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回路魔法  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第11章 回路魔法編
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第144話 守護精霊

「なぁ、ウミ」


「なんです、ダイくん」


「その場所じゃないと駄目なのか?」


「ここがウミの居場所なのです、ここに居るのが当たり前なのです」


「ウミが納得してるのならいいんだけど、掴まりにくくないか?」


「そんな事ないのです、今の体でもぴったりなのですよ」



 朝食を食べてからウミの服を買うために雑貨屋に全員で向かっているが、彼女は空中に浮いて俺の頭に掴まっている。今までと同じ様に上に乗ろうとしているので、まろやかさんを頭の上に置いて抱きつくような格好になってしまうが、空中に半分浮いてる状態なので重さはあまり感じず、その感触だけが伝わってくる不思議な気分を味わっている。


 それに、さっきからすれ違う人にすごく見られる、ウミは浮いてるからすれ違ってからも二度見される。今までのサイズでも愛らしい顔立ちだったが、大きくなって更に魅力が増して可愛くなった。そんな娘が俺の頭2つ分くらい高い場所に居るので、とにかく目立っている。


 この世界の家についている出入り口や天井は総じて高いから大丈夫だが、日本みたいな家だと(はり)やドア枠に頭をぶつけてしまっていただろう。



「ウミおかーさん、その大きさでも飛べてうらやましいの」


「キリエちゃんは色々な事がすぐ出来るようになる優秀な子なのです、コツを掴めばきっとウミのように飛べると思うですよ」


「うん、頑張ってみる!」



 俺に抱っこされたキリエがガッツポーズをして気合を入れている、メイニアさんは人化の状態で飛べないので、もしかしたら無理なのかもしれないが、キリエはこの状態で体重を軽くする事が出来る、何かきっかけがあれば浮かぶ位の力をつけられる可能性は充分ある。



「家の妖精も飛べるようにならないでしょうか」


「カヤちゃんも飛んでみたいんですか?」


「はい、アイナ様。そうすれば、皆様もう少し速く歩いて移動できると思います」


「……私はあるじ様とゆっくり歩くのが好き」


「俺もゆっくり歩くのは好きだから、速度はあまり気にしなくてもいいと思うけど、カヤも抱っこしようか?」


「いえ、今日は旦那様と手をつないで歩くほうがいいです」



 カヤは俺の手を両手で掴んで少し近寄ってくると、こちらを見上げて嬉しそうに微笑んでくれる。こうした態度を見ても、やはり今までとは異なるものを感じる。これまでは、どちらかと言うと主従関係のほうが大きかったが、今朝からは男女関係の方に比重が傾いた印象だ。別に悪い感じはしないし、今まで以上に慕ってくれるのは嬉しいので、喜ぶべき変化なのは間違いない。



「やっぱりお兄ちゃんが居ると楽しいね」


「ダイ君には、このままずっと健康で居てもらわないとね」


「守護精霊が付いたのじゃ、この先は滅多な事で病気や怪我はせんはずじゃよ」


「もうあんな姿を見るのは嫌だから、ボクとっても嬉しいよ」


「それにダイの周りに下級精霊が集まってくるようになったと言っていたし、私も精霊の声がたくさん聞こえて嬉しいわ」


「下級精霊もお菓子や果物が食べられるなら、いっぱい作っちゃいますけどね」


「その分、大きくなったウミが、たくさん食べるのです」


「俺はウミのそんな所が全く変わってなくて、すごく安心できるよ」



 精霊としての性質が変化しても、甘いものが好きな部分だけは変わらないウミの発言を聞いて、みんなで笑い合う。ヨークさんと手をつないで歩くオーフェとクレア、メイニアさんと並んでいるイーシャと麻衣、キリエを左腕で抱き上げカヤと右手をつないで、ウミは頭の上に掴まって、アイナとエリナは俺の服の(すそ)を掴んで一緒に歩いている。シロもそんなみんなの間を歩いていて、尻尾が揺れて嬉しそうだ。


