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■気まぐれ雨模様 1:2

作者: 七菜 かずは

タイトル■気まぐれ雨模様


原案:右京

脚色・脚本:七菜かずは






■役表

斎藤さいとう 美穂子みほこ  :

和谷かずたに 椎名しいな : 

由比ヶゆいがはま りりあ  :






■キャスト

斎藤さいとう 美穂子みほこ

・ヒロイン。テレビを観ることが大好きな高校生。

毎日夕方から放映されるテレビ番組「metro」やその他、リアルタイムでアニメを見るがため、ダッシュで帰る毎日。録画は邪道だと思っている。

友人のりりからは、上記行動に呆れられているが、本人は全然気にしていない様子。

クラスでは地味なタイプ。眼鏡っ娘。セミロングストレートヘア。

クラスメイトの椎名君が少し気になっているが、臆病で内気な為、自分から話しかけることはない。

やや早口。

身長150センチ。

O型。


和谷かずたに 椎名しいな

・よくいるクラスの人気者。中性的な顔立ち。いい人。優しい。

色々とめんどくさいからという理由で部活には所属していないが、たまに助っ人で活動しているときもある。

趣味は人間観察。斎藤とは帰り道が一緒。

ゆったりと喋る。

身長170センチ。

A型。

 

由比ヶゆいがはま りりあ

・髪は金髪で、見た目はギャルっぽいが、心優しい女の子。茶道部。

斎藤の友人。斎藤と椎名くんのクラスメイト。

※チャイム音はSEで、本物を流しても構いません。

身長160センチ。

O型。






【開幕】


 最後限の授業終了のチャイムの音が、学校中に鳴り響く。


りり役『キーンコーンカーンコーン……』


斎藤「よしっ。帰らなきゃっ!」


りり「また今日もダッシュで帰るの?」


斎藤「うん! じゃあねっ、りり」


りり「あっ、うん。ばいばい。たまにはニュースも観なよ~」


斎藤「あははっ」


りり「まったく、もう」


 スーパーダッシュで、家へ帰って行く斎藤。


和谷「あれっ、斎藤さん?」


 大きな交差点で、クラスメイトの椎名くんを追い越す斎藤。

 斎藤は彼に気付かない。


斎藤「えっと、今日は16時からおじゃにゃんで、17時からmetroで、……ああ~っ。しんたろー、楽しみだな~」


和谷「しんたろー?」


斎藤「♪~」


和谷「あっ。斎藤さん!」


斎藤「♪~」


和谷「行っちゃった……。いつも急いで帰るけど、やっぱり部活とか入ってないんだな……」


 椎名くんの鼻の頭に、雨が一粒、落ちる。


和谷「っ!」


 空を見上げて。


和谷「……雨降りそうだな。はやく帰ろ」






 次の日。学校。

 担任の先生が、「予習しとけよー」と言いながら、教室から去っていく。

 チャイムの音。


りり役『キーンコーンカーンコーン……』


斎藤「よしっ。急いで帰らなきゃっ。今日は木曜だから気合い入れなきゃ」


りり「今日はなんのアニメ?」


斎藤「今日はいつものおじゃにゃんと、スーパーヒロプリッ! 他多数! 木曜日は放送枠多いから、アツいの!」


りり「へ~。録画したら?」


斎藤「はあ?」


りり「え。激怒?」


斎藤「録画なんて邪道だし! 埼玉テレビに土下座しろっ」


りり「えええええええ。すんません」


斎藤「あははっ。じゃあねっ。りり! また明日っ!」


りり「はいはい。あんまり夜更かししないよーにね」


和谷「あ、斎藤さん」


斎藤「っ!?」

りり「!?」


斎藤「し、椎名くん……!?」


