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回路魔法  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第11章 回路魔法編
145/176

第143話 おはよう

誤字報告ありがとうございます。

作品オリジナルの固有名詞は辞書登録してるのに、なんで間違うかなぁ(笑)

 床から少し浮き上がってふよふよと飛んでいるウミの手を取って、引っ張りながら大部屋に移動する。これはアミューズメントパークで買った、空に浮き上がる風船を持って歩いている気分だ。


 起こさないようにそっとドアを開けるが、そこにはシロが尻尾を振って待っていた。さすがに寝ていても気配に敏感なだけあって、真っ先に飛び出してきてくれたみたいだ。



「シロ、心配かけてごめんな」


「く~ん」



 しゃがんでシロの首を抱きしめて頭を撫でてあげると、お返しに顔をペロペロと舐めてくれた。シロと一緒にベッドの近くに行って、揺らさないように上にあがる。ベッドにはヨークさんもいて、俺の事でここまで来てくれたみたいで、とてもありがたく思った。


 アイナとエリナを見ると抱き合うように眠っていて、その顔には涙の跡がある。オーフェとクレア、キリエとメイニアさん、麻衣とカヤ、イーシャとヨークさんも寄り添うように眠っていて、とても申し訳ない気持ちになってしまった。


 アイナとエリナの頭を撫でてあげると、少しだけ身じろぎして小さい声で何かを話している。



「ご主人様ぁ……行っちゃ嫌です」


「……あるじ様……もう、ひとりは嫌」


「アイナ、エリナ、ごめんな、俺はここに居るから、もう大丈夫だよ」



 しばらく頭を撫でていると、アイナが目を開けてこちらをぼんやりと見てくる。



「おはよう、アイナ」


「………ご主人様……いま夢を見ていないですか? ……本物のご主人様ですか?」


「大丈夫、アイナはちゃんと起きてるよ」



 アイナの顔が次第に歪み、その目に一杯の涙をためて、それがあふれると同時に俺に抱きついてきた。



「ご主人様ぁー、よかったですー、うぅ~、ご主人さまぁ」


「心配かけてごめんアイナ、俺はもう大丈夫だからな」



 号泣するアイナの声で、みんなが起き出してきた。



「あるじ様、あるじ様ぁ、もうどこにも行かないでぇー」


「ダイ兄さん、良かった、ほんとに良かったよぉ」


「ダイ……あまり心配をかけないで頂戴」


「……お兄ちゃん…おかえり……なさい」


「おとーさぁーん、またいっぱい撫でて、抱っこして、キリエ寂しかったよぉ」


「ダイ先輩、ほんとうに心配しました」


「旦那様……約束を…守っていただいて………ありがとうございます」



 みんなが一斉に俺に抱きついてきてバランスを崩しそうになったが、これだけ心配かけたんだから、ちゃんと受け止めてあげよう。みんなの頭を順番に撫でてあげながら、家族の重みをしっかりと支える。



「みんな、心配かけてごめんな。メイニアさんにもヨークさんにも、ご迷惑をおかけしました」


「私は見守ることしか出来なかったからね、頑張ったのはマイちゃん達だよ」


「お主たちのしてくれたことに比べたら、迷惑などではないから気にする必要はないぞ」



 みんなが落ち着くまで頭を撫で続けて、ひとりづつ俺から離れていったが、アイナとエリナだけは俺にしがみついたまま離れようとはしなかった。



「ところで、さっきから気になっておるんじゃが」


「そこにいる女性はウミちゃんだよね?」


「「「「「「「えっ!?」」」」」」」



 ヨークさんとメイニアさんが、俺の近くに浮いているウミを見て、確かめるようにそう尋ねてきた。みんなも俺の事で頭が一杯になって気づいていなかったみたいで、驚いた顔でその人物を見ている。



