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回路魔法  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
第1章 異世界転移編
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第9話 真夜中の止まり木

 部屋の中を確認してアイナの方を見たが、緊張してるのか尻尾がピンと伸びていた。



「とりあえず荷物を置こうか」


「はっ、はい」



 ぎこちないやり取りをしながら、テーブルの上に借りてきたランプを置いたり、小さなクローゼットみたいな所にリュックの中に入れていた服をしまったりした。


 妙に意識してしまって会話が続かないので居心地が悪い。



「水をもらってくるよ、今日は森の中も移動したし、ちゃんと体を拭いておこう」


「……!」



 アイナが更に緊張してしまった、余計なことを言ってしまったかもしれない。

 宿屋のおじさんから桶2つ分の水を購入して部屋に戻った。



「体を拭く布はここにあるから、これを使うといいよ。

 俺は外に出てるから、終わったら交代しよう」



 そう言ってタオルと桶をアイナに押し付けて俺は部屋の外に出た。


 アイナはまだ12歳だし、背の高さは妹と殆ど変わらない、外を歩く時に服の裾を掴んで付いてくるのなんて、少し昔の妹と同じ仕草だ。こっちの世界はまだ理解らないことだらけだし、会って間もないのに懐いてくれて、ご主人様と慕ってくれる彼女のことは大切にしたい。



「あの……終わりました」



 そんな事を考えていると、部屋のドアが開いてアイナが声をかけてくれた。。



「じゃぁ交代しようか、すぐ済むからちょっと待っててね」



 そう言ってアイナと交代に部屋に入った。日本人としてはお風呂か、せめてシャワーだけでも浴びたいところだが、水が有料なことを考えると難しいかもしれない。そんな事を考えながら体を丁寧に拭いていった。



「お待たせ、終わったから入っていいよ」



 部屋の外で待ってたアイナを中に入れて、2人でベッドに座った。



「今日は色々あったね」


「そうですね、街に入るのに主人登録しないとダメなんて私知りませんでした」



 今日あったことを2人で話しているうちに、少し緊張がほぐれてきた気がする。

 テーブルの上に置かれたランプの光だけが照らす部屋の中で、俺はアイナに向かって自分の考えてた事を伝える。



「俺、床で寝るからアイナがベッドを使っていいよ」



 そう言うと、アイナは俺の服の裾を思いっきり握りしめて、まくしたてるように言葉を紡ぐ。



「そんなのダメです、ご主人様が床で寝るなんて絶対に嫌です、獣人の私なんて馬小屋だっていいくらいなんです、ご主人様がベッドを使ってください、お願いします」


「でも、女の子なんだし、ベッドを使ったほうが――」



 そうして、「ご主人様が」「いや、アイナが」というやり取りをしばらく続けて、結局こうなった。



◇◆◇



「ご主人様、狭くないですか?」


「大きいベッドだし大丈夫だよ、それよりアイナは俺と一緒に寝るのは大丈夫かい?」


「はい、知らない街で、初めてこんなふかふかのベッドで寝ますが、ご主人様と一緒なので安心します」



 そう言って、俺の服の裾に手を伸ばして握ってきた。



「私、ご主人様と出会えて良かったです。

 今日一日だけでも、美味しい食べ物をお腹いっぱい食べることが出来たし、服もたくさん買ってもらいました」



 今日、寝間着用に買った緩めの服を着たアイナが、こちらの方を見て微笑んでくれた。



「アイナは異世界に来て出来た大切な友達だからね」



 そう言いながらアイナの頭に手を伸ばして髪を撫でる。目を細めて気持ちよさそうにしていたが、やっぱり慣れない街で緊張していたのかすぐに寝息を立て始めた。


 そんなアイナを見ながら俺も眠りについた。




―――――・―――――・―――――




 朝、目が覚めると右腕に重みを感じた。横に目を向けると俺の腕を枕にしたアイナが胸に顔を埋めて寝ていた。


 寝ている間に俺の方に寄ってきてしまったようだ、ちょっとドキッとしたが気持ちよさそうに寝ているアイナの姿に頬を緩めつつ、髪を撫でたり頬をぷにぷに突いたりしていると、少し身じろぎして目を覚ました。



「ふわ……ご主人様、おはようございまふ」


「おはようアイナ、よく眠れた?」


「はい、なんかいい夢を見た気がしますー」


「それは良かった、じゃぁそろそろ起きようか」



 まだ寝ぼけているのか、くっついて寝ていたことに気づかないようなので、そのままベッドを降りてそれぞれ着替えをして、荷物をまとめて宿屋を後にした。


 今日は2人の武器を買いに行く予定だ。


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◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇

新しく連載も始めています

いきなりドラゴニュートの少女の父親になってしまった主人公が
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【完結作】
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