和谷「二限で言われてたプリント、出してないの斎藤さんだけだって、コッコ先生に言われて……」


斎藤「ああああっ! あのっ! これ!?」


 鞄の中の物を大体ぶちまけながら。若干くしゃくしゃになったプリントを差し出す。


和谷「ああ、えーと、うん。これ」


斎藤「しい、じゃ、なくって……えと、和谷くん、当番?」


和谷「うん。ありがとう。出しておくね」


斎藤「えっ、えっ、で、でも、あたし、自分だけ遅れてるから、自分で出すっ……」


和谷「いいよ。急いで帰りたいんでしょ? 俺部活とか入ってないから暇だし」


斎藤「そっそう!? あ、あ、あ、あありがとうっ! いいの!?」


和谷「うん。いーよ。ばいばい」


斎藤「ば、ばいばっばっばいっ……! っきゃっ!!」


 何故か机に服が引っ掛かり、すっ転ぶ。


和谷「えっ斎藤さん!?」


りり「みほ!?」


和谷「大丈夫?」


斎藤「いったたた……」


和谷「気を付けてね……」


りり「もぉ、何してんの?」


斎藤「ご、ごめんなさい。平気」


和谷「じゃあ、行くね」


 去っていく椎名くん。


斎藤「う、うんっ……。はー……。あー……。う」


りり「ちょっと。みほ?」


斎藤「椎名くん……。あぁ……」


りり「おーい?」


斎藤「……はっ!」


りり「大丈夫?」


斎藤「しっ椎名くんに話し掛けられちゃった!」


りり「え、ええ、ああ、そだね」


斎藤「私の名前知ってたんだあ……」


りり「クラスメイトの名前くらいわかるでしょ」


斎藤「えっ。私全然わかんない!」


りり「おーい。もう秋ですよー?」


斎藤「こんな地味でオタクでアニメで深夜で夕方な私のことを、椎名くんが知ってたなんて……」


りり「はいはい、夕方から深夜までリアルタイムでアニメを観ることに生き甲斐を感じている斎藤 美穂子さん。メガネ落ちましたよっ?」


斎藤「あ、ありがと」


りり「帰らないと、間に合わないんじゃない? おじゃにゃん」


斎藤「ハッ!! そっそうだったっ! じゃあねっ! りり!」


りり「んー。また明日~」






 次の日。

 チャイムの音。


りり役『キーンコーンカーンコーン……』


 せんせーが、「テスト勉強でわかんない所があったら聞きにこいなー」と言いながら、教室を出て行く。


斎藤「よし。帰るっ!」


りり「はい。ばいばい」


斎藤「りりも今度一緒にアニメ観ようよ!」


りり「いや、みほの自分の時間を邪魔する訳にはいかないわ~」


斎藤「っ♪ じゃあねっ」


りり「はい。また明日」


 靴箱へダッシュ。靴を履き替え。外へ……。


斎藤「あっ!? ……やだー。雨降ってきたっ」


斎藤「どうしよ……。んーっ! 走るしかないなっ」


和谷「斎藤さん?」


斎藤「!?」


和谷「傘ないの?」


斎藤「えっ。し、しーなくん……」


和谷「貸そうか?」


斎藤「へっ!?」


和谷「傘ないんでしょ?」


斎藤「い、いや、いいっ!」


和谷「えっ、でも……」


斎藤「じゃあねっ!」


和谷「あっ……。待って!」


 椎名くんに、腕を掴まれる。


斎藤「っ!?」


和谷「濡れちゃうよ」


斎藤「やっやめてよ! 噂になったらどうすんの!?」


和谷「えっ……いや、別になんないでしょ。ほら」


 傘に入れようとして。


斎藤「いっいいっ!」


和谷「なんで」


斎藤「なんでも!」


和谷「風邪ひくよ」


斎藤「いいの!!」


和谷「いい訳ないっしょ……」


斎藤「私急いでるからっ! じゃあねっ」


 高速で逃げていく斎藤。


和谷「あっ、斎藤さん!! ……また逃げられた」






