操という技術に触れ世界に革新をもたらすスローライフ
魔操言語マイスター
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