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Sounds Trap  作者: 黒岩 優
1/1

はじまり

レグノは少しだけ夢を見ていた

ほんの少し 幸せ だった頃の夢を


閉ざされた門の前で遊ぶ子供たち。

その中の赤い髪、レグノ。

赤い髪に赤い瞳、深紅に染まった容姿に加えて美しい端麗な顔立ち。

逆に整いすぎるその顔は、人間以外の何かを思わせるものであった。

彼には友達がいなかった。

だから今も、こうして独りで砂遊びをしていたのだ。

「あの子、一人ぼっちなのかな」

金髪の、青い眼をした人形のような少女が呟く。

隣で、「知らないの?ミハエルちゃん」と、茶髪のそばかすが言う。

「あいつは死神なんだよ」

「死神って?」

ミハエル、と呼ばれたさきほどの少女は首を傾げる。

「生きてる人間を、」

別の声がする。低く、地を這うようなーーー

「あの世へ連れていく人さ!」

「きゃぁぁぁぁああああ!」

がばっと茂みから現れた長髪の青髪の少女は、ミハエルの背中を掴み、「ばぁっ」と言って自分のもとに引き寄せた。

「だめだよ、リオ。いじめたら。」

茶髪の少年がたしなめる。

「あら、アルファ?あなたが言えることかしら。」

ふん、と鼻を鳴らした美少女、リオがアルファを見下す。

少しばかり背の低いアルファは「やれやれ」と手を肩まで挙げると、ミハエルを掴む手を掴んだ。

そして、ぐいっと彼女を引寄せ、耳元で

「聞こえてないのかな」とささやいた。

「き、きこえ、ないのかも。」

傍にいたボールを持った少年が首を横に振り、他の子供たちもそれに倣う。

そんな中、少女リオは嬉しそうにレグノのもとに駆け寄った。


「ねぇあなた。こちらで遊びませんこと?」


レグノは暫し目をぱちくりさせた。

しかしすぐに「ごめんね。僕、遊んじゃダメなんだ。」と言って、膝の砂を払い除けた。

「お父さんに怒られちゃうんだ。」

「あら、なら残念ね。」

リオはあっさりとそう切って、すたすたと輪の中に帰っていく。

『えー!ダメなんですかぁ?』

「ダメだよ、ひよ。前もそうだったじゃないか。」

『ですがぁー』

「じゃなくて、ダメなものはダメ。」

『ひよは遊びとうございます!』

肩のひよこ(?)と一生懸命会話するレグノを、ミハエルはしっかりと見ていた。

「ひよはダメだな、怒られたことすぐ忘れるんだから。」

めっ。と口を尖らせ、レグノは淋しそうに俯いた。


遊びたいな


何て言ったら怒られちゃうかも


純粋に、そんな良心が芽生えていた。

多分そうだろう。そうだったはずだ。

暫くして、ひよがいないことに気がついた。

『みなさん、私はひよと申します。あなたがたは?』

あぁ、遅かった。

もうすでに、ひよはレグノの元を離れて、輪の中に浮いていた。

「遊ぼ!ひよちゃん」

皆楽しそうにはしゃぐ。

レグノには刹那、それが錐のように暖かな何かを貪り、朽ち果していくように感じた。

ただの事実。ただの現象。

なのに、こんなに痛いなんてーー

「ぼ、僕はレグノ!」

いつの間にか輪に向かって叫びかけていた。

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