 全員に心配をかけてしまったけど、こうして回復して本当に良かった。ウミのお陰で怪我や病気になる可能性が減ったとはいえ、これからも十分気をつけて行動しよう。



◇◆◇



 雑貨屋に到着してウミの服を物色する、俺の頭から離れないので今日は一緒に参加した。シロとヨークさんは、お店の外で待っているらしい。



「ダイくん、何色がいいと思うです?」


「ウミはやっぱり青の印象が強いから、その系統が真っ先に思いついてしまうかな」


「ウミちゃんはスカートとズボンどちらがいいのかしら」


「ダイくんのズボンを穿いてみたですが、窮屈な感じがするのでスカートがいいのです」


「じゃぁ、長いスカートのほうがいいですね」


「どうしてなのです? マイちゃん」



 麻衣がナイスな提案をしてくれた、さすがだ。理由は俺の頭に乗って浮かんでいる時に、短いスカートだと見えてしまうかもしれないからです。今までも短めのワンピースっぽい格好だったので、見えてしまっていたかもしれないけど、このサイズになってそれでは困る。はっきり言って、不特定多数の人にウミのそんな姿は見せたくない。


 みんなであれこれ言いながら、服を決めていく。こうして服選びに付き合ったのは初めてだが、いつもこんな感じで決めてたんだな。服の事に詳しくない俺は、それを眺めるだけしか出来なかったが、みんな楽しそうなのが嬉しい。


 最終的には白い上着の上から、紺色のジャンパースカートを着るという線で落ち着いた。結構ゆったりとした格好だし、水色の髪の毛もよく映えて似合ってると思う。



「ダイくんどうです、似合ってるですか?」


「靴を履いてこうして立ってる姿が新鮮でいいし、大きくて可愛くなったウミにとても良く似合ってるよ」


「あぅ……やっぱり面と向かって言われると照れてしまうのです」



 頬を染めたウミが俺に見られないようにするためか、後ろに回り込んで頭の上に移動してきた。まろやかさんを乗せられるのはもう慣れるしかないな、頑張ろう。いや、むしろ思考を止めたほうがいいのかもしれない。



「ウミちゃんが今までとは違う可愛さを身に付けてしまったわね」


「これが守護精霊の力……」



 時々こうして照れるようになったが、守護精霊の力とは関係ないと思うぞ、麻衣。



「私もご主人様に抱きついて運んでもらいたいです」


「……私はあるじ様が客室に移動した時の運ばれかたの方がいい」


「え!? 俺ってどんな格好で運ばれたんだ?」


「私がこうして君を横に抱いて運んだよ」



 隣りに居たキリエを抱き上げてその姿を見せてくれたが、お姫様抱っこで運ばれたのか。意識が無かったとはいえ、結構恥ずかしい格好みんなに見せてしまったな。キリエは嬉しそうにメイニアさんの首に手を回してはしゃいでいるが、意識のない人間をその抱き方で運ぶのは相当大変だと思う。魔族を羽交い締めにした時も思ったが、さすがは竜族と言ったところだろうか。



◇◆◇



 雑貨屋を後にして、ウミの結びの宝珠をペンダントにするための紐を買いに行ったり、少しだけ街を回ってから家に帰る。もちろん、ウミの首にも俺がペンダントをつけてあげる事になった。13人目の女性にプロポーズする事になってしまったが、少し頬を染めて嬉しそうにしている姿が可愛らしかったので良しとしよう。


 ウミはペンダントを首にかけてあげたことに加えて、今までより高くなった視線から風景を眺めるのが楽しかったらしく、ずっと機嫌のいい声で話をしていた。


 家に帰ってお昼を食べてからは、この冬最後になるかもしれない火を暖炉に入れて、土禁スペースでのんびりしている。と言うのも、みんな寝不足でウトウトし始めたからだ。


 胡座(あぐら)をかいた俺の上でキリエが眠り、俺の足を枕にしてアイナとエリナも寝ている。イーシャと麻衣も近くで横になっていて、オーフェとクレアは俺に寄り添うようにして眠っている。


