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回路魔法  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第10章 問題解決編
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第132話 初代国王

誤字報告助かってます。

母音の打ち間違いが多いこと多いこと(汗;

 褒賞を受け取ったりした後、俺がこの世界に来た理由も国王に話をした。召喚に巻き込んでしまってすまないと謝ってくれたが、俺は気にしていないと答えている。いい出会いに恵まれて、王都に自分たちの家まで出来たんだ、元の世界に未練がないとは言えないが、地球に居たらこんなに充実した生活は送れなかっただろう。


 国王も隊長さんも麻衣のことは覚えていてくれて、聖女候補を辞退してからどうしているのか、心配していたらしい。この家で幸せに暮らしていると知って、とても喜んでくれた。そんな人達だから、俺も自分の素性を明かす事にした。


 ソファーには国王とヨークさん、メイニアさんとへストアさんが座り、厨房に参戦しに行ったカヤを除いた残りのメンバーは暖炉の前に集まっている。胡座(あぐら)をかいた足の上にキリエが座って本を読み、エリナは俺の太ももに顔をこすり付けながら甘えてくるので、頭を優しく撫でてあげている。


 オーフェはいつもの様に俺の背中に張り付いて肩に頭を乗せて、キリエの読んでいる本を眺めている。イーシャは俺と肩が触れ合う位置に座り、シロを膝枕して頭を撫でていて、ウミは俺の上で少しウトウトしているらしく、さっきからずっと静かだ。



「ダイ君が我々の召喚に巻き込んでしまった異世界人だと聞いて驚いたが、ここまで他の種族に気を許されているのは違う世界の人族だからかの」


「それは、彼の持っている“気”がとても大きくて温かいからだな。ここは我ら竜族にも居心地がいい場所だよ」


「そんなダイ君に惹かれて集まってきた者たちが住んでいるから、この家は穏やかで優しい気に満ちているんだ。キリエちゃんがあんなに素直で可愛く生まれてくれたのも、カヤちゃんが人と変わらない人格を持って存在しているのも、この家のおかげだよ」


「お主らはここに魔族が住んでいる事を(こころよ)く思わぬかもしれんが、彼の周りにいる者に限って、国に仇なす事は無いと断言できるぞ」


「事故とはいえ、儂らはとんでもない人物を召喚してしまったのかもしれんな」


「しかし国王様、その彼のおかげで魔族界まで直接出向いて、問題を解決する事が出来たのです。我々に今できるのは、こんな彼らの生活を全力で守ってやることではないでしょうか」


「そうだな、今日の会談に参加した者たちには、改めてこの事を伝えよう」



 国王や隊長さんは、完全に俺たちの味方についてくれるみたいだ。こんな心強い人たちが後押ししてくれれば、今までと変わらない生活が送っていけるだろう。



◇◆◇



 食事会の準備ができたみたいなので、全員で食堂に移動したが隊長さんは入口付近から動かず、護衛の2人は玄関ドアの左右に立ったままだ。



「隊長さん達は一緒に食べないんですか?」


「我々は任務中ですからお構いなく。それに、国王様と同席することは出来ません」



 そうは言っているが、みんなが食べている時に立ったままいられるのも落ち着かないし、食事は大勢で食べた方がおいしい。



「この家には竜族が3人もいますし、精霊魔法使いも2名います。それにカヤやシロが居れば不審者に侵入される可能性は低いですから、みんなで食事をしませんか?」


「儂の事なら気にする必要はないから、外の2人も呼んできなさい」


「宜しいのですか、国王様」


「ここは王城ではないし、この家のしきたりに従おうではないか」



 国王にそう言われて、隊長さんも護衛の2人を呼びに玄関ホールの方に出ていった。やっぱりこの人は格式に囚われないし、すごく優しくていい人だ。



「それでは、魔族界から無事帰ってこれたこと、国への報告が終わったこと、そして改めてクレアが家族になったことに乾杯」


「「「「「「「「「「「「乾杯[なのです]!」」」」」」」」」」」」「わんっ!」



 テーブルには様々な料理が所狭しと並んでいる。煮物や揚げ物に炒めもの、エルフの里や狐人(こじん)族の村で教えてもらった、あっさりした味付けのものも何品かあるみたいだ。



「お兄ちゃん、オーフェちゃん、これ私が作ったの、食べてみて。オーフェちゃんは豆料理が好きって言ってたから、一生懸命作ったんだよ」



 隣りに座ったクレアが、豆と野菜とお肉をシチューのように白くてとろみのあるスープで煮込んだ料理を、お皿に取って渡してくれる。ひとくち食べてみるとよく煮込まれていて、豆やお肉も柔らかくなって味がよくしみている。



