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回路魔法  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第2章 新たな出会い編
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第12話 イーシャ

 朝、目が覚めて昨日のエルフの女の子の様子を見に行くことにした。アイナは「少し行くところがあるので」と外に出ていったので、一人で部屋に行くと女の子は上半身を起こして壁にもたれかかっていた。



「もう起きても大丈夫ですか?」



 そう聞くと、エメラルドグリーンの瞳で俺のことを見て、少しだけ警戒したような表情をした。



「えぇ、もう大丈夫よ。あなたが助けてくれたの?」


「俺は薬を飲ませただけで、助けたのはリザードマン達ですよ」



 俺がそう答えると、「そう、それで洞窟の中に寝かされてたのね」と今の状況に納得できたのか、表情からも警戒心が薄れたようだ。



「ご主人様、水を汲んできました」



 そう言ってアイナが水の入った手桶とタオルを持って部屋に入ってきた。俺と別行動を取ったのは水を汲みに行くためだったのか、昨日も脂汗を流していたので体を拭いてあげようと思ったのだろう、アイナは本当に細かい気配りができる。



「水を汲んできてくれたのか、ありがとう、アイナはよく気がつくな」



 頭を撫でてやると、しっぽをぶんぶん振って「えへへ~」と声を漏らしながら喜んでくれる。

 俺たちのやり取りを見ていたエルフの女の子が少し驚いた顔をしてる。



「あなた達、ちょっと変わってるわね。人族と獣人がそんなに仲良くしてるのなんて見たことないわ」



 俺は異世界人で獣人への偏見はまったくない、むしろ耳やしっぽが可愛すぎると思ってるくらいで、事あるたびにアイナの頭を撫でているが、こちらの世界の人には珍しい光景に映るのかもしれない。


 そう言えばアイナの服を買った雑貨屋のおばあちゃんもそんな事を言ってたし、時々街なかでも注目を浴びたりすることがあるのは、この辺りが原因かもしれないな。



「ご主人様はとっても優しいです。ブラッシングも上手だし、私大好きです」



 そう言って笑顔を見せるアイナを見たエルフの女の子も表情を崩して微笑んだ。


 少し打ち解けてきた雰囲気になった所で自己紹介をする。



「俺の名前はダイ、こっちはアイナ。君の名前を教えてもらってもいいかな?」


「私の名前はイーシャよ、見てのとおりエルフ族ね」



 自分の耳を軽く触りながら名前を教えてくれた。



「それで、助けてくれたリザードマンにお礼が言いたいのだけど、案内してもらってもいいかしら」



 アイナの持ってきてくれた水で顔や体を軽く拭いてもらった後に、部屋の前で合流して3人で長老の所に向かった。



◇◆◇



「長老様、いま大丈夫ですか?」


「ダイ殿、アイナさん、かまわんよ。そっちのエルフのお嬢さんは、もう動いても大丈夫かな?」


「えぇ、もう大丈夫ですわ。

 この度は助けていただいてありがとうございました」



 そう言ってイーシャは長老に頭を下げた。



「そちらのダイ殿が持ってきてくれた薬で助かったようなものじゃ、お礼はダイ殿にしてやってくれ」



 そう言って長老は俺の方を見てくれたけど、運良く持ってた薬が効いただけなので、あまり気にしないでほしい。イーシャも俺に頭を下げつつ「でも倒れていた所を見つけてもらえなければ、命を落としていたかもしれない」と、長老に感謝の言葉を告げていた。



「それで、なんであんな所で倒れておったんじゃ?」


「実は岩場で見たことない蛇の魔物に襲われてしまって――」



 エルフの里を出たイーシャは、様々な場所を訪ねながら旅を続けていたそうだ。その途中で突然変異種と思われる蛇の魔物に襲われ、何とか倒したものの毒の攻撃を受けてしまった。運悪く解毒薬のたぐいが切れたしまっていて、どうにか人のいる所に辿り着こうと川下に歩いていったが、途中で荷物も落としてしまいそのまま力尽きて倒れてしまった。そこをリザードマンに発見されて、ここへと運ばれてきたらしい。



「エルフの里を出て2年近くになるけど、流石に今回はもうだめだと思ったわ……」



 苦笑しながらいきさつを語ってくれた。



◇◆◇



 病み上がりなので無理はしないようにと長老に言われて、今は3人で部屋の中でくつろいでいるが、アイナとイーシャはすっかり仲が良くなったみたいで、今まであったことや俺の話で盛り上がっている。俺と出会ってからのアイナは、こうやって気兼ねなく話せる同性の友達が居なかったので、とてもいい出会いが出来るきっかけになった。ここまで連れてきてもらって本当に良かった。


 そうして夜も更けてきた頃、アイナが自分のカバンからブラシを取り出して、しっぽのブラッシングをおねだりしてきた。今日はこのままイーシャと一緒に眠るそうだ。ブラシはアイナにとって貴重品扱いらしく、外出するときには必ずカバンに入れている。


 いつものように、とろけきった吐息を漏らしながら気持ちよさそうにしているアイナを見ていたイーシャが、俺にお願いがあると言い出した。



「ダイ、お願いがあるんだけど、良かったら私もあなたのパーティーに入れてくれないかしら?」


「俺は構いませんが、アイナはいいかい?」


「私はいいですよー、イーシャさん良い人ですし、ご主人様が決めたのなら問題ないですー」



 ブラッシングの手を止めずに聞いたせいか、妙に間延びした答えになっているが、アイナも賛成してくれるようだ。イーシャの話を聞いているとギルドランクこそアイアンだが、2年近く各地を転々としていたおかげで、様々な知識があることがわかって非常に勉強になった、駆け出し冒険者の俺たちにとって先輩として色々と教わることがあるので断る理由はなかった。



「あなた達2人はとても面白い関係だし、もっと見ていたいわ。それに私は魔法が得意だから色々と教えてあげられる事もあると思うの」


「わかりました、こちらこそよろしくお願いします」


「それとパーティーを組むんだから、もっと砕けた話し方で構わないわ」


「わかった、これでいいか?」


「えぇ、その感じでお願いするわね。

 アイナちゃんもよろしくね」


「イーシャさんと冒険できるの楽しみですー」



◇◆◇



 こうしてイーシャが俺達の仲間になった。魔法回路にも興味があるし、魔法が得意な人が一緒に居てくれるとすごく嬉しい。それにエルフは長寿種族らしいので、人間の知らない知識や異世界転移に関することも知っているかもしれない。いずれ俺の素性もちゃんと話して聞いてみることにしよう。


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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

新しく連載も始めています

いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
強化チートを使いながら気ままに旅する物語
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【完結作】
突然異世界に来てしまった主人公が
魔操という技術に触れ世界に革新をもたらすスローライフ
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