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小さな写真集

月見日記 ~月が教えてくれたこと~

作者: 空乃 千尋

 9月19日。

 夕日が沈んだ空に、三日月が見えました。

 少し黄色み掛ったそれは太陽を追って、あっと言う間に沈んで行きます。


 9月20日。

 昼の晴天の中に月影を見つけました。

 昨日見た姿より少し面積を広げ、まだ空の低いところに浮かんでいます。

 その色は、千切れて流されて行く雲の色と似たものでした。

 夕方になると晴れ間より雲の方が増え、西の空に見事な景色を創っていました。

 彼岸花の遥か向こうで、雲から陽光が噴き出していたのを覚えています。

 この時、まだ月は雲の中に隠れていました。

 すっかり日が暮れた後、ベランダに出てみました。

 南の空には、白く輝く三日月が良く見えました。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


 9月21日。

 月は見えませんでした。

 秋らしい羊雲の姿ばかりが記憶に残っています。


挿絵(By みてみん)


 9月22日。

 半分より少し大きくなった月が見えました。

 どうやら昨日が半月だったみたいです。

 脚の速い雲が月の前を横切って行きました。


挿絵(By みてみん)


 9月23日。

 この日も夕焼けが綺麗でした。

 紫めいた雲の先で、放射状に伸びた滑らかな雲が輝いていました。

 薄らと見える山の周りには、さっと筆を流したような雲が赤く染まっています。

 それから西の空がすっかり灰色になった頃。

 東の空には月が登ってきていました。

 濃紺に染まって行く空に、柔らかい光が際立って見えます。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)


 9月24日。

 確か曇っていました。


 9月25日。

 酷い雨でした。


 9月26日。

 この日に今年のスーパームーンの話を聞きました。

 そういえば、月を見た記憶がありません。

 曇っていたのでしょうか?


 9月27日。

 今日は中秋の名月。

 その名に違わぬ見事な丸い月が見えました。


挿絵(By みてみん)


 9月28日。

 西の空の端がまだ微かな光を残している頃、歩道橋を渡っていました。

 大通りの先にあるビルの隣に、とても大きな月が見えます。

 その黄色い光は美しい円を描いていまして……。

 おや?

 ……、円ですよね?

 ……。

 ええ、知らなかったんです。

 中秋の名月って、必ず満月という訳ではなかったんですね。

 帰りの電車で慌てて調べて、漸くちゃんと気が付きました。

 何やら、とても恥ずかしくなりました。

 恐らく、澄ました振りをしながら、でも微妙にあたふたしていたと思います。

 もしそんな人影を見掛けていましたら、もしかすると私だったかもしれません。


 午後7時。

 電車を降りて、家路に着きました。

 住宅街を抜けて少しすると、東の空が開けて行きます。

 満ちた月が、先程よりも白くなった光を落としていました。


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 美しい月の記録。ありがとうございます。
[一言] こんにちは。海野です。 空乃さまはいつも、こんな風に景色を捉えていらっしゃるのですね……空乃さまの詩の美しさの由来を、少しだけ知れた作品でした。 素敵な作品の投稿、いつもありがとうござ…
[良い点] 千尋さんこんばんは(^_^) 読ましてもらいました。 月にスポットを当てたとても美しいエッセイですね(^o^) 文章と写真がうまく合わさっていて幻想的な世界を見ているようでした。 心に残る…
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