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1934年9月 カムチャッカ半島にて(1)

 中世から近世に変わっていく節目の時期に古典力学から生み出されたものの一つに、"位置エネルギー"という概念がある。


 曰く、「高い位置にあるモノほど多くの運動エネルギーを潜在的に秘めている」と端的に言い表せるこの概念は、振り子時計から雑技団のブランコ、そして水力発電に至るまで様々な分野に利用されており、未来からもたらされた物理学のテクストにも専門の項目が設けられていた。

 生憎、千早はテクストをちらりと読んだだけで済ませてしまったため、内容の細かい部分までは覚えていない。

 大学の第一線で研究する学徒ではないのだ。

 門外漢たる一航空士にとって大事なことは、この理論がいかなる局面に応用可能なのか、ということだった。


 こうして手前味噌に引きつけての考察を重ねた結果、千早はある結論を見出す。

 それはつまり――、航空戦闘において"高度を取った航空機は低空の航空機よりも優位の運動エネルギーを保有する"ということであった。

 航空機が保有する運動エネルギーは、単純な速さのみに現れるわけではないのだ。

 生田との模擬戦闘、エドワード・ショートとの試合、ソビエト部隊との航空戦など――、仮説を実証できる空戦を短期間に数多く経験できたことは千早にとって幸運であった。


 思うに、航空戦とは運動エネルギーの奪い合いなのだろう。

 航空戦で勝つためにはどうしたらいいのか。

 簡単である。

 自機の運動エネルギーを保ちつつ、敵機のエネルギーを削ればいい。

 運動エネルギーのある、いわゆる速い機体は弾を当てにくく、追うことも逃げることも難しい。その逆もまた然りである。


 では、どのように飛べば運動エネルギーを保てるのか。

 余計な空気抵抗を機体にかけず、エネルギーを減衰させなければいい。

 減衰は回転ロール旋回ターンのような、空戦機動中にこそ増大する。

 故に勝利の秘訣は、なるべく空戦機動を避けつつ、相手に空戦機動を強いることにある。


 そして、もう一つの重要な要素が航空機のエンジンであった。

 エンジンとは人体における心臓部であり、減衰していくエネルギーを補充する役割を担っている。

 生み出すエネルギーが大きければ大きいほど、敵機と有利に戦えるのだ。


 今までの戦闘を分析するに、"赤色"たちの駆るソビエト機は、基本的に護民艦隊の水上機よりも強いエンジンを載せていることが分かっていた。

 エンジンが敵のそれに劣っていれば、当然生み出すエネルギーに差が生じてくる。

 上昇速度も巡航速度も、その他全ての速さに関わる性能で水を開けられてしまう。

 振り切れず、追いつけず、そんな不利な戦いを強いられて、実力で勝る相手に競り勝つにはどうしたらよいのか?


