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回路魔法  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第2章 新たな出会い編
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第11話 再会

 アイナと出会ってから1ヶ月ほど経った。この世界は“光の月/水の月/風の月/火の月/土の月/闇の月”の6ヶ月で、1ヶ月は60日ある。20日ごとに“赤/緑/青”と別れていて、今日は闇の月の赤の5日だ。


 “闇と光”が冬の時期に当たり、“風と火”が夏の時期に当たる。冬とはいえ、このサーキュリア大陸中央部は温暖で、少し厚手の長袖の服で十分過ごしていける。夏も極端に暑くなったりしないらしく、この大陸中央部は穀倉地帯が多い。


 出会った時は痩せていたアイナだが、一緒に行動するようになって栄養状態が改善されたせいで、今では健康的な体つきになってきている。髪の毛の艶も出てきたし、しっぽはふっさふさになって触り心地もいい。寝る前にしっぽをブラッシングしてあげるのが、今では毎日の日課になっていて、ベッドに寝転んで実に気持ちよさそうにブラッシングを堪能している。そしてそのまま寝てしまうのが、いつものパターンだ。


 宿屋は今でも真夜中の止まり木のお世話になっている。他と比べて衛生面や設備が良かったし、長期滞在を宿屋の主人にお願いすると、少し割り引いてくれたのが大きな理由だ。態度は無愛想な親父さんだけど、実は細かいところも気遣ってくれるしとても優しい。


 ギルドの依頼は主に森で薬草の収集や、獣や魔物の討伐をやっている。アイナが村でもやってたおかげで薬草類に詳しいのと、気配察知の感覚が優れているようで、不意をつかれて襲われるようなことも少なく、危なげなく依頼をこなしていっている。俺も魔法の使い方に慣れてきたと思う。


 魔物を倒した時にドロップする魔核だが、あれは魔法回路を印刷するときの材料になるらしく、需要が安定してるのでギルドでも重さに応じて定額で買い取ってくれる。ギルドランクはカッパーのままの俺たちだが、収入はある程度安定してるので、収支もわずかに黒字になっている。



 他の冒険者から、少し前から魔族の動きが活発になっているという噂話も聞くが、俺の住んでいる街は特に混乱もなく平和だ。異世界転移の手がかりは見つかってないが、毎日はそれなりに充実している。




―――――・―――――・―――――




 今日はあまり人が行かない場所にあるという、少し見つけにくい薬草の収集依頼を受けて森に入っている。アイナの知ってる薬草だったし、期限にも余裕があるので何とかなるだろう。



「ご主人様、右の方に魔物の気配がします、数は2匹」


「わかった、俺が先制するから抜けてきたらアイナが倒すいつもので行こう」


「はい!」



 そう言って風の魔法回路が刻まれた杖を持って構える。注意して見ると頭に角が一本生えた兎の魔物がこちらに近づいて来ていた。


 攻撃対象をしっかり意識して、杖を軽く左右に2回振る。杖に幾何学模様の線が走り、周りの空気とは少し密度の違う風の刃が2つ発生して魔物に命中し、その体は青い光になって消えた。



「ご主人様、さすがです!」



 魔核を回収してきたアイナが、しっぽを振りながら俺に手渡してくれた。「アイナが魔物を見つけてくれるおかげだよ」と、頭を撫でながら魔核をカバンにしまう。



「2匹くらいなら同時に狙っても外さなくなってきたな」


「ご主人様はマナ耐性も高いみたいですし、もしかするとすごい才能があるんじゃないでしょうか」



 いつも俺のことをすごく持ち上げてくれるアイナの言葉に少し気恥ずかしくなりながら、「どうだろうな」と答えて薬草の探索を続ける。



◇◆◇



 しばらく薬草を探しながら歩いていると、アイナがピクリと反応した。



「ご主人様、この先の方で誰かが戦ってる感じがします」



 ギルドでもあまり人が来ない場所だと聞いていたが、一体誰が戦ってるのだろうかと、少しだけ様子を見に行くことにした。

 遠目で見ると長い棒を持った緑色の影が見えてきた。



「もしかしてあれリザードマンじゃ」


「そうですね、尻尾の先が少し欠けているリザードマンみたいです」



 目の良いアイナがそう答えてくれた。

 尻尾の先が欠けたリザードマンって、カイかもしれないと戦闘が終わるのを見計らって近づく。



「カイさーん!」



 大声で呼ぶとあちらも気づいてくれた。



「お前たち、久しぶり、リクも、いる、少し、待て」



 そう言って森の奥に消えていった。



「こんな所まで来てどうしたんでしょうね?」


「ひと月近く街に住んでるけど、近くでリザードマンは見たことなかったし、何かあったのかな」



 そんな疑問を浮かべてアイナと話してると2人が戻ってきた。



「ダイ、久しぶり、頼み、ある、毒を消す、薬、持って、ないか?」



 毒消し薬や、万が一のときのために持っていた、状態異常を解除してくれるポーションがあると答えると、できれば一緒に来てほしい、無理なら薬だけでも分けてくれないかと頼まれた。


 事情を聞いてみると、リザードマンの住処の近くにある渓谷で、若いエルフの女性が倒れているのを見つけたそうだ。毒を受けているようで状態が悪く、リザードマンの持っている薬では治らなかった。人族の街で売ってる薬なら効くかもしれないと、協力してくれる冒険者を探しに街の近くまで出てきて、たまたま俺たちと再会したということらしい。


 偶然見つけたエルフのために、ここまで親身になってくれるリザードマンは、やっぱりいい人たちだ。


 エルフにも少し興味があるし、もし効かなかった場合の事も考えて一緒に行くと伝え、また2人の腕に乗せてもらって移動を開始した。



◇◆◇



 約60日ぶりに再び訪れたリザードマン達の住処で、まずは長老に挨拶しに行く。



「長老様、お久しぶりです」


「おぉダイ殿、お主達が来てくれたのか、アイナさんも元気そうで何よりじゃ」


「お久しぶりです」


「ギルドの依頼で薬草を取りに森に行ってまして、たまたまカイさんに出会いました」


「それは幸運じゃった。エルフのお嬢さんを侵している毒が、我らの薬では治らなくてな、人族の薬を試してみてほしいんじゃよ」


「普通の毒消しだとそちらで使った薬とあまり変わらないかもしれないので、状態異常を解消するポーションを飲ませてみます、毒や麻痺なんかの状態も治せますので」


「貴重な薬かもしれんのにすまんな」



 長老との挨拶を終えてエルフのいる部屋に案内してもらった。



◇◆◇



 部屋には耳が長く、軽いウェーブの掛かった髪が胸元まである、16-7歳くらいに見えるきれいな金髪の女の子が寝ていた。青白い顔で荒い息をしていて、苦しいのか顔には脂汗も浮かんでいる。



「ご主人様、苦しそうにしてますね、早く飲ませてあげましょう」


「そうだな、アイナは後ろから体を支えて上半身を起こしてくれるか?」



 アイナに抱き起こしてもらいながら、少しづつポーションを飲ませていく。なんとか全部飲ませて再び寝かせてしばらくすると、息遣いが落ち着いてきた、恐らく効果があったのだろう。


 長老に報告して、そのまま泊めてもらうことになった。


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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

新しく連載も始めています

いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
強化チートを使いながら気ままに旅する物語
色彩魔法

【完結作】
突然異世界に来てしまった主人公が
魔操という技術に触れ世界に革新をもたらすスローライフ
魔操言語マイスター
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