「ウミは水の上級精霊っぽい何かになったのです」



 あー、その設定で行くんだ。でも、力も増してるし、体も大きくなってるし、確かに精霊としての格は上がってる感じなんだよな。



「ウミちゃん、すごく大きくなりましたね」


「まさかそんな遥か高みに登ってしまうなんて、予想すらしていなかったわ」


「……私より大きくなった」


「ウミちゃん、大きくなりすぎだよ」


「一晩でそんなに大きくなるなんて、何を食べれば良いんですか、牛乳ですか!?」


「ウミさん、うらやましい……」


「ウミ様、妖精も大きくする方法はご存じないでしょうか」


「ウミおかーさん、あとで抱っこして」



 ――みんな身長の話をしてるんだよな?



「しかし、これは……じゃが、どう考えても……」



 そこでヨークさんが小声でつぶやきながら悩み出した、なにか思い当たる節とかあるんだろうか。その割には手を動かしたりしていて挙動不審だ。



「ヨークさん、何か知ってる事があるんですか?」


「いやそういう訳ではないんじゃよ。イーシャ、お前も精霊魔法を使ってみてくれんか」


「構わないわよ、お祖父様。そよ風くらいでいいわよね……って、あら?」


「イーシャどうしたんだ?」


「おかしいのよダイ、精霊が私の言葉を聞いてくれないわ」


「やはりイーシャもそうじゃったか」


「いったい何が起こってるんですか?」


「ウミさんがこの辺りの精霊すべてを、支配下に置いてしまったんじゃないかの」


「ウミはそんな事が出来るようになったのか」


「近くの下級精霊たちが、ウミにどうしたらいいか聞いてくるのです」



 やはり精霊としてより上位の存在になっているから、ウミにお伺いを立てるようになったのか。しかし、イーシャは風の精霊魔法だし、ヨークさんは火と風が使える、水の精霊のウミが他の属性も支配してしまえるのだろうか。



「ウミって水の精霊だけど、他の属性にもその力は及ぶのか?」


「上位の精霊の近くには全ての下級精霊が集まりやすいのです、でも他の人の精霊魔法を邪魔するような事はしないと思うのです」


「ウミさんは他の属性の精霊魔法は使えんかの?」


「試してみたことは無いのですが、やってみるのです」



 ウミが小さく手を振ると部屋の中にそよ風が生まれる、その手を前に差し出すと半透明で綺麗な青い炎の球体が生まれた、更に岩で出来た小さな人形がベッドの近くに置いてあるテーブルの上を歩き出し、その横に氷で出来た我が家のミニチュアまで作ってしまった。



「ウミちゃん凄いです」


「……人形かわいい」


「この小さな家もすごく良く出来てますよ」


「青い玉もすごくきれーだよ、ウミおかーさん」


「みんなウミの言うことを聞いてくれるようになったのです」



 これは凄いな、4属性すべての精霊魔法が使えるようになってしまった。しかも自律歩行する人形とか、精巧なミニチュアとか、魔法の制御力も桁違いなんだろう。



「目の前で起きている事なのに、信じられないわねこれ。しかもこの魔法制御力はありえないわ」


「恐らくじゃが、ウミさんは水の精霊から守護精霊に変わったんじゃろう。そして、守護する相手は間違い無くダイ君じゃな」


「そんな精霊、ウミも聞いた事がないのですよ」


「人と精霊が隣人として暮らしておったという、はるか昔の出来事を綴った書物にその名が出てくるだけじゃからの。実際にあった史実かすらわからん記録じゃが、それが今ここで起こったとしか思えんの」


「その精霊はどういった存在として書かれているんですか?」


「守護する相手をあらゆる厄災から守ると言われておる。もしかするとダイくんの状態異常が回復したのも、その力のおかげかもしれん」


「すべての属性の精霊魔法が使えるのも特徴なのかしら」


「すべての属性で上級精霊を超える力を出せると書いておったから、あれ程のものが生み出せたのじゃろう」



 精霊の祝福というのが、きっとこの事だったんだろう。でも、ウミは今までどおり美味しいお菓子や果物を食べて、いつもニコニコとしている存在でいいと思う。洗浄魔法や治癒とか水関係では頼ってしまうだろうけど、それ以外の事で負担をかけるのはできるだけ控えるようにしたい。