 次の日。放課後。


りり役『キーンコーンカーンコーン……』


斎藤「っ!? また降ってきたっ! はやく帰んなきゃ」


りり「みほ? 傘ないの?」


斎藤「あっ、うん」


りり「なんでー? 朝から雨降ってたのに」


斎藤「だって、帰りの邪魔になるし!」


りり「いやいや。せめてカッパは持ってこようよ。教科書とか濡れるよ?」


斎藤「だってぇ……」


りり「あたし、自分の折り畳みしか持ってないから。みほ、職員室で傘借りてきたら?」


斎藤「そんな時間はっ! ないのですっ! ばいばいっ!」


りり「はいはい。ちゃんとお風呂入りなよ~」


 昇降口へ走る。


斎藤「っ! っ! ……うわー。滝のように降ってきた」


和谷「斎藤さん?」


斎藤「良し。行くぞ」


和谷「斎藤さんっ!」


斎藤「っ!? しっ椎名くん」


和谷「また傘ないの?」


斎藤「なっ……なくないですっ!」


和谷「どこに?」


斎藤「えーと……」


和谷「一緒に帰ろ? ほら。入ってよ」


斎藤「いや~。いいでっ! す!」


和谷「なんで?」


斎藤「だってクラスの女子たちに白い目で見られたくないしっ!」


和谷「白い目?」


斎藤「う、うん」


和谷「なんで?」


斎藤「そ、それはぁ」


和谷「俺クラス委員だし。斎藤さんって、しかもいつも授業中寝てるし」


斎藤「えっ、えっ、えっ、えっ!? な、なんで知って……」


和谷「ちょっと、心配。かな」


斎藤「さっさようならっ!」


和谷「っ!? おい、ちょっと待って!!」


斎藤「っ!!」


 逃げまくる斎藤。その後ろを、椎名くんが追い掛ける。


和谷「待ってよ!」


斎藤「っつっついて来ないで~っ!!」


和谷「傘入りなよ!」


斎藤「い~や~だ~ぁ~っ!」


和谷「斎藤さ~んっ!」


斎藤「構わないで~っ!」


和谷「……はぁっ、はぁ……。また逃げられた」






 次の日。放課後。


りり役『キーンコーンカーンコーン……』


 昇降口で、何やら不審な動きを取ってる斎藤。


斎藤「……っ。っ。っ……」


りり「みほ? 何してんの?」


斎藤「ぎょわ~!? わっわっわっ、わっ!?」


りり「えっ?」


斎藤「シーッ! シーッ!」


りり「?? 何」


斎藤「ねえ、昇降口、誰も居ない!?」


りり「んー? いや、まあ、結構居るけど? 放課後だし。帰んないの?」


斎藤「帰りたいけど最近障壁があるのっ!」


りり「障壁って。……椎名くん?」


斎藤「そう! ……あっ」


りり「なんで椎名くんが障壁? 王子様じゃん」


斎藤「王子様だから障壁なの!」


りり「へえ~。そう言えば椎名くん、さっき隣のクラスの子に手紙貰ってたな~。流石だな~」


斎藤「うっ! うっ! うっ!」


りり「何ダメージ受けてんの?」


斎藤「王子様だ か ら!」


りり「ふぅん。……で、なんで椎名くんが居るとイヤなの?」


斎藤「私を傘に入れようとするのっ!」


りり「はぁ?」


斎藤「だから! ここ最近雨ばっかで。私が傘持ってこないから……その~。椎名くんが傘貸してくれるってもぉしつこいのっ!」


りり「なんて贅沢な悩みよ……」


斎藤「助けてよう」


りり「や・だ。あたし茶道部あるから。じゃあね、幸せ者」


斎藤「ああーっ! りりーっ! カムバックーっ!」


りり「今まだ雨降ってきてないし! さっさと帰ればーっ?」


 りり、去っていく。


斎藤「ハッ! ほ、ほんとだ。止んでる! 帰ろうっ!」


りり&和谷『ザーッ!!』(雨の音)


