デート
「ところでさっきキミは何で血だらけだったんだ?」
屋台の食べ物で餌付けしているうちに打ち解けてきた騎士団長様が聞いてきた。
「ちょっと魔物とやりあってまして。なんか黒いゴリラで、あれなんて言うのかな? そいつら群れできたんでちょっと無理矢理な捌きかたになって返り血が付いちゃいました。」
「黒いゴリラ? 知らないな……どこで見たんだ?」
「魔界です」
騎士団長様はギョッとした。その拍子に持っていた焼き鳥がポロリと落ちるが、俺がスムーズにキャッチして口に運ぶ。美味しい。
俺はヘラヘラ笑った。
「冗談ですよ~そんなことあるわけないじゃないですか! あっ! あの服かわいい! 行きましょう騎士団長様!」
「じゃあどこで、てゆうか今私が口付けた……うん行く!」
騎士団長様は混乱すると素直になる性質を持つ。高いレベルを持ってなかったら今頃酷い目にあっていただろう。いや、酷い目に会いそうだからレベリングを必死で行わせたのかもしれない。
俺たちはその後屋台や店を一通り楽しんだ。
◆◆◆
「ここ鍛冶屋さんだよね? なにか用事あるの?」
奥から熱気が伝わってくる武器や防具がきちんと並べられた店。
俺たちは最後に鍛冶屋にたどり着いた。
ここの鍛冶屋は王国で最も人気で腕のある鍛冶屋だ。騎士団や上位ランクの冒険者は必ずここで武器や防具を作る。
高い品質ゆえしょうがないことなのだが値段はお高くなっている。今回依頼したアイテムを作るのに3000万かかった。
俺がそれなりに高給取りなのが幸いした。
「それはですね……親父さん! 俺だよ!」
俺は奥の方に声をかける。すると筋骨隆々な小人がやってくる。髭もモジャモジャでドワーフと言われて想像したときに思い浮かぶイメージでいいと思う。
「おう、シンか! 例のやつだろ? できてるぜ! ついてきな」
俺は何がなんだかわからないという様子の騎士団長様を引っ張ってドワーフの鍛冶屋さんに着いていく。
「実はですね、今回団長様を誘ったのは渡したいものが有ったからというか、いや、一緒に町をまわりたいっていう気持ちもちゃんとありましたよ!? すごい楽しかったですしね」
「う、うん」
「で、その、渡したいものなんですけどね、ちょっと、その、恥ずかしいので、その、目を瞑っていただけませんか?」
女性にプレゼントを贈ることなんて転移する前も全然なかったから、こう面と向かって渡すとなると緊張してしまう。
その空気を察知したのか騎士団長様は素直に目をぎゅっと閉じる。
俺は鍛冶屋さんから依頼していたものを受け取って団長様の手を取る。団長様も緊張しているのか少しばかりの汗で手が濡れている。
俺は団長様の指に依頼していたもの、そう、指輪を嵌める。
「だ、団長様、目を開けてもらってもいいですよ……」
団長様が俺のあげた黒い指輪を見る。
色恋沙汰に疎い団長様とはいえ指輪をあげるということがどのような意味かは知っているらしい。顔を真っ赤にして、口をパクパクさせて
「これは……! これはあれだよね?うぇっ?あれだよね?いきなりすぎるというか、ちがうの! 嫌って訳じゃなくて混乱してて、けどえ?なんで?や、やっぱりだめだよ、だめだよ?だめだよ! わ、私は騎士団長としての使命があってみんなの見本にならなきゃこんな……」
俺はクスリと笑う。
「騎士団長様、一度外そうとしてくれませんか?」
「な、なんで?や、わ、わかったよ?」
混乱した調子の騎士団長様は指輪を外そうとする。
しかし
「取れない! 取れないよぉ!」
付与はかかっているらしい。成功だ。
俺は騎士団長様にネタバラシをする。
「実はですね、それ呪われてるんですよ。」
団長様はポカーンとこちらを見る。
俺は続ける。
「騎士団長様って見ててもなんというか……危ういじゃないですか?知らない人についていきそうというか。それで俺思ったんですよ。騎士団長様の居場所がいつでもわかるようにならないかな?って。それで作ったのがこのアラームリングって言って一時間に一度騎士団長様の居場所を俺に伝えるっていう効果がありまして。作るのには苦労したんですよ?ミラ、筆頭魔道士のミラ、彼女です。彼女とかにも手伝ってもらって試行錯誤の後作り上げたのがこれです。見事でしょう?この細工、親父さんには本当に感謝です!本当にありがとうございます!」
「へっ! いいってことよ! 気にすんな!」
ドワーフの鍛冶屋さんは照れたように鼻をかく。
「簡単に外れちゃ不味いので呪いをかけて、あっこれは俺がやったのでレベル70以上の僧侶じゃないと取れませんよ?そんなやついるかな?あとなんで指輪にしたかっていうのはまああれですね。男避け……みたいな?ってなんか恥ずかしいな。副作用でアンデッド系のモンスターが寄り付きやすくなるんですけど、騎士団長なら大丈夫ですよね?いいレベリングになりますよ!」
「え、え?や、やだぁ!アンデッドやだぁ!」
騎士団長様はいやいやと首を振る。彼女はアンデッドが苦手なのだ。
しかし、いつまでも苦手とはいってられないだろう。これから勇者パーティでやっていくにしろ、騎士団長としてやっていくにしろ苦手なものがあるというのは致命的だ。
「おかーさまに取ってもらうから!おかーさまはすごい僧侶なんだから!」
そういって涙混じりに騎士団長様は走り去っていく。
だがそれは無理だろう。レベルが足りないしこの計画は彼女の母親にも話を通してある。
「お前は相変わらずひでえ性格してんな」
一連のやり取りを見ていたドワーフの鍛冶屋さんが引いたようにいった。
俺は騎士団長様にもっと強くなってほしいのだ。