「ウミ様、凄いです」


「ボクたちの家族がそんな人になれるなんて、すごい事だね」


「ウミはダイくんの精霊になれたのです、とても嬉しいのです!」



 ウミが空中に浮かんだまま後ろから俺の頭に抱きついてきたが、まろやかさんに頭が挟まれるように感じになって大変な事になってます。それに後ろにいると守護精霊と言うより、背後霊みたいな気がしてしまうから、できれば横に居て欲しい。



「儂らの精霊魔法が使えんようになったのも、守護対象であるダイ君に危害が及ばないように、精霊たちが配慮しておったのじゃろうな」


「ダイくんの周りにいる人たちは大丈夫なのです、お願いを聞いてあげて欲しいのです」



 ウミがそう言った後にヨークさんとイーシャが精霊魔法を使ったが、2人とも普段どおりどころか、普段以上に魔法が使えるようになってしまった。さっき、俺の周りにも下級精霊が集まってると言っていたが、その子たちも協力してくれてるんだろう。


 そのまま俺が昨日倒れてからの状況を聞かせてもらったが、エルフの里にある門外不出の霊薬を使ってもらったり、色々と迷惑をかけてしまったみたいだ。里の人たちやイーシャの両親には、改めてお礼をしに行こう。


 その後は、俺の服を着たままだったウミの着替えをしようということになり、身長の近いイーシャと麻衣の服を借りていたみたいだが、窮屈すぎるということで断念したらしい。きっと大きく成長した部分がそうさせたんだと思うが、2人ともずいぶん落ち込んでしまって、俺が撫でて慰める事になった。


 結局、少し大きいがメイニアさんの服を借りて、朝ごはんの後にウミの服を買いに行くことに決まった。



◇◆◇



「そろそろ朝ごはんにしようと思うんですが、ウミちゃんは果物だけでいいの?」


「ウミはこの体になっても、マイちゃんのお菓子と果物があればいいのです」


「こうしてみると、大きくなっただけで、ウミちゃんは変わらないわね」


「出会った頃のウミちゃんと同じで安心します」



 ウミと出会った時は、俺とアイナにイーシャと麻衣の4人だけのパーティーだったが、その頃からの付き合いの3人は、ウミの変わらない姿に特に安心しているみたいだ。俺は目を覚ました時に色々と話しをしたので、守護精霊に変わったと聞いても、あまり不安はなかった。


 むしろこれまで見られなかった、照れたり慌てたりする姿を見る事ができて、今までより親近感が湧いたくらいだ。


 それに親近感という点では、カヤとの距離も縮まった気がする。妖精の祝福と言われた事を、意識してしまっているのかもしれないが、今までとは違う距離感で俺に接してくれている感じがするし、雰囲気もこれまでとは変わっている。どこがどうという具体的な事は言葉にしづらいが、より親しみやすくなったと言うか、お互いの繋がりみたいなものを感じる。この辺りの違和感はまた改めて聞いてみよう。


 それより先に朝ごはんだ、俺も昨日のお昼から食べてないしお腹が空いている。他のメンバーも昨日は食欲がなかったみたいなので、朝ごはんはしっかり食べることにしよう。


ウミは小さいままのほうが……、という思いを心に秘めている方が居るかもしれませんが、筆者も魔法少女的マスコットキャラや、SDキャラは大好物ですので、いずれ何らかの形で作中に登場させたいとは思っています。


かといってQB/人◕ ‿‿ ◕人\みたいなのはお断りですが(笑)

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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

新しく連載も始めています

いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
強化チートを使いながら気ままに旅する物語
色彩魔法

【完結作】
突然異世界に来てしまった主人公が
魔操という技術に触れ世界に革新をもたらすスローライフ
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