 正攻法では勝ち目がない。

 故にソビエト機に勝つためには地の利を――、運動エネルギーへと変換のできる"高さ"を味方につけるべきなのだと、千早は考えた。



 高度5500メートル。

 "海猫"の下方、豆粒のような編隊をちらりと見ながら、千早は徐々に徐々にと機体の高度を上げていた。


『……話は分かった。なら、俺らが囮を務めます。そうすりゃ、敵さんに護民さんの鉄砲玉が届くでしょ』

 急きょ開かれた航空会議にて出された加藤の提案は、千早たち護民艦隊の航空士に少なくない衝撃を与えた。

 囮を務めるということは、自分たちで敵を打ち破ることを諦めたと言っているに等しい。

 果たして本当に海と張り合い、面目にこだわる陸が出した提案なのか、これは。

 当人の口から聞いたというのに信じられない心地でいる航空士たちに向けて、加藤は苦笑いを浮かべて続けた。


『機体の性能差は残酷よ。うちらの水偵じゃ降下ダイヴも遅いし、上昇ももたつく。それに……、護民さんには昨日も夜も世話になったからね。うちらも負けずに体を張らんと』

 その言葉を聞いた陸の面々が、「そうだそうだ」と笑い声をあげながら彼の提案を後押しする。

 例外として、「俺は負けてませんよ」と文句にも似た口答えを篠原がしていたが、その表情を見る分には特に異論はないようであった。


『そちらの生田さんが体ぁ張って、うちらがしないのはナシでしょ。次に踏ん張るのは陸の仕事。あんたたちは確実に敵さんを仕留めてくれよ、な?』

 そんな彼の言葉を思い出しながら、高度2500メートル付近を飛ぶ九〇式二号水偵を1機ずつ視界に収めていく。

 マッキやチャイカの飛び交うこの戦場において、1段も2段も格の下がる機体であった。

 だが、心強く、頼もしい。

 彼らの一糸乱れぬ編隊飛行は格の差を感じさせぬ力強さを感じさせてくれた。


 恐らく、彼らは最後の1機になっても囮任務を完遂させることだろう。

 囮に関しては全く問題はない。

 この作戦の成否は、つまるところ護民艦隊航空機部隊が役割をこなせるかにかかっているのだ。


 渡り鳥のような群れを作る陸軍出向部隊とは異なり、護民艦隊航空機部隊は同高度に間を広く取った散開隊形をとっていた。

 敵による早期の発見を恐れるがためである。

 事前の取り決め通り、作戦中は個々に信号も送り合わない。

 生田機を抜いた7機が独自に動き、各自の判断で運動エネルギーを失った敵機体を狙い撃ちにしていくという算段だ。


 果たして成功するだろうか?