斎藤「がーぁ……。ううっ、また雨……」


和谷「斎藤さん」


斎藤「ぐあっ!?」


和谷「今帰り?」


 斎藤、椎名くんに背を向ける。


斎藤「う、うんっ。じゃあね、椎名くんっ」


和谷「待って! 今日もまた傘持ってきてないの?」


斎藤「だ、だって朝は降ってなかったし」


和谷「降水確率98%だったよ? それにまたこの土砂降りで……」


斎藤「に、ニュースとか、読まないしっ」


和谷「ここ最近雨ばっかなんだから。一本くらい持ち歩いたら?」


斎藤「ビニ傘はすぐ盗まれちゃうし」


和谷「折り畳みは?」


斎藤「持ってないのっ」


和谷「買ったほうがいいよ」


斎藤「いいのっ」


和谷「濡れたいの?」


斎藤「ぬっ濡れたいっ!? しっ椎名くん何言ってっ! えっええっち! ばかっ!」


和谷「はぁー!? ちょ、ちょっと待ってよ! またずぶ濡れで帰る気!?」


斎藤「なんでいつもついてくるの!? 来ないでってば!」


和谷「いやっ、ちょっ、待っ」


斎藤「来ないでっ!」


和谷「だって斎藤さん家の裏が、俺ん家だし!」


斎藤「……えっ? ひゃっ! きゃぁぁっ!」


 段差に躓き、倒れかける斎藤――を、椎名くんが受け止める。


和谷「あっ!! ……ぶ、なっ。……ふぅ。大丈夫? どこも打たなかった?」


斎藤「う、うん、ありがとう……」


和谷「あっちで少し雨宿りしよう。ほら、歩ける?」


斎藤「う、うん……」






 から揚げ屋さんのシャッターの前で、雨宿りをする。


斎藤「から揚げ屋さん……。今日やってないんだ」


和谷「斎藤さん、足に泥が着いちゃってるね」


斎藤「えっ?」


和谷「タオルあるよ」


斎藤「いっいいよ! 家すぐそこだし!」


和谷「そう? でも、動くのはもう少し雨足が弱まってからにして」


斎藤「え?」


和谷「俺今斎藤さん受け止めた衝撃で傘壊れた」


斎藤「ええええーっ!? ごっごめんなさい!! ……ごめんね、椎名くん……」


和谷「ふははっ。いいよ。どこにでもあるビニ傘だし」


斎藤「~……」


和谷「……っ」


斎藤&和谷「「あの……」」


斎藤&和谷「「あっ、えっ」」


斎藤「っ……」


和谷「……残念だな」


斎藤「え?」


和谷「今なら、傘に入って貰えそうなのになって」


斎藤「……優しくしないで」


和谷「えっ?」


斎藤「椎名くん、自分が王子様だって自覚ないの!? あたしなんかに構ってちゃダメだよ!」


和谷「えっ、は? おう?」


斎藤「噂になっちゃったら困るの!」


和谷「何言って……。だから、噂になんかならないって」


斎藤「なんで!? あたしがブスだから!? メガネで夕方で深夜でアニメでオタクだから!?」


和谷「ちょっと、暴走しないでって」


 斎藤の手を掴む、椎名くん。


斎藤「は、はなして……」


和谷「斎藤さん、いつも超ダッシュで帰るのって、アニメを観たいからなの?」


斎藤「えっ……は、あ、あ、はい、そう、です」


和谷「そうだったんだ」


斎藤「……引いたの」


和谷「え。ううん。俺もアニメ好きだし」


斎藤「えっ、ほんと!?」


和谷「うん。ふふ」


斎藤「ハッ! も、もし今この状況を誰かに見られたりしたら……っ!」


 きょろきょろと辺りを見渡す。


和谷「土砂降りで目の前すら見えないって」


斎藤「……ふぅ」


和谷「周りの目がそんなに気になるんだね」


斎藤「えっ」


和谷「そういう所、意外だったな」


斎藤「意外……?」


和谷「あっ、雨止んできた」


斎藤「あっ」


和谷「……このぐらい弱まれば、平気かな」


斎藤「し、椎名くん。じゃあっ」


和谷「あ、うん。また明日」


斎藤「っ、う、うんっ。ばいばいっ」


 別れる。


和谷「……明日も雨降るかな」






 次の日。放課後。チャイム。


りり役『キーンコーンカーンコーン……』


斎藤「あっ」


和谷「……ふぅ」


斎藤「……椎名くん?」


和谷「あっ、斎藤さん」


斎藤「どうしたの? 帰らないの?」


和谷「雨降ってきちゃって」


斎藤「き、今日はあたし、傘あるんだ! だから傘いらなっ……」

和谷「えっ、傘あるの!?」


斎藤「えっ?」


和谷「ぷっ。あははっ……」


斎藤「ど、どうしたの?」


和谷「俺……っ俺っ……」(笑い続ける)


