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回路魔法  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第1章 異世界転移編
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第10話 魔法回路屋

 武器を買いに行く道すがら、アイナに魔法は使えないのか聞いてみた。



「私たち獣人はマナ耐性が低くて、あまり魔法が得意じゃない種族なんです」


「マナ耐性?」


「えっと私も詳しいことはわからないですが、魔法を使っていると目眩がしたり気分が悪くなるんです。獣人族はそれがすぐ起こってしまって、私も魔法を連続で使うのは数回が限界でしょうか……」



 俺がサイクロプスを倒した時は魔法を数十発撃ったけど、特に体の調子が悪くなるとかなかったな。人間と違って魔法主体で戦うのは無理ってことか。



「でも私たちは身体強化のスキルを持ってます。あと私は敵を見つけるのも得意なんですよ!」



 こちらの方を見ながらアイナはグッとガッツポーズをする。ちょっと得意顔になってるのが可愛い。



「身体強化ってどんな効果があるスキルなんだ?」


「力が強くなったり、速く動けるようになったりしますね。でも連続で使ってると体が熱くなってくるし、相手に集中できなくなります」



 アイナの話を聞いていると、身体強化は魔法とは違う能力のようだが、やっぱりデメリットも存在するのか。


 そうしてるうちに目的のお店が見えてきた、剣と盾の看板が目印だ。



「らっしゃい」



 若い店員さんが元気よく挨拶してくれた。店の中を見ると色々な長さの剣や形の違う盾、皮や金属でできた防具が置かれていた。木の杖も置いてるが、種類がいくつかあってよくわからない。



「すいません、この杖で火の魔法が使えたんですが、別の魔法が使える杖ってありますか?」



 店員さんに初めて使った杖を見せて質問してみた。



「あー、ウチには魔法回路を刻んだ杖は置いてないっすね」


「魔法回路って?」


「普通は武器や防具を買うと、お客さんが好きな魔法回路を刻むんっすよ。隣に魔法回路屋があるので、そこで聞いてみるといいっすよ」



 回路を刻むってのがどういう事かわからないが、ここで武器を買って隣の店に行けばいいらしい。とりあえずアイナには短剣、俺は同じサイズの木の杖を購入して移動した。


 魔法回路屋は◇の中が+印で区切られていて、4箇所に火・水・風・土のマークが入った看板が掲げられていた。



「おう、いらっしゃい」



 ガタイのいいおじさんが挨拶してくれた。魔法関係だから線の細い人を想像してたけど、これはこっちの勝手なイメージか。


 棚がたくさんあって、色々なサイズのブロック状の物や曲線の部品みたいなものが並んでいる。魔法にどんな関係があるのかわからないが、ともかく店員さんに聞いてみることにした。



「この杖に魔法回路ってのを付けたいんですが、どうすればいいですか?」


「兄さん魔法回路屋は初めてか? どんな魔法を刻んでみたい?」


「初めてなので良くわからないんですが、森で狩りをする時に便利なのって何があります? いま持ってるのは火の玉が出る杖で、森で使うのは危ないかなって」



 そう言って、火の玉が出た方の杖を店員さんに見せる。



「そうだなぁ、森なら水や土でもいいんだが、獲物が濡れたり土で汚れたりするので、風がおすすめだな。このサイズの杖に刻めるのだと、風の刃が出るのが一番威力も高くて使い勝手がいいと思うぜ」


「じゃぁ、それでお願いします。あと、魔法回路を刻むって、どうすればいいんですか?」



 そう言うと、店員さんは幾何学模様が印刷された半透明の薄い紙を取り出して。



「こいつを回路を刻みたいものに貼り付けて、天気のいい日に外にしばらく置いておけばいいんだ、簡単だろ?」



 日光にしばらく当てると、紙に印刷された模様が消えるので、そうしたら武器や防具に魔法回路が刻まれた合図だそうだ。俺達の居た世界にあったフォトリソグラフィみたいなものか。魔法を刻む物には特殊な処理をする必要があるが、武器や防具に限らず道具や建造物にも刻めるらしい。



「兄さんは初めてみたいだし、良かったらウチで回路を刻んでやろう、少し時間がかかるけど今回は無料でいいぜ」



 店員さんに魔法回路の代金を支払うと、俺の渡した杖に魔法回路が印刷された細長い紙を貼り付けて、店の奥の部屋に持っていった。暗くなってからや雨の日に回路を刻めるように、お店には露光するための道具が置いてあるそうだ。



