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回路魔法  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第11章 回路魔法編
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第154話 洞窟

 エルフの里で水を補充し終え、リザードマンの住処(すみか)に戻ってきた。みんなは水を配ったり必要な物を用意したり、麻衣とアイナは回復した人から料理の情報を聞いて、こちらから持ってきた材料で同じ物が作れるか検討している。



「長老様、ただいま戻りました」


「転移魔法というのは凄いものなんですな、ダイ殿」


「ボクの覚えられる所ならどこでも行けるから、行きたい場所があったら教えてね」


「それから、俺たちの家族を紹介します。こちらが家の妖精のカヤで、使い慣れない材料で料理する時に、手助けしてもらおうと思います」


「始めまして長老様、家の妖精のカヤと申します。元は1軒の家を維持するだけだったのですが、旦那様の所有する物件なら全て管理できる存在に変わり、現在は王都とアーキンドにある2軒の土地と建物を保守しております」


「こちらはオーフェリアと同じ魔族のクレアです。彼女には植物や動物の気持ちを感じることが出来る固有魔法があるので、湖の周囲に生息している草木の汚染状況を調べてもらいました」


「始めまして、魔族のクレアです。この近くに生えている草や木は、ウミさんの精霊魔法できれいになったと喜んでました。でも汚れた水はまだここに流れてきているので、しばらくは近くに生えている物を口にしないようにして下さい」


「転移魔法や自然の声が聞こえる力、それに妖精や守護精霊に竜族様まで、ここを2人だけで去っていったダイ殿が、こうして我らを救いに来てくださるとは、いまだに信じられん気持ちじゃよ」


「俺とアイナ、そしてイーシャに手を差し伸べてくれたから、こうして助けになる事が出来て俺は嬉しいです」



 その後、カヤとクレアは麻衣たちの所に料理の手伝いに行き、俺は明日から上流に向かって汚染原因の調査に出掛ける事を伝えてから、長老の部屋を退出した。


 そしてキリエのいる場所に行くと、リザードマンの子供たちと何か話をしているみたいだった。リザードマンは体の成長が早く、5歳位でもう大人と変わらない体格になるらしいので、かなり年齢の低い子なんだろう。だから出会った当初に、リクやカイが俺より年下なのを聞いて驚いた。



「ただいま、キリエ」


「おとーさん、おかえりなさい、もうお話はすんだの?」


「あぁ、明日からここの水が汚れた原因を調べに行くことになったよ」


「キリエもがんばる!」



 キリエはこちらの方に駆け寄ってきて抱きついてくる、その頭を撫でてあげているとリザードマンの子供が近づいてきた。



「だれ?」


「この人がさっき話したおとーさんだよ、抱っことなでなでがとっても気持ちいいの」


「やって」



 リザードマンの子供が手を広げておねだりしてきたので抱き上げてみたが、尻尾で器用にバランスを取って俺に掴まっているので、片方の手で頭をゆっくり撫でてあげる。髪の毛が無いのでいつもと違う感触だが、体調もだいぶ回復してきたのか肌の艶も良くなっていて、ツルッとした触り心地がとても新鮮だ。



「くすぐったかったりしないか?」


「きもちいい、もっと」



 目を閉じてなでなでを堪能してくれているみたいなので、そのまま撫で続けていると他の子達も近くに寄ってきた。



「だっこ」


「なでなで」


「わかった順番にやろうか、そこの毛布の上に座ってしてあげるから、みんな行こう」



 いま抱き上げている子より大きな子もいるので、毛布の上に座ってやることにした。抱いていた子を一旦おろして、手をつなぎながら毛布まで移動し、その上に胡座(あぐら)をかいて座る。



「小さい子からやってあげるけど誰からにする?」


「わたし、一番」


「じゃぁ、膝の上に座ってもらえるかな」



 喋り方と服の感じから女の子だろう、顔つきも柔らかくて丸みを帯びた姿をしている。その子が膝の上に横向きに座ってくれたので、その頭を優しく撫でる。獣人より太い尻尾があるから、座る向きもちゃんと考えてくれてるみたいだ。



「どうだ? 気持ちいいかな」


「うん、これ、好き」



 その子は俺の服を掴んで、しがみつくように体を預けてくれた。力が抜けてきているのか、尻尾も毛布の上にベッタリと垂れ下がっている。


 そうして順番になでなでを続けていたが、やはり眠ってしまう子が続出し、俺の周りの密度が上がってきた。キリエが毛布をかけていってくれているが、どの子も気持ちよさそうに寝息を立てている。今まで体調不良で辛かっただろうから、このままゆっくりと眠ってもらうのが良いだろう。



「ダイ、そろそろ私たちもご飯にしましょう……って、相変わらず凄いわね」


「ダイくん、なでなでしてあげたのです?」


「うん、おとーさんが撫でてあげたら、みんな寝ちゃった」


「体の調子もだいぶ回復してるみたいだから、このまま寝かせてあげたいし、誰か呼んできてもらえるか」



 そうしてリザードマンの女性に子供の様子を見てもらうことにして、俺たちは食事に向かう。もちろん子供たちが、俺にもたれかかったり周りに固まって寝ている姿を見て、かなり驚かれてしまったが。