「すごく美味しいよクレア、初めて作ったとは思えないくらい上手に出来てるじゃないか」


「クーちゃん、すごいね! こんな美味しいものが作れるなんて、ボク驚いたよ」


「マイさんやカヤさんにも手伝ってもらったから、これだけ美味しいものができたんだよ」


「私が手伝ったのは味付けくらいですよ」


「クレア様は材料を切って煮込む所も、全部1人でやっておられました」


「初めて料理を作った時の私より、ずっと上手に皮を剥いたり材料を切ったりしてて、すごかったです」



 両親と一緒だった頃に料理を手伝った事は無いと聞いていたが、初めてでこのレベルの物が出来るなんて、この分野に関してもすごい才能を秘めているのかもしれない。クレアの頭を撫でてあげると、とても嬉しそうな顔をして俺の方を見上げてくれる。



「これは本当においしいの、城で食べる料理より美味(うま)いのではないか?」


「国王様、これは王都にある食堂が今までに存在しなかった調理法を産み出したと話題になりましたが、その料理と同じです」


「私達も食べに行ったことがあるのですが、いつも人が一杯ですぐ売り切れてしまうのです」


「運良く食べる事ができた同僚に、騎士団全員でその味を尋問した事がある料理が、ここで食べられるとは思いませんでした」



 同僚に尋問された騎士団員には少し同情してしまう、なにせその調理法を伝えた本人だからな麻衣は。


 国王や護衛で来てくれた3人にも好評なようで、麻衣たちも嬉しそうな顔をしている。舌が肥えているだろう王族にも気に入ってもらえる料理が作れるこの家の厨房を預かる4人は、本当に大陸最強を名乗ってもいいんじゃないだろうか。



「マイちゃんの料理は更に磨きがかかっておるな」


「まさか世の中にこれほど美味しい料理が存在するなど、我が人生(竜生)で最大の驚きだ」


「ここの料理を食べると、もう山には戻りたくないと言った私の気持ちが、わかってもらえるだろ?」


「食事は必要ないからと、地脈の力だけで生きて来たことを後悔してしまうよ」



 更に進化した味付けはヨークさんにも好評だし、へストアさんもこれまでの生活を悔いるくらい料理を楽しんでくれている。アイナが作ってくれたものや、カヤの作ってくれたものも全部美味しく、あれだけあった料理も全て無くなってしまった。



◇◆◇



「特別な晩餐会でしか口にできぬ氷菓子が、いつでも食べられるとは驚いたの」


「あの“冷蔵庫”という装置は凄いものじゃな、古代の遺物をあの様に利用するとは、さすがはダイ君じゃ」


「しかも口の中でふわりと溶けるあの食感は、これまで体験した事の無い不思議なものだった」



 デザートのアイスクリームも好評で、国王はお代わりをして食べていた。食事会も終わり、王城から迎えが来るのを待っている間に、リビングに集まってみんなで話をしている。ヨークさんはやはり冷蔵庫の仕組みに好奇心を刺激されて、中に仕込んでいる冷蔵の道具を取り出して熱心に調べていた。



「また、食事をご馳走になりに来ても構わんかの?」


「はい、いつでも来て下さい。まだまだ作っていない料理が沢山ありますから、次も美味しいものをお出ししますね」


「国王のおじーちゃん、また来てね」



 この感じ、ちょくちょくご飯を食べに来そうな予感がするな。同じ王都内だからいつでも来ることが出来るけど、一般家庭に食事をするため足しげく通ったりしたら、王城の料理人が涙目になったりしないだろうか。



「羨ましいの、やっぱり儂も王都に住んだらいかんじゃろうか」


「お祖父様は里の長老なんですから、少し自重して下さい」


「大きなおじーちゃん、寂しくなったらキリエが遊びに行くから、待っててほしいの」


「キリエちゃんが会いに来てくれるんじゃったら、儂も里で頑張ろうかの」



 ヨークさんはイーシャの小言には耳を貸さなかったが、キリエの一言で嬉しそうな顔をして里に帰る決意をしている。そんな話をしているうちに、王城からの迎えが来てくれたみたいだ。



「今日は儂と護衛の3人もご馳走になって、すまなんだな」


「こちらこそ、わざわざお越しいただいて褒賞まで頂き、ありがとうございました。またいつでも来て下さい、歓迎します」


「そなた達のことは決して悪いようにはせんから、安心してここで暮らしてくれていい」


「はい、お心遣い感謝します」



 国王を送り出して、ヨークさんも今日中に帰らないといけないらしいので、オーフェと俺でエルフの里まで送っていった。へストアさんはお泊りするので、昼間のうちに寝間着も買っている。



