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回路魔法  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第11章 回路魔法編
154/176

第152話 リザードマンの住処

誤字報告ありがとうございます。

校正で逆に誤字を増やすという(あるあるw

 翌朝、ファースタの街を経由して、中央大森林にある遺跡を目指す冒険に出る。一度リザードマンの住んでいる場所に行って、そこをオーフェに覚えてもらい、遺跡のある場所まで向かう予定だ。


 以前は森の中を走って移動したので、半日程度で街まで出ることが出来たが、さすがにこの人数でその移動法は無理なので、一泊二日の行程で向かう事にしている。



「それじゃぁ、カヤ、クレア、行ってくるよ」


「行ってらっしゃいませ、旦那様、皆様」


「行ってらっしゃい、お兄ちゃん、みんな」



 みんながそれぞれ挨拶をして、オーフェの開いてくれた転移の門をくぐる。ファースタの街を出て丘の上にある森の端に向かって歩くと、どんどん高い場所から街を見下ろせるようになってきて、この街を初めて見た時の事が思い出される。



「ここから初めて街を見た時はアイナと2人だけだったけど、こうして家族も増えて全員で見てみると、ずいぶん印象も変わるな」


「あの時は不安のほうが大きかったですけど、今だと楽しさと懐かしさしか無いですね」


「おとーさんはどんな気持ち?」


「そうだなぁ、今は感謝の気持ちが一番大きいかな」


「……やっぱり感謝してるのはアイナ?」


「ちがうよエリナ、家族全員に感謝してる。きっと誰か一人欠けるだけでも、俺はここに再び立つ事は無かったと思う。だからここに居るみんなにも、家で待ってる2人にも、出会った人すべてに感謝してるよ」



 少し感傷的になってしまったが、ここに立っていると本当にそう思う。



 アイナに出会ってなかったら、俺は異世界転移した場所からあてもなく歩き、夜になって魔物に襲われていたかもしれない。


 リザードマンに出会わなければ、イーシャにも会えなかった。


 イーシャが居なければ王都で魔物の暴走(スタンピード)に遭遇した時に、精霊魔法を見た輝樹さんが俺の前に姿を表すことはなかった。


 輝樹さんに出会えなければ、麻衣もここに居ないだろう。


 麻衣が居なければウミも仲間になっていない。


 ロイさんたちと出会えたから、エリナが仲間になって王都に家を買うことが出来た。


 ウミが居たからカヤを見つけられた。


 アイナが居なければシロに気づくことはなかった。


 オーフェが居なかったらヨークさんを助けられなかった。


 ヨークさんにフォーウスの事を聞いたから、キリエを託されてた。


 シロが居たから狐人(こじん)族の村を救う事ができた。


 狐人族に出会えたから古代の道具の発動方法や仕組みに触れ、スキルの成長もできた。


 教授たちの依頼を受けキリエが居たからメイニアさんと出会い、クレアを魔族界から連れ出せた。



 全てが繋がっているから、今の俺がある。今まで出会ってきた人への感謝の気持ちは忘れずに、これからの縁も大切にしよう。



「あまり昔の事ばかり思い出しても仕方がないし、折角こんなにいいパーティーになったんだから、新しい発見や出会いを求めて先に進もう」



 俺の言葉にみんなが(うなず)いて、森の中へと進んでいった。




―――――・―――――・―――――




 普通の冒険者だと半日もしないうちに迷ってしまう、目印や特徴のない森の中をイーシャの能力で正確に進んでいく。精霊弓(せいれいきゅう)の扱いにもすっかり慣れて、森の中ではその威力を遺憾なく発揮している。ウミが守護精霊になって、俺の周りにも下級精霊が集まるようになったからか、弓の威力も上がったと言っていた。



「かなりリザードマンの住んでいる場所に近づいてきたと思うのだけど、彼らの姿を見ないわね」


「寒い時期はあまり外に出ないとかあるのかな」


「……私と同じ」



 今年は大陸中央部に居たからそうでもなかったけど、北部のヴェルンダーで年越しした時は、寒がって俺にくっついている事が多かったな。



「森の様子が少しおかしい気がするのです」


「精霊たちが騒いでいるとか?」


「逆なのです、みんな元気が無いのです」


「ウミちゃん、それって自然環境に何か悪い影響が出てるってことですか?」


「たぶんそうなのです、マイちゃん」


「イーシャおかーさんは何かわからない?」


「確かにこの辺りの森は静かすぎるけれど、何があったのか具体的な事はまだわからないわね」


「とにかく人影がないのは、森に何かあったのが原因かもしれないし、急いで住処(すみか)に向かってみよう」



 全員が移動速度を上げてリザードマンが住んでいる場所に向かうが、人影はまったくなく不安が大きくなる。森が開けて見覚えのある湖が見えてきた所で、ウミが俺の頭から離れてそちらに飛んでいく。



