新たな展開
「入学か・・・なんか複雑・・」
少女は、入学プリントをビスケットを食べながらまじまじと見つめていた。
少女の名前は吉田 麻美、今日の深夜12時に魔法界にある学校に入学することになっている。
「あと、30分、、」
壁にかかっている時計をプリントと照らし合わせた。
ジョイス魔学学校、、、
「緊張する、、」
一言呟くとイスを鳴らした。
コンコン・・・
「入ってもいい?」
明るく弾んだ女性の声が鳴った。
「うんいいよママ」
ガチャリとドアノブが半回転すると黒いワンピースにひときわ目立つパールのネックレス
と緑のイヤリングをした女性が立っていた。
「麻美、支度は出来た?」
「うん」
紺色のブレザーにパリっとしわの伸びたカッターシャツ赤いリボンとスカートはジョイス魔学学校の制服だ。
「どう?」
「制服でしょ?よく似合っているわよ」
「そう?ありがとうママ」
麻美は、はにかんで顔を赤らめた。
「麻美そろそろ」
「あっほんと!行かなくちゃ」
午後11:50分
「でっでも私学校までどうやって行くか知らないよ?」
「大丈夫よ案内してくれる子が来てくれているから」
「えっ?」
麻美は魔界に今日、初めて訪れる。
もちろん麻美に魔界に知り合いはいない。
「それと、、、」
マリ(麻美の母)は右手の一指し指をヒョイと動かすと瞬間的に左手に赤い水筒が出てきた。
「これを持って行ってちょうだい」
「何が入っているの?」
「何も入っていないわ、空っぽよ」
「??」
不思議に思った。
基本的に水筒って何らかの飲み物を入れる道具のはず、、
なのに何にも入っていないだなんて、、、
しかもあの水筒は私のじゃない、、ママのだ、、
飲み物を入れる目的じゃない、他の目的があるのか?
そうこうしている間にマリは麻美のバッグに水筒を詰め込んだ
「よろしくね」
マリは超越者とも呼ばれる魔術師だった。
魔術師の子供ということだけあって麻美はマリの後継者になるべくこの魔学を学べる学校に
入学することになったのだった。
人間界とは別の世界に、、、
「ママ、案内してくれる子って誰なの?」
「向こうの子よ」
「魔界の?」
「そうよ、でも大丈夫ママがちゃんと頼んでおいたから、ママは今日実験があるから入学式には出られないけど、、」
「うん」
11:55分
「ささっ時間よ行きなさい」
「うん行ってきます」
麻美は真新しい革靴をはくとドアノブに手をやった。
ガチャリと回すと月明かりがキラリと差し込んだ。
「いい旅立ち日和ね、満月だわ」
「じゃ行ってきます」
家の外へ飛び出すと自然に扉の閉まる音を聞いてから歩き始めた。
バッグを肩にかけて道路に出ると見慣れない少年が家の塀にもたれていた。
「やっと出てきた、」
フワリと夜風が吹いた。
乱れた髪を手で直しながら少年を見た。
乱れてもそのままのくしゃくしゃのキャラメル色の髪
艶やかな赤い目は季節はずれの真っ黒のコートのおかげで目立った。
背中には身の丈ほどある布の包みを背負っていた。
「じゃ僕の後ついてきて」
少年は麻美の前をゆっくり歩き始めた。
それに習うかのように麻美もその後をついて行く
「君が案内人?」
「そう」
「名前は?」
「SASKE/1500」
「それ名前?」
「一応」
「ふーん」
「でも長いからサスケでいいよ」
「サスケ、、分かった」
麻美より背の高いサスケは歩幅も大きいので麻美は小走りになっていた。
しばらく歩くとサスケは唐突に立ち止まった。
「ここ」
「魔界の入り口ここ?」
「そう」
見渡す限り住宅地で自分たちの立っているところはそのど真ん中なのだった。
「どこから入るの?なんにもないじゃん」
そんな麻美を横目にサスケは黙々と作業を進めていた。
内ポケットから使いかけのチョークを取り出した。
「チョーク?」
麻美が言っても知らん顔をして足元にあるマンホールに何かを書き始めた。
かなりいりくんだ模様がどんどん出来ていく。
チョークを持った手を止めることなくサラサラとサスケは書き進めて行った。
「よし、出来た」
全体を見ると出来上がったその絵は怪獣の形として見て取れた。
満足そうにサスケはニタリと笑うと右手をマンホールにポンと乗せた。
目を閉じるとマンホールからまばゆい光が輝き始めた。
現在時刻12時
当然深夜なので辺りは暗い
「よし」
サスケは閉じた目をうっすら開きマンホールの上から手を引いた。
同時に光は吸い込まれるように消えた
「入って」
サスケはマンホールのふたを取って麻美に中に入るよう促した。
すると向こうのほうから声が聞こえてきた。
「麻美〜〜!!」
「ママ!!」
左手に何かを持っている。
「どうしたの?ママ」
ハァハァ、、、息を切らしながらマリは麻美たちに追いついた。
「ハァハァ、、麻美!忘れ物よはい学生証」
「あぁぁっっ!!ほんとだ!!ありがとうママ」
「いいのよ、それよりうまく案内してもらってる?」
「うん!とってもいい人なんだよ」
「よかったわね」
「うんサスケくんって言うの、、、」
サスケを見るとサスケはブルブルふるえていた。
固まって動こうとしない。
「サスケ?どうしたの?」
「あぁそうかサスケ君は、、、」
マリは笑いながらサスケを見た。
「サスケ?、、、、」
「すっすいません」
マリにやっと言えた一言だった。
あいかわらずブルブルふるえていた。
「麻美をよろしくね」
「りょ了解です、、、」
「じゃママ帰るからね」
「うんありがとう」
次の瞬間もうママはいなかった。
「よくこんなしゃれた魔法の使い方をするなぁママは、、学生証はここにあるのに、、」
「えっ?」
サスケは顔色を悪くしてこっちを向いて言った。
「ママは忘れ物を持ってくるふりをしたのよサスケに会いにね」
「・・・・」
サスケは何も言わなかった。
「ママは何をたくらんでいるの??」