◇◆◇



「お風呂はどうでしたか?」


「ずいぶん昔に火山から吹き出すお湯を浴びた時は竜の姿だったので理解出来なかったが、人の姿で入るお風呂というのは良いものだな」


「へストアおねーちゃんもキリエが洗ってあげたんだよ」


「石鹸というものは素晴らしかったよ、あれは竜の姿の時も使ってみたいものだ」



 あの巨体を洗うには、どれくらい石鹸がいるんだろう、全身泡だらけにして地面に寝そべっている竜の姿を想像して、少し可笑しくなってしまった。



「へストアさんはこの国と協定を結ぶ時に、こうやって食事に招かれたり、どこかに泊めてもらったりはしなかったんですか?」


「この姿をしておっても、我らは竜だからな。その力は当時の者たちもよく知っていたし、恐ろしくてそのような事は出来なかったのだろう」


「こうやって私たちを人と同じ様に扱ってくれるのは、ダイ君たちくらいじゃないかな」


「でも、それだけ力の差がわかっていて、よく大陸内部の山から力ずくで排除しようという意見が出たわね」


「我らは他の種族と敵対せぬように静かに暮らしていたが、やはり自分達の住む場所の近くに得体の知れない強大な力が存在するというのは、受け入れ難かったのではないかな」



 こうして人の姿で付き合ってみると、単に長生きなだけの優しいお姉さんという印象だけど、恐怖を感じてしまうのはコミュニケーション不足だからだろう。



「でも私たち竜族を追い出そうという人が、急に増えたと言っていたよね」


「それはこの国の王になる男も、不思議に思っていたみたいだったな」


「まさか私みたいな力を持った人が、そう思わせていたんじゃ……」


「私も今回のことを経験して、その可能性もあるんじゃないかと思ってるんだ」



 二千年以上も前に、今と同じような事が起こっていたとすると何とも皮肉な話だが、それが事実として目的は何だったんだろう。竜族の性格を考えると何をされても耐えるか、別の場所に移動して終わりだろうから、それを狙っていたのかもしれない。そんな事になっていたらお互いの関係が悪化して、今みたいにこうして話をする機会は訪れなかった可能性を考えると、へストアさんと初代国王には感謝しないといけない。



「私が王になる男と協定を結んだ時には、そういった勢力は鳴りを潜めていたから、一時的なものだったのかもしれないがな」


「俺たちの居た世界でも特定の誰か(魔女)迫害したり(狩り)民衆を()扇動して()戦争を()したり、そんな歴史もありましたから、世の中が不安定な時はその様な考えに囚われる人が増えるのかもしれませんね」


「人族の心の動きというのは、我々と全く違って面白いものだな」



 話が変な方向に行ってしまったけど、そんな昔に何があったか想像はできるが、答えは見つからないだろう。



「ねぇねぇ、この国の初代国王ってどんな人だったのかな」


「それは私も興味あるわね」


「大陸を統一したくらいですから求心力や指導力もあって、素敵な王子様だったのではないでしょうか」



 その流れを断ち切るようにオーフェが初代国王のことを質問したが、それにイーシャと麻衣が食いついている、やはり英雄的なものに憧れるんだろう。



「そうだな、一言で言うと……」


「「「……………」」」


「女好きだった」


「「「え!?」」」



 興味深そうに聞いていた3人はその一言で固まってしまった、クレアも少し頬を染めている。これはあれだな、英雄色を好むというやつに違いない。



「私も結婚を申し込まれたよ、人族にそんな感情は抱けぬから断ったがな」


「その話は私も初めて聞いたよ」


「まったく興味のない事だったから、話すまでもなかろう」


「もしかして、周りの女性に手当り次第声をかけるような人だったんですか?」


「いや、そんな事はなかったぞ。だが男の周りには妻か恋人かわからぬ数人の女性が常に控えておって、いま思い出してみると全員胸が大きかったな」



 巨乳好きだったのか初代国王。英雄像を期待していた3人が、自分の胸元を見て落ち込んでる。クレアも少し悲しそうな顔になってるが、まだまだ成長するんだし未来に向かって希望を持って欲しい。キリエはいまいち良く判ってないみたいだが、2人の竜族と卵を預けてくれた女性の事を考えると、将来性は一番あるのかもしれない。


 現在うちのメンバーで一番戦闘力が高いのはエリナだが、今はアイナやカヤやウミと一緒にお風呂中だ。何となくこの場に居なくて良かったと思ってしまった。






 何というか、知らなくてもいいことを知ってしまった気分だ。王城には初代国王とヘストアさんの絵画が飾ってあるみたいだが、それを見たら巨乳好きのことを思い出してしまいそうで困るな。


母音の打ち間違いが多い筆者ですが、巨乳好きなわけではありません。

誰かが言ってましたが、大きいものには夢が詰まっている、小さなものは夢を与えてる、この説が大好きです(笑)


資料集のサブキャラの項目に魔族のカテゴリーを作って、イノシシ顔の男を移動したり、狐人族の村にいた4人組を追加したりしています。

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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

新しく連載も始めています

いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
強化チートを使いながら気ままに旅する物語
色彩魔法

【完結作】
突然異世界に来てしまった主人公が
魔操という技術に触れ世界に革新をもたらすスローライフ
魔操言語マイスター
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