 カヤも俺の膝の上に手を置いて寝ているみんなを優しく見守っているが、時々俺の方を見て嬉しそうな笑顔を見せてくれる。ちょうど良い機会なので、ずっと感じていた違和感の事を聞いてみよう。



「カヤも少し雰囲気が変わったよな」


「旦那様もそう思われるのですか?」


「言葉では言い表しにくいんだが、すごく親近感が増したというか、カヤの事をより近く感じられるようになった、そんな気がする」


「……よ、より近くですか」



 カヤは顔を赤くして(うつむ)いてしまった、この反応はウミとよく似てるな。今までも頬を染めるたりする事はあったが、ここまで過剰な反応をしたりは無かったはずだ。



「実は寝ている間に、夢の中で妖精の祝福を受けたと聞いたんだ、それがカヤに何らかの影響を及ぼしているんじゃないかと思う」


「ぁ……ぅぅ………そっ、それは……」



 カヤは首の辺りまで赤くして、自分の膝を抱えて顔をうずめてしまった。これはあまり無理をして聞き出すのは可哀想だ、この話題はあまり触れない方がいいかもしれない。



「カヤちゃんも、きっとウミと同じ様な妖精になったのです」


「それって俺の守護妖精みたいな感じか?」


「それは私の方で心あたりがあるんだけどいいかな」


「メイニアさんはそういった存在を知ってるんですか?」


「あくまで竜族の間に伝わる物語に近い話なんだけどね」


「それは儂も興味があるの」



 ソファーに座っていたヨークさんも、興味が出たのかこちらのスペースに移動してきて、床に座り込んだ。



「家の妖精というのは、家に()んでそこを守る存在だから、持ち主が変わると(つか)える人が変わっていくんだ」


「もちろん妖精が認めた人物にしか協力はせんのじゃがな」


「でもカヤちゃんは、この家の妖精でなく、ダイ君の所有する家の妖精になったんだと思うよ」


「それって俺が別の家を買えば、カヤはそこでも暮らしていけるってことですか?」


「私たちの間に伝わる話だと、妖精と心を通わせた者が大きな屋敷に移り住んで、そこで一緒に暮らしていったと言われているね」


「カヤ、それは凄いじゃないか」


「私が旦那様の所有する家の妖精に……」



 カヤは自分の手や体を確かめているが、ウミと違って見た目の変化は全く無い、しかしその存在は大きく変わったと言えるだろう。



「嬉しいです旦那様、どこに行ってもあなたに仕えることが出来るなんて、私は幸せです」



 俺の手を取ったカヤが、自分の頬を擦り寄せて喜びを表現してくれる。今までに無いカヤの行動に少し驚いてしまうが、目を閉じて俺の手を頬に当てて愛おしそうにしている姿を見ると、心に温かいものが広がってくる。



「守護精霊に続いて1人のために力を振るう妖精とは、伝説が次々と生まれておるの」


「ダイ君がお城を建てたら、カヤちゃんもそこに住めるのです」


「どんな大きなお城でも、私の力で住んでいる皆様を快適に過ごせるようにしてみせます」


「その時は私も元の姿に戻れるような広い部屋が欲しいね」



 さすがにお城は無理だろうけど、アーキンドに別荘を買ったり、ヴェルンダーに温泉付きの家を買ったりするのも良いかもしれないな。この家はとても気に入っているから簡単に手放すつもりはないが、複数の家を所有するのはありかもしれない。


 メイニアさんのおかげで妖精の祝福の正体も判明したけど、ウミと同じ様にカヤの負担を無闇に増やす事の無いようにだけは気をつけよう。


この後に資料集の方を更新します。

ウミとカヤの項目の更新と光る女性を追加しています。

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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

新しく連載も始めています

いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
強化チートを使いながら気ままに旅する物語
色彩魔法

【完結作】
突然異世界に来てしまった主人公が
魔操という技術に触れ世界に革新をもたらすスローライフ
魔操言語マイスター
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