「下級精霊がウミやダイくんの所に避難してきてるのです、話を聞いてくるのです」


「わかった、俺たちは洞窟の方に行ってみる」



 見た感じだと草木が枯れていたり、湖が汚れていたりという変化はない。しかし洞窟の近くにも人影は見あたらず、以前と違って明らかに活気がない。


 洞窟の入口に近づくと、誰かが壁に背中を預けて座り込んでいる、尻尾の先が少し欠けているので恐らくカイだ。



「カイさん、大丈夫ですか!?」


「……お前、ダイ、どうして、ここに」


「俺たちはこの近くにある遺跡に用があって来たんですが、カイさんは一体どうしたんですか」


「みんな、数日前から、病気、子供から、倒れた、長老も、動けない」


「どんな症状が出てますか」


「力、入らない、手と足、震える、武器、持てない」



 そう言ったカイの手足をよく見ると、小刻みに震えていて緑色のツルッとした肌もシワが出来ているし、色も以前よりくすんでいるように感じる。



「みんな、どんな病気だと思う?」


「わかりませんが、状態異常を治すポーションを飲ませてみるのはだめでしょうか」


「ポーションなら彼らが飲んでも悪い影響は出ないから、まずはそれを試してみるしか無いわね」


「この症状は病気というより、体に悪い物が入ってしまった感じだから、私もそれが良いと思うよ」


「わかりました。カイさん、状態異常を治すポーションがあるから飲んで下さい」


「ダイ、すまない」



 カイの口元にポーションの瓶を近づけると、それをゆっくりと飲み始めた。効果が現れるまでにしばらく時間がかかるけど、これで効いてくれると良いんだが。



「しばらくすると効果が出てくると思いますから、このまま動かないで下さい」


「オレは、もういい、長老、たのむ」


「はい、長老様の様子も見てきます」



 カイの体を壁にもたれかけさせて、洞窟の中を奥に向かってみんなで歩く。所々にある部屋の中を少し覗くと、みんなぐったりとして横になっていた。



「おとーさん、リザードマンのおにーちゃんは大丈夫?」


「わからないけど、長老様に話をしてから全員にポーションを飲ませてみよう」


「この場所は覚えたから、ポーションを買い足す時は王都まで行くからね」


「ありがとうオーフェ、その時は頼むよ」



 洞窟の一番奥にある広くなった部屋に入ると、そこにはリザードマンの長老が、少し高くなった床に横になっていた。



「長老様、ご無沙汰してます」


「お主はダイ殿……懐かしいな」


「病気の事はカイさんから聞きました、状態異常を治すポーションがあるので、これを飲んでもらっても良いですか」


「わしは良いから、子供たちに飲ませてやってはもらえんか」


「数は十分持っていますし、足りなければすぐ買いに行けるので、長老様も飲んで下さい」


「すまんな、恩に着るよダイ殿」



 力の入らない長老の体を支えて、ポーションをゆっくりと飲んでもらう。その体を床に寝かせたところで、ウミが部屋の中に入ってきた。



「ウミ、何かわかったか?」


「ここにある湖の水が汚れているみたいなのです」


「……さっき見た時は変な色してなかった」


「色は変わらないのです、でも何か変なものが入ってるのです」


「それで精霊たちが元気なかったのか」


「みんな一生懸命綺麗にしてくれようとしてるのですけど、どんどん汚れた水が流れ込んでくるみたいなのです」


「それでわしらの体が、おかしくなってしまったのか」


「ダイ先輩、これはその水の影響で間違いないでしょうね」


「だとすると、その原因を突き止めて、流れ込んでくる水を綺麗にしてやらないとダメだな」



 この湖に流れ込んでくる水を上流にたどっていって、原因を特定しないといけないが、今からだと時間が足りない。まずは全員にポーションを飲ませて、俺たちの持っているきれいな水を使ってもらうのが良いだろう。



「みんな、まずは状態異常を治すポーションを全員に飲ませよう」


「その後ウミがこの辺りを一度きれいにするのです、体や部屋の中や空気もきれいにするで、それをみんなに伝えて欲しいのです」


「すまんなダイ殿」


「あなた方は俺やアイナ、そしてイーシャの命の恩人なんです。俺の仲間で大切な家族のためにしてくれた事を思えば、これくらい大したことではありませんよ」


「こうして見ると、本当にいい仲間に巡り会えたんじゃな」



 長老は力の入らない体で、俺の方を見てお礼を言ってくれる。精霊のカバンや空間収納から、ありったけのポーションを取り出して、それぞれ分かれて飲ませていく。



「リクさん、大丈夫ですか?」


「ダイ、どうして、ここに、居る」


「俺たちはこの近くにある遺跡の調査に来たんですが、その途中でここに寄ったらみんなが体調を悪くしていたので、状態異常を治すポーションが効くかもしれないと思って持ってきました」


「そうか、ありがとう、それに、会えて、嬉しい」


「はい俺もです、まずはこれを飲んでみて下さい」


「リザードマンのおにーちゃん、はやく良くなってね」



 リクの大きな体を俺が全力で持ち上げて支え、その口にキリエがポーションを少しずつ飲ませていく。身長が2メートルを越える体格なのでかなり重たいが、俺も男だここは頑張ろう。



「ありがとう、ダイ、それに、とても、かわいい、子供だ」


「おとーさんの子供でキリエといいます、よろしくお願いします」


「オレは、リク、よろしく」


「後でウミおかーさんが体やお部屋をきれいにしてくれるから、このまま寝ててね」


「ダイ、よくわからない、オレ、寝てれば、いいのか」


「みんなの体調が悪くなった原因が、ここに流れてくる水みたいなんです。俺の仲間が一度ここを全部きれいにして、その原因を一時的に取り除こうと思っています。それから、ひとまずは外から持ってきた水と食料で生活してもらい、水が汚れた原因を突き止めたいんです」


「わかった、お前には、助けてもらって、ばかりだ」


「そんな事はないですよ、俺はリクさんやカイさん、それに別の部族のクウさん、そして長老様には返しきれない恩がありますから」



 俺とキリエを見ておじぎをするように頭を動かして、感謝の言葉を伝えてくれたリクの部屋を出て、他の人たちに薬を飲ませていった。


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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

新しく連載も始めています

いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
強化チートを使いながら気ままに旅する物語
色彩魔法

【完結作】
突然異世界に来てしまった主人公が
魔操という技術に触れ世界に革新をもたらすスローライフ
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