 不安がよぎる。

 この奇襲作戦は初手で全てが決まるだろう。

 ひとたび敵がこちらに注意を傾けてしまえば、おしまいだ。

 恐らく撃墜の好機は2度もやって来ない。

 だからこそ最低でも、自分らは一機一殺の覚悟を持つ必要がある。いや、生田がいない分、自分は余計に励まねばならない。

 千早は武者震いする手を抑え込むようにして、操縦桿を強く握りこんだ。



 高度6000メートル。

 飛行服を着ていても、凍てつくような寒さを感じる。

 エンジンの調子が悪い。高度が上がると、気圧の変化で燃焼効率が悪くなるのだ。

 息も苦しい。

 自然と呼吸の量が増えていく。

 千早自身、こんな高いところを飛行したのは初めてであった。

 青く、薄く、ほんのりと丸みが見て取れる大地と海の表面が眼下に広がっており、自分が小人にでもなったかのような感覚さえ覚える。

 エドワード・ショートへ送る手紙の内容が決まった。

 願わくば、彼の兄ともこの空を共に飛んでみたかったと思う。


 ――豆粒大の加藤隊が、前方より飛来する別の豆粒と遭遇した。

 最前線から飛来した、ソビエトの航空機部隊だ。

 即座に先日の焼き直しにも見える航空戦が展開される。

 味方が渦巻を作り、敵がさながら回遊魚のように渦巻の中へと突入していった。

 2機の機体が火を吹いて空を落ちていく。友軍機だ。水偵でチャイカを倒すのは難しい。

 焦れる。

 焦れる。


 更に航空戦は続けられる。

 上手く機体を制御して、敵機の後ろを取ったのは篠原機か、加藤機か。格上を相手に良く戦っていた。

 だが、隔絶した機体の性能差は反撃の一手も許さずに、両者の距離が開いていってしまう。

 やはり、"赤色"やチャイカが本気で上昇に専念してしまえば、水偵のエンジンに食らい付く力はないのだ。


 千早はまばたき一つせずに、乱戦の中から"赤色"を探す。

 他は部下に任せれば良い。

 生田が空に上がれない以上、自分があれを仕留めねば、こちらに勝ちの目は無いのだ。

 雲霞うんかの群れから1匹を探り出さんとする難事は、意外なほど早く終わった。

 "赤色"の飛行が、他のそれよりもあまりに水際だったものであったからだ。


 わずかな失速も許さず、風を切り裂くようにして航空機と航空機の間をくぐり抜け、瞬く間に味方機を撃墜してしまう。

 ため息の出るような技量であった。

 その強敵を、千早は今から屠らねばならない。

 敵機の運動エネルギーを冷えた頭で観測する。

 まだ速い。

 加藤機の反撃を上方宙返り(ループ)によって回避する。

 途中、回転も交えた。インメルマンターンと呼ばれる、ドイツ生まれの空戦機動だ。

 ――まだ余力を残している。


 "赤色"が上昇を始めた。加藤機の吊り上げを狙っているのだ。

 エンジン出力で優れていれば、途中で失速した相手機を迎え撃つことができる。

 2機の運動エネルギーが位置エネルギーに変換され、目に見えて速度が落ちた。

 ――ここが好機だと判断する。



 操縦桿を傾けた。"海猫"を逆落としの体勢にする。

 エンジン出力は弱め、自由落下の体勢に入った。

 部下の機体もそれに続く。

 海鳥が、獲物を求めて海中に飛びこまんと急降下する様を彷彿させる角度で、"海猫"とマッキが空を落ちていった。

 時速300km。時速350km。時速400km。

 最高速度を超えた加速に、機体がみしみしと音を立てる。

 下手な切り返しをすれば、たちまち機体の空中分解を起こしてしまいかねない危険域の世界に突入したのだ。 


 豆粒であった敵味方の航空機が見る間に肥大化していき、搭乗員の顔すら確認できるほどになる。

 敵はこちらに気づいていない――。否、"赤色"は寸前でこちらに気づいた。

 背中に目でもついているのだろうか。

 舌打ちをしたいところだが、身体を押さえつける加速の圧力がそれを許してくれそうにない。

 歯を食いしばりながら機首を"赤色"に向け、


「当たれ」

 とばかりに7.7mm弾を撃ち出した。

 重力に後押しされた弾丸は、まっすぐと"赤色"に吸い込まれていく。

 機体後部に被弾。

 寸前でラダーを操作し、転舵することで被弾箇所を修正したのだ。

 やはり尋常の腕前ではない。見事であると賞賛しつつも、主翼であったら致命傷だったのに、と歯噛みする。

 