斎藤「?」


和谷「俺……。今日傘ないんだ」


斎藤「えっ!?」


和谷「あははっ」


斎藤「な、なんで?」


和谷「だって、傘あったら一緒に帰れないから」


斎藤「……だれと……」


和谷「……」


斎藤「っここの傘あげる!!」


和谷「えっ!? ちょっ、斎藤さん!」


斎藤「じゃあねっ!!」


和谷「ま、待って!」


斎藤「待たないっ!」


和谷「濡れるよ!?」


斎藤「もう濡れてる! 椎名くんのえっち!!」


和谷「ええええ!!? 待ってって!」


斎藤「やだっ!」


和谷「なんでそんなに傘が嫌なの!?」


斎藤「先っちょがこわいの!」


和谷「でも今日は持って来てるじゃん!」


斎藤「だって雨降ると思って!」


和谷「じゃあ昨日までは!?」


 足を止める斎藤。


斎藤「っ……」


和谷「はっ、はっ……斎藤さん、濡れるから。ほら、こっち来て」


斎藤「椎名くん……」


 屋根のある所へ行き、雨宿りする。

 俯いている斎藤。


和谷「……また凄い降ってきちゃったな」


斎藤「……昨日までは」


和谷「うんっ?」


斎藤「だって、傘持ってなくちゃ、椎名くんに会っちゃうから」


和谷「傘持ってなくたって、同じクラスじゃん」


斎藤「追い掛けられるし」


和谷「ごめん……」


斎藤「帰ってテレビが観たいだけなの」


和谷「うん」


斎藤「でも、最近、全然テレビ観れなくて、っていうか、観てるけど、でも」


和谷「えっ、なんで?」


斎藤「……だって……しゅうちゅう……」


和谷「?」


斎藤「椎名くんがしつこいからっ」


和谷「え。べ、別に家の中まで押しかけてるつもりはないけど?」


斎藤「だって、だってっ……!」


和谷「……ごめん。そんなに迷惑だったんなら、もう話し掛けないから」


斎藤「えっ……」


和谷「ごめんね。傘、ありがとう。返すね」


 椎名くん、斎藤に傘を手渡し、去ろうとする。


斎藤「ま待ってっ」


和谷「ん?」


斎藤「濡れちゃうよ」


和谷「平気だよ。すぐ小降りになるよ」


斎藤「でっでも、でもでもっ」


和谷「斎藤さん?」


斎藤「め迷惑なんかじゃないの! でもイヤなの!」


和谷「……わかった」


斎藤「っ!? わかってないっ」


和谷「え?」


斎藤「いやじゃないの……でも……」


和谷「イヤなの? イヤじゃないの?」


斎藤「…っ…の」


和谷「ん?」


斎藤「……どきどきするからイヤなの……っ!」


和谷「え……」


斎藤「……ぅぅ……」


和谷「……斎藤さん」


斎藤「う、は、はい」


和谷「一生のお願い。二個。聞いてくれる?」


斎藤「うん?」


和谷「俺に、その傘もう一度貸して欲しいんだ」


斎藤「え。あ、うんっ! どうぞ……」


和谷「……ありがとう」


斎藤「っ……」


和谷「二個目のお願いがあるんだけど、いいかな」


斎藤「……うん」


和谷「斎藤さんの傘、はんぶんこして」


 その傘を、開いて。


斎藤「っ――……」


和谷「俺と一緒に帰ってよ」


斎藤「……は、はい!」


和谷「っ♪」






おしまい






 おまけ。

 次の日。


りり「はあ!? なっ何事っ!?」


 放課後。昇降口を出たとこ。


斎藤「し、椎名くん、ちょっと恥ずかしいっ」


和谷「え。なんで?」


斎藤「だってみんなが見てるよっ」


和谷「いいじゃん! このほうがしっくりくるし! ねっ」


斎藤「う~ん……。しっくり?」


りり「なんであの二人、雨も降ってないのに相合傘してんの?」


和谷「いや~今日は日差しが強いな~」


斎藤「そっそう!?」


和谷「そうだ。今度一緒に大きな傘買に行かない?」


斎藤「え~っ!?」


和谷「ふはは」


斎藤「そっそれってどういうこと!?」


和谷「さあ? 買い物に付き合わせてるだけかな?」


斎藤「なっなんだ! そっか! ってか、今日はもういいでしょ! 傘ささなくっても!」


和谷「いやいや。今日は今日で必要なの。今までの分取り返さないと。ポイントためないと」


斎藤「なっなんの!?」


和谷「傘ポイント?」


斎藤「あっ雨の日は二倍!?」


和谷「あはははっ。いつでも四倍かな」


 昇降口で二人のことを見守っているりりあ。


りり「……いつの間にあんな関係に……」


 二人を追いかけるりりあ。


りり「ちょっとーっ! 二人ともーっ!」


斎藤「あ、りり」


和谷「ん? あ、由比ヶ浜さん」


りり「ちょっとちょっとっ。付き合ってんの?」


斎藤&和谷「え。ううん」


斎藤「違うよっ」


りり「ううん!? えっ!?」


斎藤&和谷「友達だよ」


りり「えっ!? ま、待って。そんなに仲いいのに!?」


和谷「由比ヶ浜さんと斎藤さんも仲いいじゃん」


りり「えっいやっ同性だし!」


斎藤「りり何言ってんの?」


りり「なんで相合傘してんの!?」


斎藤「これはだって椎名くんが無理やり……」


和谷「俺斎藤さんと相合傘したい病なだけだから」


りり「待ってそんな病気!? ケロッと言う!? なんだか代わりに恥ずかしい!!」


斎藤「ごめんね、アニメ観たいから帰るね」


りり「お、おお、わかっ、た、わ」


和谷「うちで一緒に観ようよ」


斎藤「えっやややややだ!」


和谷「ええええ。またしても試練が」


斎藤「観てもいいけど静かに出来るの!?」


和谷「地蔵のようにしてるよ」


斎藤「本当かなあ……」


和谷「本当だって」


斎藤「う~ん」


和谷「斎藤さんの趣味って、アニメ観ることだけ?」


斎藤「うん? んー……。椎名くんは? やっぱりスポーツ? って言うか、さっき野球部の人が来てたけど。野球部ってメンバー足りないって噂だけど……」


和谷「ああ、いいのいいの。暇つぶしにたまに行ってるだけだから」


 話しながら、去っていく二人。


りり「……謎だわ」






えんど!

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