王様ぁ!
次は24時。ブクマもらえるとやる気が全然違ってきますね。(/ω・\)チラッ
扉を開けた途端失神した騎士団長を尋問して俺に初任務が下ったことを知る。
そして今、王様から直々に詳しい話があるとのことなので王室に向かっているところだ。
俺は会話のないこの場を盛り上げるべく努めて明るく振る舞う。
「やっとですか! 騎士団長様!」
俺が元気いっぱいに言うだけで騎士団長様はビクリと震える。
「う、うん……」
……
会話終了。
俺は気付かれないように視線を騎士団長様に向ける。
騎士団長様は俺の一挙一足に警戒しており、その姿は小動物を思わせる。愛らしい。
怖がられているらしい俺から一つ留意してもらいたいのは俺個人としては騎士団長様を尊敬しているし、心の壁を築いて欲しくないと思っている。
俺は転生後一時期スれてたんだがその頃騎士団長様に慰めてもらいとても世話になった。
だから恩返しのつもりでちょくちょく遊びに誘ったりしてたら騎士団長様がトラウマを患ってしまったという運び……悲しい。
これも強すぎる力が故か、力とは虚しいものだ……。
そうやって黄昏ムーブメントをしているうちに王室の前に着いていた。
「で、では私はこれからその、用事があるので失礼する。くれぐれも国王陛下に粗相の無いようにな!」
「本当ですか?」
俺は威圧するようにギラリと視線を向ける。
「ほんとじゃないかも……」
本当じゃないんだ……そんなに嫌われてるとは知らなかった。
これ以上一緒にいても傷つけるだけだと分かったので騎士団長様とバイバイする。
騎士団長様はパアッと笑顔を咲かせて鼻唄混じりのスキップで遠ざかっていく。ああ、かわいいなあ。後で遊びに行こう!
◆◆◆
「ずいぶんと待たせてしまって申し訳ないが、シン君、キミに初任務が申し付ける。」
そう言うは立派なカイゼルひげを拵えた壮年の男性。我らがエスタト王国の国王である。
「はっ! 何なりと!」
「従順すぎるのがダメなのかなあ……?」
ボソリと呟いた国王の声を俺の耳がキャッチする。何が?
「実際前々から聞きたかったんだがね、キミはほら、滅茶滅茶強いじゃないか? それこそこの国を滅ぼしてもおつりが来るぐらいに。なんかこう、反抗したいとか思わないわけ?」
「一切考えたことはありません!」
何ゆえ?
「うーんこんないい少年なのに何でヘイゼルは怖がっているんだろう。」
ああ、そのこと。それにはやむにやまれぬ事情がありまして。
「まあよい、仕切り直してこれより任務の詳細を説明する。これからキミには……勇者になってもらう!」
勇者? 俺は《看破》を使って自分の職業をみる。そこには大きく【暗殺者】と書いてある。無理じゃないですかねえ?
◆◆◆
王様は勇者に叛意を持つ者をあぶり出したいとのことだった。それで俺は誰も知らないスキルがあったり誰にもひけをとらないレベルが有ったりと勇者役をつとめるのに丁度いいとか。
ちなみに勇者というのはこの国の伝説のヒーローとかで魔王を倒せる唯一無二の存在だ。一月後を目処に召喚の予定をたてているらしい。
召喚といってもどこかの世界で死んだ筈の人間をこう、移動の際のタイムラグを利用して、なんやかんやで召喚するらしい。
しかも俺のときの反省を踏まえて任意召喚制にするらしい。
俺も異世界召喚されたクチだが強制だった。
しかしなぁ……俺は雷にうたれて死んだのだが、元の世界の家族や友人、ペットの顔を思い出そうとすると決まってこの国で信奉する女神の顔が思い浮かぶ。
女神像を見ると敬服しそうになるし、定期的に『目覚めなさい、目覚めなさい』とコールが入る。
これヤバイやつじゃん! 洗脳のやつじゃん!
と思い、いつもコールは無視してる。洗脳する女神なんて聞いたことないし、女神が何したの? って皆に聞いてもよくわからないって言うしでさぁ……これ女神様がラスボスのパターンじゃないの?
話は戻って、それで俺には勇者役としてこの国や近くの町をまわってもらってほしいとのこと。
「召喚したばかりの、レベルの低い時期を乗り越えるまで、一番危険な時期さえしのげればいい。報酬は弾む! どうかよろしく頼む!」
王様が頭を下げて言う。何ともおそれ多い!
「国王陛下! 止めてください!頭をお上げください! 国王陛下のご命令とあれば例えどのようなことでも成し遂げますとも!全てはこの不肖モニ・シンにお任せくださいませ!」
王様が頭をあげて感激の念堪えずといった調子で
「本当に助かる……私はよい部下を持った……!」
さて、報酬は何に使うかな。
俺の頭は報酬の使い道でいっぱいだった。
◆◆◆
パーティメンバーは四人。4という数はパーティ形成の不文律である。パーティを作る際に最も大切なこと、それはいかに平等に働かせるかということである。
3人以下ならばヒーラーが手持ちぶさたになるし、五人以上であればアタッカーが働けない状況というのができてくるし報酬が減る問題もある。
それに四人だったら自分以外の三人を動きを監視できる。
たいてい起きるパーティ内での関係悪化は不平等によるもの。現に四人パーティにするようになってからパーティ内での紛争は激減したらしい。
で、俺のパーティ。
まずパーティを組むにあたって必須な僧侶は聖教会から、高いレベルかつ人間のできた者を選ぶとのこと。
そして残った二人はもうすぐ行われてる武闘大会で優勝、準優勝した者をとるとか。
王様の話では多分騎士団長様が選ばれると聞き、心が浮き立つ。
顔見知りがいるというだけで少し気楽になる。
「ですって!騎士団長様ぁ!」
「やだぁ! 私、出ない! 負ける! わざと負けるぅ!」
そういいつつも勝負事では手を抜くことはないだろう。難儀な性格をしている。そこが魅力的なのだ。
俺は王様の話が終わってすぐに騎士団長様の部屋に行って話をしていた。
騎士団長様は毛布にくるまり駄々をこねている。
「それでですね、もう見納めになるエスタトの町をですね、騎士団長様と一緒にまわれたらなと思いまして。どうか! お願いします! こんなこと頼めるのは騎士団長様しかいないんです!」
そう言うと騎士団長様は顔だけを恐る恐る毛布から出す。
「私……だけ?」
「はい! 貴女だけしか!」
「い、いじわるしないよね?」
「勿論ですとも!」
「そうか……そうか! それじゃあしょうがあるまい! キミと一緒にまわってやろう!」
騎士団長様はそういって毛布をばっとはねあげ、纏っていた鎧を輝かせる。
騎士団長様はお願いを断れないのだ。