―――――・―――――・―――――




 翌朝、長老の部屋にみんな集まって、水質汚染の調査に出掛ける報告をする。リクやカイに他のリザードマンの男性、それから子供たちも集まってくれた。



「では長老様、水が汚れた原因の調査に行ってきます」


「すまんなダイ殿、本当なら我々で行かねばならんのだが」


「体調が回復したといっても、今の状態で遠征は無理ですから、今回は俺たちに任せて下さい」


「ダイ、ありがとう、気をつけて、行ってこい」


「ダイ、すまない、よろしく頼む」


「はやく、帰ってきて」


「だっこ、して」


「なでなで」



 リクとカイがそれぞれ言葉をかけてくれた後に、子供たちが寄ってきて挨拶やおねだりをしてくる。小さな子を抱き上げたりなでなでをして、なるべく早く帰れるようにすると約束をした。



「アイナさんと2人で来た時も、帰る頃にはすっかり懐かれておったが、我らの子供までこうなってしまうとは、ダイ殿はやはり凄いですな」


「ご主人様になでなでされたら、誰でもこうなってしまいますよ」


「……あるじ様のなでなでは、どんな種族も(とりこ)にする」



 アイナとエリナも、俺に群がってくる子供たちを嬉しそうな顔で見ている。そうして別れの挨拶を済ませていき、いよいよ出発することにした。



「それじゃぁ、カヤ、クレア、すまないけど後は頼むな」


「お任せ下さい、旦那様」


「気を付けて行ってきてね、お兄ちゃん」



 何の影響で水が汚れてしまったのかわからないが、とにかくその原因を突き止めて何とかしてあげたい。ヨークさんもいつでも相談にのると言ってくれたし、よほど難しい状況でもない限り解決できると思う。



◇◆◇



 湖に流れ込んでいる小さな川を上流に向かって辿っていっているが、今のところ汚染の原因となるものは見つかっていない。ウミは移動しながら、汚染された場所や草木を浄化していってくれている。流れてくる水を何とかしないと一時凌ぎにしかならないが、数日で原因が取り除ければ、元のきれいな状態のまま生きていけるみたいだ。



「山が近づいてきたけど、水はあそこから流れてきてるみたいだな」


「水はずっと汚れたままなのです、はやく原因が見つかってほしいのです」


「だいぶ水源に近づいてきたって事でしょうか」


「そうね、あの山のどこかに原因があると思うわ」


「早く行って水をきれいにしてあげよう、ダイ兄さん」


「そうだな、急ごうか」



 原因の特定に繋がりそうな場所が見えてきて、俺たちは少し速いペースで上流へと向かっていった。そうしてしばらく進むと大きな洞窟があり、水はその中から流れてきているみたいだ。



「わんっ!」


「シロどうかしたのか?」



 シロが俺たちの前に出て行く手を阻むように吠えたので、みんなで立ち止まる。アイナが洞窟の入口近くまで行って、じっと気配を探って耳を澄ませている。



「ご主人様、この奥に誰かいるみたいです」


「魔物とかではないんだな?」


「はい、かすかに音も聞こえるので、何かやってるんじゃないかと思うんですが……」



 その言葉にみんなは難しい顔をする、こんな人里離れた森の奥にある山で一体何をしているのか、そもそも中にいるのは人なんだろうか。魔物ではないとアイナは言っているが、シロも警戒しているし慎重に調べたほうが良いだろう。



「こんな場所で何をしているのかわからないが、原因がこの先にある以上進むしかないか」


「ダイ先輩、もしかしてこの奥にいる人が汚染の原因を作ってるんじゃ」


「……誰もいないからって、好き勝手する人は許さない」


「悪いことしてたら、ちゃんと謝ってもらおうね、おとーさん」


「そうだね、他の人に迷惑をかけるのは良くないね」



 みんな人為的な原因だったら見過ごせないと、洞窟の奥の方をじっと見ている。こんな場所なので、誰かに迷惑をかけようと意図してやっている訳ではないと思うが、その結果苦しんでいる人が居る以上、俺も見逃せない。



「みんな何があるかわからないが奥に行ってみよう」



 ウミが作ってくれた青白い火の精霊魔法の球体を光源にして洞窟の中を進んでいく、ちょうど硬い岩盤の層があったのか、多少ゴツゴツしているが歩ける程度の通路が存在したのは幸いだ。


 ある程度進むと俺たちの耳にも、何かの物音が聞こえてきた。重たいものを動かすような音と、何かを叩くような音がする方向に近づいていくと、奥のほうかにうっすらと明るい場所があるのが確認できる。



「……あるじ様、誰かいる」


「どんな人だ?」


「……とても小さい人、たぶん会った事がある」



 夜目の効くエリナが光の届いていない端の方に居る誰かを視認して、俺にそう教えてくれた。小さくてこんな山の中にいて、エリナも会ったことがある人といえば、サードウの街に行く途中に出会ったノーム族の男性か。



「確かルーイさんだったな」


「土の下級精霊が近くに集まっているので、間違いないのです」


「ここで何をしているのかしら」


「あの人が誰かに迷惑をかけようとする事はないだろうし、直接聞いてみるのが早いな」



 サードウの街に行く途中に立ち寄った村で幽霊騒ぎがあって、その原因が山でミスリル鉱石の採掘中に怪我をして動けなくなったルーイさんが使役していた、精霊魔法で動く土人形だった。その人の怪我を治療してお礼にもらったミスリル鉱石のおかげで、アイナとエリナそれにオーフェの武器を作ることが出来た。


 その人は各地を転々としながら採掘をするのが好きな変わり者だが、水を汚したりしてまで何かをするような人には見えなかった。とにかくここで何をしているのか聞くために、みんなでルーイさんのもとに近づいていった。


資料集のリザードマンの項目を大幅に変更しました。

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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

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いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
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【完結作】
突然異世界に来てしまった主人公が
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