 視界の端に錐揉みして墜落するチャイカの姿が3機見えた。

 味方機の奇襲によるものだ。

 奇襲を行った機体は千早を含めて7機。豊漁と言って差し支えない。

 何よりも、"赤色"に手傷を負わせたことが大きかった。


 このまま高度を取り、第二次攻撃に移るべきか。

 それとも、"赤色"にとどめを刺すべく追撃に移行するか。

 千早が"赤色"を目で追うと、彼は高度を落として離脱体勢に移行していた。

 賢明な判断だ。

 高度を落とすことで速度を上げながら、海面に近づくことで急降下攻撃をけん制しようという腹積もりだろう。

 悠長に高度を取っている場合ではない。千早は追撃に移行することにした。

 徐々に機首を上げて行き、機体にかかる負荷を最大限に抑えながら平行飛行へと体勢をもっていく。

 みしりと機体が大きく軋んだ。

 空中分解の瀬戸際で、殊更に慎重に、精確に。

 手汗で濡れた操縦桿はすっかり冷たくなってしまっていた。


 高度1300メートルまで降下した"海猫"は、そのまま"赤色"の後方につく。

 最初の位置エネルギー差が、機体の性能差を乗り越えて千早機を優速たらしめていた。

 距離が縮まり、更に縮まる。

 千早は射撃ボタンに親指を当てながらも、ぎりぎりまでそれを押さない。

 機銃にも反動はある。

 無駄弾はいたずらにエネルギーを、速度を失うだけなのだ。

 だから耐える。必殺の瞬間がやってくる、その時まで。


 "赤色"が左に転舵した。

 被弾面積の広がる好機――、ではない。

樽回り軌道(バレル・ロール)かッ!」

 "赤色"はすぐさま上方へ転舵。"海猫"を前へと押しだすように大きな螺旋軌道を取り始める。

 千早は操縦桿を押し倒し、機体を急上昇させることでこれに対応した。

 ハイ・ヨー・ヨーと呼ばれる戦闘機動だ。

 両者の位置関係は、未だ千早有利に収まっている。

 死んでも譲ってやるものかと、千早は上方から7.7mm弾の雨を降らせた。

 有効弾は見えず。全てが紙一重で回避される。

 千早が高度差を利用して再び突撃を仕掛けようとすると、


「ここで降下ダイヴ――ッ?」

 "赤色"が機首をそのまま下に落とし、急加速を始めた。

 スロットルをWEPにまで引き上げた降下――、パワーダイヴだ。

 重力による加速にエンジン出力が足されるため、通常のダイヴよりも当然速い。

 が、それは諸刃の剣ともいえる機動であった。


 航空機のエンジンは構造上、重力が反転したような加圧――、いわゆるマイナスGを受けると故障してしまう恐れがある。

 熟練の航空士ほどパワーダイヴは避けるものなのだ。

 それを敢えてやってみせたということは、


「……逃がすかっ!」

 こちらの弱みを察して、勝負をかけてきた。

 高度差による優勢が失われつつあるということだ。

 元より、"海猫"は余計な下駄を機体下部につけているため、空力特性で"赤色"の機体に劣っていた。

 何度も昇降を繰り返していれば、最初の貯蓄はすぐに尽きてしまう。

 恐らくは、後2,3度の空戦機動で全てが決まってしまうだろう。

 ここは何としてでも追随する。

 例え、エンジンが止まってでも――。

 千早は操縦桿を引き、機首を下げ、降下体勢のままスロットルを目いっぱいに開いた。


 "赤色"の軌跡を追うような角度の深いパワーダイヴに、内臓が大きく歪み、頭の血管がやかましいほどに脈打ち始める。

 気色が悪い。

 視界はぼんやりと狭まって行き、目の前がじわぁっと赤く染まっていく。

 まるで体中の血液が頭へ集まってきているかのようだ。


「……クソッ!」

 赤に"赤色"が混ざって見えにくいったらない。

 だが、それでも千早は眼を見開いて、機体の反射光を頼りに追随する。

 "赤色"が機首を返した。

 斜め上方宙返り(シャンデル)だ。

 千早も操縦桿を倒し、その後を追う。

 赤く染まっていた視界が、今度は黒く塗りつぶされていった。

 まるで、貧血のような、頭が上手く働かない。

 白濁した意識を保たせるため、千早は唇を故意に噛み切った。

 そして上昇。


 徐々に鮮明になる意識と反比例するように、計器盤の速度計が失速速度へ近づいていく。

 ――ただのシャンデルじゃない。何処まで昇る気だ?

 "赤色"は墨書きされた照準から絶妙に外れた位置で、右に、右に滑っている。

 不自然な挙動だ。

 方向舵ラダーを故意に切っている。

 千早は"赤色"のこの奇妙な挙動に嫌な既視感を覚えていた。

 まだ千早が飛行学生をやっていた時分、技術交流の名目で西の大村海軍航空隊より伊藤という下士官が土浦に来たことがあったのだが、その彼が編み出した機動に良く似ていたのだ。


