プロローグのプロローグ
一人の女性が扉の前でたたずんでいる。
その女性は、ここエスタト王国の騎士団長にして、貴族令嬢顔負けの美貌、そして国民思いの優しい性格を持ち、民衆からの絶大な人気をほこっていた。
特筆すべきは瞳。
凛としたエメラルドの瞳は男女問わず多くの者を魅了する。
強さを感じさせる眼、国を守ろうとする心の強さが伝わってくる眼、女が騎士団長を勤めることに一切の非難の声が挙がらないのはその瞳が大きな理由である
が
「だいじょうぶだいじょうぶ、私はできる子。こわくない……」
今の彼女からは強さの欠片も感じられない。
眦に涙はいっぱいに溜まり今にも決壊しそうで、足はプルプル震えていた。
このような姿を国民が見てしまえばギャップ萌えで恋に落ちてしまうこと間違いなしだろう。
「私は代々きしだんちょーを輩出する名家の長女!誇り高きブライトブレイド家の血を引くえらい子!けどえらいなら誰かに任せれば…まちがえた、私が……そう、私が皆の見本にならなきゃいけないんだ…いけないんだ!」
決心するように顔を上げる。その際に溜まった涙が落ちる。
それは弱さとの別離だろう。決別だろう。
彼女はもう
恐れない。
「エスタト騎士団団長、ヘイゼル・ブライトブレイド!いざ参る!」
扉を勢いよく開く。
そして言う。
「モニ・シン!キミに任務がうぎゃー!」
決心から僅か数秒であった。
部屋の中にいたのは返り血に染まった黒髪黒目の少年。
「また倒れたよ…嫌われてんのかな?俺」
普通にしているだけでほぼ臨界点なのに血だらけという凄絶な姿であれば失神は必至。
かつてこの少年に数々のトラウマを植え付けられた精神には負担が大きすぎた。
騎士団長ほどの者にトラウマを? と思った方もいるかもしれない。
そう、この少年はそれ以上に強いのである。
レベルが戦闘力に直結するこの世界。
平均レベル10の世界において騎士団長ですらレベル35。
そしてこの少年、モニ・シンは
レベル185であった。
まさにバランスブレイカー。もしこんなやつがゲームにいたら運営に非難が殺到するだろう。
これはそんな少年、モニ・シンが送る様々な日々を紡いだ物語である。
感想評価よろしくお願いします