「良ければそっちにある部品のことも教えてくれませんか?」


「おう、他の客が来るまでなら教えてやろう」



 奥の部屋から戻ってきた店員さんにお願いしてみると快く応じてくれた。



◇◆◇



●この店で取り扱ってる魔法回路は、刻む物の大きさに合わせて大・中・小の3種類。

●大きいほど威力や規模も増すが、発動に時間がかかったりマナ耐性の低い人が扱いづらくなったりする。


●形は直線・四角・円形が一般的で、特殊な形の回路は専門の工房や職人でないと作れない。一番パーツのバリエーションが有るのが直線で、四角や円形は外周から内周にバウムクーヘンのように回路を重ねていくので、サイズの制限がきつく自由度が犠牲になっている。


●魔法のパーツは大きく“充填”“構築”“発動”の工程に分かれていて、充填と構築の部分はある程度自由にカスタマイズできる。構築で選べるのは属性をはじめ、形や大きさ、密度や速度に持続時間などパラメーターごとにパーツが用意されている。

●充填と各種パラメーターのパーツは性能ごとに数段階用意されていて、性能を上げるとパーツも長くなる、手当たり次第に性能を追求すると、魔法回路の印刷ができる長さを超えてしまうので不可能。同じ種類のパラメーターパーツを並べて中間段階の性能にすることも出来る。

●充填部分の規模や、構築する各種性能の組み合わせで相性問題が発生することがあり、下手に自作すると魔法が発動しなかったり威力が大きく落ちたりするので、一部のマニアを除いて自作する人はあまりいない。


●発動は振ったり叩いたり、特定のコマンドワードに反応するタイプもある。

●戦闘中のダメージや状態異常で喋れなくなることがあるので、武器や防具は動作発動タイプ、道具類はコマンドワードタイプが一般的。


●バーツを選んで自作する場合は、選んだパーツを並べて専用の道具に入れると、魔法回路が印刷された紙が出来上がる。

●各工程やパラメーターごとのパーツ接続部分はインターフェースブロックを介して接続されるようになっており、間違った組み合わせや順番で並べられないようになっている。



◇◆◇



 ざっと説明を受けたが、趣味の電子回路いじりみたいで心が踊った。お金に余裕ができたら自作に挑戦してみるのもいいかもしれない。



「風の刃を刻んだ杖が出来たぜ」



 そう言って店員さんが杖を持って戻ってきた。



「裏で動作確認しといたから間違いなく刻まれてる。

 魔法回路を刻んだ杖の何処でもいいから直接触らないとマナは流れないのと、狙う対象をしっかり意識して攻撃する意思を持たないと振っても発動しない2点に気をつけろ」



 そう言いながら、店の奥に向かって杖を振ってみる店員さん。

 攻撃する意思や対象を意識してなかったのだろう、魔法は発動しなかった。



「それと魔法回路を刻んだ装備に2つ以上触れていると魔法が発動しないから覚えておけ」



 杖を渡しながら注意してくれた。



「色々勉強になりました、ありがとうございました」


「おう、また来なよ兄さん」



 魔法に関して素人だと伝えたので、基本的なことから教えてくれた店員さんにお礼を言って店を後にした。



◇◆◇



「ご主人様、なんかワクワクしてましたね、すごく楽しそうな顔をしてます」



 店の中では話しかけてこなかったアイナがそう言って俺の顔を見た。



「うん、俺の居た世界では電気で動く回路があって、それを組み合わせて色々なものを作るのが趣味だったんだ」


「デンキ、ですか」


「こっちの世界で言うマナかな、それを流すことで光ったり音を出したり出来るんだ」


「へー、なんか魔法の道具みたいですね」



 さっきのお店には標準的なパーツしか置いてなかったが、大きなお店やマニアックな店には特殊な回路を取り扱ってるところもあると聞いた、いつかはオリジナルの組み合わせで自分だけの魔法なんかも作ってみたい。


 異世界転移の手ががりを見つけることも大切だけど、回路で作ることが出来る魔法、この世界での楽しみができた。


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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

新しく連載も始めています

いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
強化チートを使いながら気ままに旅する物語
色彩魔法

【完結作】
突然異世界に来てしまった主人公が
魔操という技術に触れ世界に革新をもたらすスローライフ
魔操言語マイスター
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