「――あっ」

 まずいと思った。

 敵の意図を察したのと同時に、視界から"赤色"が消え去っていく。

 伊藤によって"捻りこみ"と名付けられた、旋回半径を狭める大技であった。

 ――どうする。

 追わなければ振り切られる。だが、今から追っても先ほどのような優位の空戦は望めない。

 ――どうする。

 既に当初あったエネルギーの貯蓄は切れつつあった。この状況下でエネルギーを生かしつつ、敵の裏をかける選択肢はないか。

 ――千早の脳裏にロバートとの戦いが、ふとよぎった。

 千早は腹を決めてスロットルをWEPに開く。

 そして、上昇。上昇。上昇。上昇。


 翼端が雲を引いた。

 計器盤の速度計がまさしく失速の直前を表している。

 直に自由落下が始まるだろう。

 だが、自由落下中の挙動には慣れている。千早にとっては蘇州で、命を賭けて学んだ武器だ。

 千早はフットペダルを蹴り込んだ。

 ぐるりと視界が流れて行き、空中で垂直に静止した"海猫"が横倒しに倒れこむようにして自由落下を開始する。


 位置エネルギーは運動エネルギーに変換が可能なのだ。

 機体の姿勢さえ安定しているのならば、失速を恐れる必要はない。


 果たして、自由落下によって再び速度を得た"海猫"の機首が、旋回戦を挑もうとしていた"赤色"の背中を捉える。

 幾度となく続けられた空戦の中でようやくもぎ取った、初めての読み勝ちであった。


 "海猫"の機銃が火を吹き、"赤色"の主翼に小さな穴が開く。

 だが、まだ致命傷ではない。

 この期に至っても"赤色"の航空士は生を諦めておらず、身を翻すことで致命傷を避けている。

 敵の機首がこちらを向いた。

 逃走を諦め、こちらの命を狩り取ろうというのだ。


「……ほんっと、いい根性しているな――ッ!」

 高揚感をもって、千早はヘッド・オンに立ち向かう。

 両者の翼内機銃が火を吹き、"赤色"の翼端が吹き飛ぶのと同時に、"海猫"の風防が破砕した。

 吹雪のように吹きつけるガラス片から身を守るためにかざした手が激痛を覚える。

 こちらの主翼も何処かがいかれてしまったらしい。

 暴れ馬と化した"海猫"を押さえつけようと渾身の力を込めて操縦桿を倒す。

 "海猫"と"赤色"。既にどちらも墜落してもおかしくないほどのダメージを負っており、それでも尚互い違いに射撃を続けながら、両機はカムチャッカの大地に向かって降下していった。


 ここに至ってはもう両者ともに戦線の復帰は望めない。

 千早が血まみれの腕を押して"海猫"のエンジンを切り、不時着の操作に移ると、"赤色"もまた不時着の体勢に入った。

 主脚が下りていない。故障でもしたのかもしれなかった。

 だが、それは"海猫"も同じでフロートで大地に降りなければならないのだ。

 千早は歯を食いしばり、来たるべき衝撃に備える。懐に忍ばせた焼け焦げたお守りに、一瞬意識がそれた。


 計器が示す時速は170km。

 まるで月面のようにでこぼこした沼地の点在する大地の上を滑空し、やがて、激しく機体が揺れた。


 身体の何処かでみしりと嫌な音が鳴る。

 不時着の衝撃に耐えきれなかったらしく、"海猫"のフロートが根元から折れて横転した。

 天地が逆転する最中で頭を打たなかったことは、全くもって幸運であったと言わざるを得ないだろう。

 横倒しになったまま、数十メートルにも及ぶわだちを地面につけた後、"海猫"はようやく停止した。


 九死に一生を得たことを理解した瞬間、千早の身体から汗が噴き出していく。

 何とか、命を繋ぎとめたのだ。

 しかしながら、喜んでばかりもいられなかった。

 千早は激痛を訴える身体に鞭打って、拳銃を片手に"海猫"を降りる。

 確信があったのだ。

 "赤色"の航空士もこの窮地を乗り越えてくるはずだ、と。


「Polnost'yu yeshche!」

 果たして、大破した"赤色"の傍には千早と同じように拳銃を持った航空士の姿があった。

 額から血を流した、ロシア人にしてはやけに線の細い青年であった。


食中毒でダウンしてました。

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